死する神霊仏

死する神霊仏

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1不問:1
総セリフ数 79
製作日 2015/7/9〜2015/7/9
概要説明  神の教えを人々に伝え、迷える民衆を率いて一人の宗教家に過ぎなかった神子はいつしか国を創り上げた。
ただそれだけでは民を完全なる救済はできない。
神の持つ力で世を正しい方向に導いていかなければ…その力を手に入れるためには…神子は死んで神の国へいかなければならない……
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
神子 39 神に選ばれし、救世主として人々に教えを説いて回った。
天近
(あまちか)
40 幼い頃から神子を慕い、人々を導くべく神子と共に尽力する。



【社にて】(民衆の集まる中、説教をし、社の内へと戻る)

001 神子 「神は常に民を、皆を天より見守っておる。そして我はその神のお側で仕え、信心深いあなた方を必ずしや、神の国へと招きいれようぞ」(胸に手を当て、大きく手を広げ、終えると踵を返して社へ)
002 天近 「神子殿、神子殿。ご高説、誠に感激致しました」(走り寄り目を輝かせる)
003 神子 「天近…」(ホッとしたように笑みをもらす)
004 天近 「神子殿のお側で聞けたこと、至極光栄でございます」
005 神子 「民に我の言葉は届いただろうか」
006 天近 「それはもう!胸に突き刺さる程!」
007 神子 「ここまで長い道のりであった」(息をついて、遠くを見つめ思い耽る)
008 天近 「左様でございましたな」
009 神子 「耳を傾ける者もおらず、石を投げられ罵倒され…」
010 天近 「雨の日も風の日も嵐の日も神子殿は休むことなく神の教えを説かれ、ようやく眼を開き、民々がこうして集い、国すらできた。さすが、神子殿でございます」
011 神子 「天近がいたからだ。天近が我を支えてくれた」
012 天近 「勿体ない…勿体ないお言葉でございます」(目を潤ませる)
013 神子 「…暴れ僧に襲われたこともあったな」
014 天近 「えぇ、焼き討ちにきた暴れ僧を返り討ちにしました」
015 神子 「我は追い払ったということしか知らぬな」
016 天近 「…そんなこともあったというのは過去のお話ですよ、神子殿」
017 神子 「そうだな…全て過去の話だ」
018 天近 「天より生まれ出、神の御子。神子殿は神に選ばれし唯一の御人。代わりなどいないのです」
019 神子 「天近と出逢えて良かった」
020 天近 「私も神子殿に選ばれ、神の下で働けたのは光栄でございました」
021 神子 「天近がいなければ、今ここに我はいなかっただろう」
022 天近 「いやいや、全ては神の思し召しのままです」
023 神子 「神の思し召し…か」
024 天近 「神子殿に戴いたこの名…」
025 神子 「天に近く、神の側で働く我をまた助けてくれるように」
026 天近 「必ず神の国に入った暁には、また必ずや神子殿のお側に」(胸に手を当て、跪く)
027 神子 「…そうか一緒にいてくれるか」
028 天近 「こう言ってしまうのはおこがましいかもしれませんが、神子殿の横には、神と私が必ずおります」
029 神子 「我は…独りではない…」(ぽつりとつぶやく)
030 天近 「そう独りではありません。神の御霊に満たされているではありませんか」
031 神子 「天近…我は。我はな…」(顔をあげ、天近の目を見つめる)
032 天近 「神子殿?」
033 神子 「我は孤独が怖い。一人は…独りは嫌なのだ」
034 天近 「天近がいます。常に。お側に」
035 神子 「…魂を捧げ、神の脇に座した時、我は」
036 天近 「その時、神子殿はこの世の神になられる。そこで救済は完遂されるのです」
037 神子 「その時、天近は我の側にはいない」(うつむく)
038 天近 「心は常に神子殿のお側に。私は神子殿の意志を継いで必ずや、民を…この国を導いていきます」
039 神子 「天近、我は怖いのだ。御神(おんかみ)の横に座すことが」(肩を震わせながら)
040 天近 「何を弱気な…神子殿らしくないですよ」
041 神子 「我がもし、神の国へ拒まれては、救える民も救えなくなるのでは」
042 天近 「神子殿が神に拒まれることはあり得ません。必ずや神の国へ、神のもとへ迎え入れられます」
043 神子 「天近は強いな」(フッと笑う)
044 天近 「神子殿の教えです。神子殿の教えがあってこその私です」(ニッと笑う)
045 神子 「……我は本当に死なねばならぬのか?」(目を閉じて再び開き、確認するように)
046 天近 「神の国へ行かれるためにはそれしか方法がないのでしょう?」
047 神子 「情けないな…死を目前とすると途端に怖じ気づいてしまう」(天近に背を向け、引き攣る笑みを浮かべる)
048 天近 「誰でもそうでしょう」(少しうつむく)
049 神子 「晴れぬ闇が体をむしばんでいくのが怖い」
050 天近 「体がむしばまれ、肉体が滅びることによって魂が救済されて神の国へ、いくことができるのでしょう」
051 神子 「我の死が民から望まれているのであれば…我は受け入れなければなるまいのだろうな」(涙がこぼれないよう上を見ながら)
052 天近 「神子殿の教えは不滅。神子殿の死をもって神の国へお入りになり、お力を振るわれる。これは全民の悲願です」
053 神子 「民は我を受け入れたのだから我も民も受け入れなければなるまい…」(拳で涙を拭い、決意するように)
054 天近 「神子殿が神の国へ入られるまではお側で私がおりますので」
055 神子 「これが我のさだめなのだろうな」
056 天近 「神子殿…」
057 神子 「ふっ。悔やみ、未練を残しては神の国へ拒まれ怨霊になってしまうな。我は行く、天近」(振り返り、笑顔を見せ、天近の肩を軽く叩き、社の扉を閉める)
058 天近 「…お気を付けて、神子殿」(涙を我慢して閉まった扉に向かって呟く)



