まもるべきもの

まもるべきもの

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1:1
総セリフ数 83
製作日 2013/5/6〜2013/5/24
概要説明  魔王を倒すために旅をしていた勇者だったが、ふと立ち寄った町で故郷の悪い噂を聞き、戻る。
勇者の目に飛び込んできたのは魔物たちによって滅ぼされ、変わり果てた姿だった。
守るべき国、守るべき故郷、守るべき家を失い、すっかり腑抜ける勇者。
仲間の魔法使いはなんとか再び立ち上がるように説得しようとするが、魔物に囲まれて…
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
勇者 41 王様の命令で勇者となり、魔王を倒すために旅を続けていた。
ムーマ 42 勇者の隣町に住み、仲間になった魔法使い。まだまだ修行中で、勇者の足を引っ張っている






【勇者の故郷】(魔物たちに滅ぼされ燻ぶる町を見て立ち尽くす勇者を追いかけて走りよるムーマ)

001 ムーマ 「勇者ーっ、勇者様ぁー」
002 勇者 「なんだよ、これ…」
003 ムーマ 「勇者様…うっ」(鼻をつく燻ぶった臭いにむせ返る)
004 勇者 「僕が何したって言うんだよ…」
005 ムーマ 「そんな…町が…」
006 勇者 「そりゃ、魔物に襲われた村だって見てきた…。魔物が襲ってきた町だってあった…。だけど」
007 ムーマ 「町を…勇者様の故郷が…」
008 勇者 「僕は何のために戦ってきたんだ?」(握っていた剣を落とす)
009 ムーマ 「勇者様は、世界のために…みんなの平和のために魔王を倒そうとされてきたんです」
010 勇者 「何が勇者だよ…何が、魔王だよ…」
011 ムーマ 「勇者様…」
012 勇者 「守るどころか、滅ぼしてるじゃないか!平和に暮らしていた人々がみんな…みんな犠牲になったじゃないか!」
013 ムーマ 「勇者様のお蔭で助けられた村だって…」
014 勇者 「母さんも爺ちゃんも、近所の子供たちだって、宿屋の娘も・・・王様も、居眠りばかりしてる門番も…皆みんないなくなっちゃっただろ…」
015 ムーマ 「魔王のすることは、あまりにも残酷すぎます」
016 勇者 「…僕は何のために戦えばいい?守るべきものも失って」
017 ムーマ 「勇者様?」
018 勇者 「母さんの笑顔のため、故郷を守るため…、大好きな町のみんなの暮らしを守るために戦ってきたんじゃなかったのか…」
019 ムーマ 「勇者様…。魔王を倒さないと平和が…」
020 勇者 「もういい…」(俯きながら)
021 ムーマ 「勇者様?」
022 勇者 「もういい…。もう疲れた。」
023 ムーマ 「魔王を倒さないと第二、第三のこの町のような被害が…」
024 勇者 「ふざけるなっ!僕を勇者にして、町をこのようにしたのは誰だ!僕を勇者と呼ぶお前たちだろっ!僕はただ平和に暮らしていたかった…暮らしていたかっただけなのに」
025 ムーマ 「勇者様にしか魔王は倒せないから…」
026 勇者 「僕を勇者なんかにしなければ今頃、僕だって皆だって、平和に暮らせていた…。もういい、守るべきものがない世界なんて…もう、いい」(頭を振りながら)
027 ムーマ 「勇者様、仇を…。この仇を取らなくていいの?町を滅ぼした魔王へ町人達の仇を取らなくて…」
028 勇者 「…黙れ」
029 ムーマ 「訳も分からず殺された町人達の仇を…」
030 勇者 「もうどうでもいいんだって!放っておいてくれよ!」(拳を強く握りしめる)
031 ムーマ 「魔王を倒さなくちゃっ…」
032 勇者 「放っておけって言ってるだろうがッ!!」(振り返り、目を剥き怒鳴る)
033 ムーマ 「…ッ」
034 勇者 「もう放っておいてくれ…。もう守るものなんてなくなったんだ」
035 ムーマ 「世界中に平和を望む人たちがまだ…」
036 勇者 「自分の故郷すら守れない奴に何を期待するんだよッ!期待がっ!期待が、僕の故郷を滅ぼしたんじゃないか…」
037 ムーマ 「それは…」
038 勇者 「もううんざりなんだよ。守れもしないのに、守るだなんて。正義のヒーローごっこは終わりでいいんだよ…」
039 ムーマ 「そしたら勇者様が頼りの人たちは…」
