四季宿亭、なつの華火

四季宿亭、なつの華火

シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1:4
総セリフ数 192
製作日 2011/7/15〜2011/7/16
概要説明  あの世でもこの世でもない狭間に建つ癒しの宿、四季宿亭。
現世から『あき』を追って祭を誘いに現れた狗郎丸。しかし現世の祭前は四季宿亭の大繁忙期。
四季が気を利かせて、四季宿亭の下町の祭への参加を提案。そして祭りの夜はやってきた――
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
四季 17 四季宿亭の仲居達を束ねる女将。裏の世界でも顔が利き、広い人脈を持っている。よく気を利かせて臨機応変に対応する。
はる 39 小稲荷神社の土地神。一応常識人のような対応しているが、他人の恋路などの好奇心は人一倍強い
なつ 48 サボり癖が激しくしょっちゅう四季に怒られる獣人。暑いのが苦手でしょっちゅうだらしない格好になる。面白いことにすぐ首を突っ込もうとする
あき 34 真面目で単純なため、からかわれやすく、刀をよく振り回す人間侍娘。なつによく弄られては追いかけ回している。
萩宮狗郎丸
(はぎみやくろうまる)
49 村で介抱した際、あきに一目惚れし、村祭りへ誘いに四季宿亭までやってきた。あきが怪我した時の為に専属の医者になりたくて医学を学ぶ






【仲居の休憩室】(肩までだらんと着物を開き、舌を出しながらへばるなつを手で煽いで風を送ってあげるはる)

001 なつ 「あぢー…」
002 はる 「なっちゃん、お客様もいるんですからもう少し着物は着こなさないと…」
003 なつ 「こんなに暑いのに着物とかって頭おかしくなりそうだ」
004 はる 「そんなに着崩したら四季さんに怒られますよ」
005 なつ 「日に日に暑くなってくる四季宿亭に文句言ってくれよ」
006 はる 「もぉ、だらしないですよ。三冬さんじゃないんですから私たちがしっかりしないと」
007 なつ 「まぁ、あの遊女と一緒にされてもな…」
008 はる 「十分なってますよ。そんなに肩露出させちゃ…」
009 なつ 「だぁーっ素っ裸になりてぇっ!」
010 萩宮 「失礼つかまつります、あき殿はこちらに…」(襖を開け、肩丸出しのなつを目撃)
011 なつ 「お?」
012 萩宮 「ッ!?大変失礼致しましたっ!着替え中とは露知らず…」(バッと背を向ける)
013 はる 「ほら、なっちゃん!」(着物を正させる)
014 なつ 「お?お?あきに何か用なんか?」
015 萩宮 「ま、まぁ…その、こちらにおられると聞きました故…」
016 なつ 「あきなら滝んとこにいると思うけどな」
017 萩宮 「滝…ですか?」
018 はる 「ご案内致しましょうか?」
019 萩宮 「あ、いえ我は大丈夫故、お気になされず。」
020 はる 「四季宿亭を案内するのは仲居の務めですから」
021 萩宮 「お仕事の邪魔をするわけには参りますまい」
022 なつ 「なんかあきみたいな奴だな」
023 はる 「お客様のお部屋に間違われても困りますし、確実にお送りしますよ」
024 なつ 「そうそう。ここは素直に聞いておいた方が部屋数だっていっぱいあるしさ」
025 萩宮 「はぁ…、ご迷惑でなければ是非ともお願いしようかと…」
026 はる 「はい。…そういえば、お名前をまだ伺っていませんでしたね」
027 萩宮 「は、自分は萩宮狗郎丸と申します。」
028 はる 「萩宮様ですね」
029 萩宮 「そんなっ様など…呼び捨てで全然っ」
030 はる 「お客様ですから、相応な対応をさせて頂きますよ」
031 なつ 「あきに用事ってなんだ?」
032 萩宮 「あ、いえ…もうじき我の住む村で村祭りがあり、それのお誘いに…と」
033 なつ 「へぇ…村祭りねぇ…」
034 はる 「楽しそうですね。お祭りと言えば、下町の方でもそろそろお祭りの時期だったと思いますよ」
035 萩宮 「ほぉ…他の祭りもなかなか興味深い…」
036 なつ 「こっちのお祭りはすげーんだぞ。リアル神々が踊って妖怪たちが跳ねて人間達は回って」
037 萩宮 「リ、リアル神々…?それに妖怪?」
038 なつ 「ありゃ?ここに来るの初めてか。この四季宿亭は様々な種族がやってきて賑わっているのさ」
039 萩宮 「様々な種族が?」
040 はる 「あ、あきちゃんいましたよ」(滝に打たれてるあきを指差す)
041 萩宮 「凛々しいお姿…」
042 なつ 「こりゃ完璧ホレてんな…」
043 あき 「む、なつにはる殿。何か御用か?本日は非番ゆえ、のんびりしていたのだが…」
044 はる 「あきちゃんにお客様ですよ」
045 あき 「客人?」
046 萩宮 「あ、あのっ!あき殿!」
047 あき 「ん?あぁ、クロ殿か」
048 萩宮 「お、覚えてお出ででしたかっ」
049 あき 「あぁ。あの時は世話になった」
050 はる 「あきちゃん、クロ殿って狗郎丸さんじゃなかったんでしたっけ」
051 あき 「狗郎丸だと『苦労します』みたいで語呂がよくないであろう?だから某なりに工夫して呼んでいるのだ」
052 萩宮 「勿体ないお言葉、有り難き幸せ!」
053 なつ 「なんかもうラブラブじゃんか…」
054 はる 「みたいですね。何だか見ててこっちが赤面しちゃいます」
055 あき 「ところでクロ殿、こんな処まで何用だ?」
056 萩宮 「あの…その…もうじき、村で祭りがあって…それにあき殿も…」
057 あき 「悪いな、仕事が忙しくそちらに行く余裕がない。わざわざ御足労申し訳ないが…」
058 萩宮 「あ、はい…そうですよね…。いや、自分なんて当たり前なことを。あき殿は修行と仕事でお忙しいですものね…」
059 あき 「悪いな」
060 萩宮 「いえ、こちらこそ浅はかな真似を…」
061 はる 「あきちゃん、行かないんですか?折角お誘いにいらっしゃったのに」
062 あき 「夏のこのシーズンは祭り準備で四季宿亭が忙しくなる。宿帳を見たであろう?うつつをぬかしている場合ではない」
063 はる 「何だか萩宮様が可哀想です」
064 あき 「可哀想と言われてもだな…」(狼狽しつつ)
065 萩宮 「いえ、自分が突然押しかけ、勝手に言ったことです故、断られて当然。お気になされないで下さい」
066 はる 「あ、萩宮様」
067 なつ 「あーぁ、帰っちゃったよ?あき。いいのか?」
068 あき 「いいも何も仕事は仕事だ。」
069 なつ 「ひゃーお堅いね」
070 あき 「二人とも某と話していないで仕事に戻ったら如何か?」
071 はる 「はい…」