【1ヶ月以上経過】(社の戸に張り付き、神子の言葉を聴き、答える天近。暗闇の部屋の中、不動のまま座る衰弱した神子)

059 神子 「天近……」
060 天近 「はい、神子殿」
061 神子 「魔が…我……むし…ばんでい…く…」
062 天近 「神子殿なら打ち払えます。大丈夫です、神子殿」
063 神子 「天近……」
064 天近 「はい、神子殿」
065 神子 「………光が…光が…見えぬ……」
066 天近 「もうじきです。もうじき、神の国にお入りになり、光に包まれます。神子殿」
067 神子 「……けが…れ…が………」
068 天近 「浄化されます。神子殿、心を…心を強くお持ちになって下さいっ」
069 神子 「あま…ちか……」
070 天近 「はい、神子殿」
071 神子 「あま……か……」
072 天近 「はい、神子殿。お側に、この天近が常にお側におります」
073 神子 「天近…我は…我は……正しかった…のか……」
074 天近 「はい。神子殿は常に正し……神子殿…?」(神子の気配が消えるのを感じる)
075 天近 「神子殿……旅立たれた…」(扉の前で脱力し、放心状態になる)



【その後】(エピローグ)

076 天近 1ヶ月余、闇の間に不動のまま瞑想され、神の国へと旅立たれた
077 神子 我亡き後、後を継いで天近は布教を進めたが、度重なる大飢饉で民は苦しみ、舵取りをできなかった天近は捕らえられ、滅びの道を歩んでいった。それらは我の知る由のないことであった―――
078 天近 「神子殿、申し訳ありません…この国を…民を…私には救うことはできませんでした……神子殿を神の下にお送りするには早すぎました…またお側で共に。」(宙に手を伸ばし、朽ち果てる)
079 神子 神子が消えし国の亡びは早く、数年も持たずこの世から消え去った。長い歴史の中の一瞬の星の瞬きのように






作者のツブヤキ
 人によって死生観や宗教観は違うので、様々な考えはあると思います。
世の中の争いの火種となる強いメッセージを持たせて描く物語ではないですが、
即身仏や暗闇隔離実験など見聞きしていると、逃れられない死や孤独が身近に迫ると人はどうなってしまうのか。
いかに志を強く持っている人であっても心を保てるのか。

この物語で描きたかったのは、死を恐れ、神格化され、人に戻れず立ち止まりたい神子を幼い頃から支えてきた天近が止められなかったということです。
死んで神や救済といった行動を止めて欲しかった神子と、立場上それを許せず、感じながらも後押ししないといけなかった天近。
象徴がこの世から消えたことから人々の心を繋ぎとめておくことができず、度重なる苦難に対処できなかったことで滅びてしまう。
神子を支え続けていく天近だから今までうまくいっていたことに気付いたのは……といった物語でした。
弱さを見せつつも期待に応えようと無理して笑顔をつくる神子が凄く殊勝だなって…宗教とか深い意味は考えず好きな物語です。

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