【廊下にて】(肩を落としながら歩いている狗郎丸に気付く四季)

072 萩宮 「はぁ、やはりここまで来てもあき殿には相手にされぬか…はぁ…」
073 四季 「お?あきには会えたか?」
074 萩宮 「女将殿…」
075 四季 「なんだ、フられたのか。まぁ、奴のことだ。どうせ仕事が忙しいだのなんだの言ったんだろう?違うか?」
076 萩宮 「はぁ…その通りで…」
077 四季 「まぁなんだ、こっちも暇じゃないんで、ましてやあきはデキル娘ときちゃこの時期手放せないんだな」
078 萩宮 「なんだか申し訳ありませんでした」
079 四季 「ま、現世の祭りは許可できんが、ここの祭りは許可せんこともない」
080 萩宮 「ここの祭り…ですか?」
081 四季 「下町の方で明日から祭りがあってな、そりゃまぁ賑やかだぞ。とてもこの世のものと思えない…あ?そりゃそうか。ここはこの世じゃないな」
082 萩宮 「明日からですか…」
083 四季 「どうだ?一部屋なら用意できないこともない。一泊ここに泊まって明日の夜祭り見物とか。悪くないんじゃないか?」
084 萩宮 「よろしいのですか?」
085 四季 「よろしいから提案しているんだ」
086 萩宮 「はぁ…?それでは一泊させて頂きます」
087 四季 「ありがとうございます。四季宿亭にようこそお越し下さいました。ごゆるりとお寛ぎ下さいませ、萩宮様」(深々とお辞儀)



【四季宿亭下町の祭当日】(夕暮れ、提灯に次々灯が灯っていく)

088 なつ 「おー祭りが始まりそうだぞ。」
089 はる 「そろそろですものね。賑やかになりそうですね」
090 なつ 「いいなぁーいいなぁー…」
091 はる 「お客様のお膳を運ばないと!ですよ。」
092 なつ 「あいあい…」
093 あき 「失礼つかまつる…四季殿、お呼びでございますか?」
094 四季 「あぁ来たか。あき、お前少し休め」
095 あき 「は?」
096 四季 「今日の祭りにでも行って気晴らしでもして来い」
097 あき 「お言葉ですが、四季殿。本日はただでさえ祭り客が多く、今も仕事がてんこまいだと言うのにそのようなことは…」
098 四季 「いいから休め。これは女将命令だ」
099 あき 「納得いきません、四季殿」
100 四季 「ほら、これ着替えて芭蕉の間に行け」
101 あき 「芭蕉の間…ですか?」
102 四季 「ほら、行った行った」
103 あき 「あぉぉっ…っと…この忙しい時に何をお考えなのだか…」



【芭蕉の間】(正座して待つ狗郎丸に小突くなつとはる)

104 なつ 「良かったな、クロウ」
105 萩宮 「クロ…クロウ?」
106 なつ 「狗郎丸だからクロウ」
107 萩宮 「はぁ…?」
108 はる 「なっちゃん、今は萩宮様はお客様なんですから言葉遣いは気をつけないとっ」
109 なつ 「あ、いっけねっ…」
110 萩宮 「あ、いえ、気にしませぬのでお気遣いなく。それよりお二方の尽力のお蔭ゆえ、こうしてあき殿とお会いする時間をご用意して頂けて…」
111 なつ 「礼なら四季ちゃんに言いなよ。ウチらは特に何もしてないからさ」
112 はる 「そうですよ。四季さんが一肌脱いでくれないと何も進まなかったですから」
113 萩宮 「かたじけない…」
114 なつ 「それよりあきとどういう関係なんだ?」
115 はる 「なっちゃん、失礼ですよ」
116 なつ 「はるだって気になるだろ?」
117 はる 「それはまぁ…その…少し…」(照れながら)
118 萩宮 「あ、はぁ…まぁそのあの…元々、あき殿がたまたま右腕を怪我をされて我が村を訪れたことがありまして…」
119 なつ 「で、怪我の治療をしたと」
120 萩宮 「はい。幸いそれほど傷は深くなかったので、少しの期間滞在して頂いたのですが、自分の方がすっかりあき殿に一目惚れをしてしまい…」
121 はる 「あきちゃんのどんなところが好きなんですかっ」
122 萩宮 「いや…その…あの…なんというか…」
123 はる 「ちょっ!なっちゃんッ!何するんですかっ」(なつ、はるの後から両耳を塞ぐ)
124 なつ 「少ししか気になんないって言ったからここまでー」
125 萩宮 「凛々しいところとか…その優しさに溢れるところなどいい所が数多くあり、女性らしさがまた…」
126 なつ 「えーそうかぁ?あきは乱暴だし、すぐ怒るし、女っぽいってのもわかんないなぁー」
127 萩宮 「あき殿は素晴らしい女性です」
128 あき 「失礼致す…誰が素晴らしい女性と?」
129 萩宮 「あき殿!?」
130 はる 「あきちゃん、その赤い浴衣とっても似合ってます!」
131 あき 「そ、そうか?」
132 なつ 「馬子にも衣装って奴だな」
133 萩宮 「滅相もない!お美しいです」
134 あき 「ありがとう、クロ殿」
135 はる 「それじゃ、あきちゃん。楽しんで来て下さいね」
136 あき 「あ、あぁ…イマイチ何でこのような展開になっているのか疑問に思うところもあるが…」
137 なつ 「さぁさ、行った行った!」
138 萩宮 「参りましょう、あき殿」
139 なつ 「…よし、行ったな。追いかけるぞ、はる」
140 はる 「はいっ!」



【下町】(出店を回りながら話歩く二人を後ろから尾行する、はるとなつ)

141 あき 「そうか、クロ殿はその後医学を学ばれているのだな」
142 萩宮 「はい。少しでも人の役に立ちたく日々勉学に励んでおります」
143 あき 「あの時は世話になったからな。医術を心得る者がいて助かった」
144 萩宮 「あき殿のお役に立てて何よりで…あのあき殿のっ…あ、いや…あき殿は今こちらで修行を?」
145 あき 「師匠に言われてな。仲居の仕事も剣術では学べぬことを沢山学べて日々精進している」
146 萩宮 「あ、ラムネ飲みますか?買って来ますよ」
147 あき 「あ、いや、わざわざ遠方より来られたクロ殿こそ。出そう」
148 萩宮 「いやいやいやっ」
149 はる 「いい雰囲気ですね」
150 なつ 「はるー、焼鳥があるぞ」(目を星のように輝かせながら焼鳥出店を指差し尻尾を振る)
151 はる 「もう、なっちゃん!」
152 なつ 「チョコバナナは押さえないとなっ!あ、リンゴ飴食うか?」
153 はる 「かき氷が食べたいです…ってあきちゃんたち見失っちゃいますよ!」
154 なつ 「平気平気、綿あめもいいなっ」
155 はる 「もぉ…あれ?あーなっちゃん!見失っちゃいました…ふぇーん」
156 あき 「ここらでいいな。祭りの喧騒もいいが、ここはここで落ち着くな」(人ごみから離れ、林で一休み)
157 萩宮 「ひ、人気のない場所でふ、二人っきり…」
158 あき 「村祭りに行けなくてすまないな」
159 萩宮 「あ、いえ。こちらの祭りはなかなか経験することのできない貴重な体験をさせて戴いて…」
160 あき 「そうであろう。こちらで前夜祭をしてから各村や町へと向かうと言うからな。一足先に祭りを楽しめるわけだ。現世にいては知ることもできなかった世界だ」
161 萩宮 「そうですね…」
162 なつ 「ほらほらいたいた」(りんご飴舐めながら林に入る)
163 はる 「こんな人気のない茂みでいい雰囲気ですね」
164 なつ 「そのまま押し倒せっ行けっ」
165 あき 「現世であれば花火を見ることができたんだろうがな。こちらではそういった目印が必要がなくて打ち上げないのだ」
166 萩宮 「打ち上げ花火を目指して神々やご先祖様が降りて来るんですね」
167 あき 「あぁ、花火は儚く美しい。まるで人間の生のようで…四季宿亭にいると自分が人間であることを忘れてしまいそうだ。自分だけ老いて、そしていずれ果ててしまう…周りを見ているとそう思ってしまう」
168 萩宮 「あき殿…」
169 なつ 「花火があがらない祭りは祭りじゃない。持って来たんだよねぇー打ち上げ花火」(ごそごそと円筒花火取り出す)
170 あき 「だからこそ短い人生を謳歌したいと。花火を見てそう誓いたかったんだがな…」
171 なつ 「その言葉を待ってましたぁッ!」
172 あき 「なっ…なつッ…!?」
173 なつ 「霜月特製、なつの花火発射ァッ」(花火打ち上げる)
174 あき 「現世でもないのに花火があがるとは…」
175 萩宮 「あの、あき殿ッ!自分、あき殿のことが…、あき殿の怪我をいつでも治す専属の医者に…付き人に…」
176 四季 「二人とも仕事サボって何してんだ?」
178 なつ 「うげ、四季ちゃん!?」(背後から現れた四季に驚き花火を倒す)
179 はる 「なっちゃん!花火がッ」
180 なつ 「へ?ヤベッ」
181 萩宮 「わっ!?」(花火をかわす)
182 なつ 「あっぶねー、危うくヒットするとこしたぁ…」
183 あき 「なつ、貴様…」
184 はる 「なっちゃん人に花火を向けちゃ危ないですよ」
185 なつ 「事故事故っ」
186 四季 「ふーっ二人ともサボって祭りに来た覚悟はできてるんだろうねぇ」(煙管で息を深く吐く)
187 なつ 「は、はる。逃げっぞ!」
188 四季 「待てぇいっ、なつ!」
189 なつ 「喰らえッ!花火砲ッ」
190 四季 「ぬぅっ!」
191 はる 「なっちゃん、花火は人に向けちゃダメですー」
192 なつ 「輝け、轟けっ夏の華火!」





作者のツブヤキ
 四季宿亭ラジオ第二回のラジオドラマに使用しようとしていたけど、没になったようで放置されていたのを発掘。
なんで没だったのか分からなかった…。ナズェダ。
これ創ったの3年以上前って驚きだやさ…もうそんなに経ったんかいな。
四季宿亭シリーズが一番多くなる気がします。登場人数が多いせいか物凄く様々なストーリーが自由に紡がれていくのです。
これからもお付き合いを宜しくお願い致します。

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