040 勇者 「知るかっ!お前だって見てきただろ!目の前で魔物に喰われる子供を助けられない無力で愚かな人間たちを」
041 ムーマ 「あれは…あれは、仕方なかった…仕方なかったんだよ…」
042 勇者 「そうかい。じゃあ、世界が滅びるのも仕方がないわ」
043 ムーマ 「勇者様…気持ちは分かるよ。私気持ちわかる…」
044 勇者 「分かるかっ!帰る故郷も家も、何もかも残っている人間と、全部を失った人間の気持ちなんて。笑わせるなッ」
045 ムーマ 「分かる…悔しいよ…きっと」
046 勇者 「分かった口を利くな!お前の故郷を滅ぼすぞッ」
047 ムーマ 「勇者様…」
048 勇者 「目の前で家族を殺されてもそう言っていられるんだったら、感心するね」
049 ムーマ 「確かに故郷という守るものを失ってしまったかもしれない…でも、勇者様は一人じゃない」
050 勇者 「何が残ってるっていうんだ」
051 ムーマ 「私が…いつまでも私が勇者様の傍に…。だから私を…」
052 勇者 「死ねよ」
053 ムーマ 「え…」
054 勇者 「なら死ねよ。もう守るつもりも守るのも嫌だ。」
055 ムーマ 「勇者様…」
056 勇者 「もううんざりなんだって。守る、守れ、救え…って。僕は無力な人間なんだ。神なんかじゃない。救世主なんかじゃない!」
057 ムーマ 「勇者様は勇者様だよ…救世主じゃない。勇者様だもの」
058 勇者 「もう勇者って呼ぶな!僕を勇者って呼ぶな!情けなくなるんだよ…何が勇者だよ…」
059 ムーマ 「今はツライと思う…だけど、それは乗り越えないといけない…乗り越えないといけないんだよ、勇者様」
060 勇者 「ふざけるなっ!試練なんていくつ与えるんだよ!もう守る世界も守りたい世界も失ったんだ。何もかもいらない、生きている意味さえも」
061 ムーマ 「そんなこと言わないで!そんなんじゃ、魔王の思う壺だよ、勇者様…」
062 勇者 「もう…疲れた」(座り込む)
063 ムーマ 「勇者様!まだ、この辺には魔物が…」
064 勇者 「僕も皆と一緒にこの世界を去る」
065 ムーマ 「そんなことしたら、世界はどうなっちゃうの?魔王に支配されちゃう…」
066 勇者 「知らないよ。大体都合のいい話じゃないか、酷使するだけ酷使して何もかも失ってまでも何でまだやり続けないといけない?僕を勇者にした王様だって死んだ。僕はもう勇者でなくていいんだ」
067 ムーマ 「ダメ…いなくなっちゃダメ…。勇者様は…勇者様は私の勇者様なんだから…」
068 勇者 「もうやめてくれよ…放っておいてくれって」
069 ムーマ 「ほっとけない。放っておけないよ」
070 勇者 「もう休ませてくれよ…」
071 ムーマ 「休んでも・・・休んでもいいよ…。だけど、必ず、必ず歩き出すんだよ、歩みを止めちゃダメなんだから…」
072 勇者 「……」
073 ムーマ 「勇者様と旅してきた時間は決して無駄じゃなかった。私には勇者様が必要だし、本当に必要なのは世界。魔王を倒すのは勇者様じゃなきゃいけないの…だから…」
074 勇者 「…どうやら旅はここまでのようだな」(肩をすくめ、大きく息をつく)
075 ムーマ 「え…?」
076 勇者 「魔物に囲まれたよ」(笑いながら)
077 ムーマ 「いつの間に…」(取り囲む魔物たちを見回し、すくみ上がる)
078 勇者 「僕は助かる気も、助ける気もないよ。もう、旅は終わりさ」
079 ムーマ 「…させない。勇者様を殺させはしない。たとえ、この身滅びようとも…守るって決めたんだから」
080 勇者 「勝手にしてくれ」(寝転がる)
081 ムーマ 「私には守るべきものが…ここに、ここにあるから!一歩も退かない!退かないんだから!」(怖さに震え、泣きそうになりながら強く杖を握りしめる)
082 勇者 「その気持ちで世界も救ってくれ…僕の代わりにね」
083 ムーマ 「勇者様も…世界も、私が守る!守るんだからっ守るんだから…くるなら、来るなら来なさいっ」






作者のツブヤキ
 最初に考えた時より半月以上経ってしまいました。
守るべきものを失っても勇者は世界を救うことはできるのでしょうか。
よく普通に暮らしていた勇者の町が襲われてーっていうのはありますけど、勇者が冒険中に町を襲われるってあまりない気がしますね。
6では一応冒険中に故郷が襲われましたっけか…。
しかし、勇者って過酷な職業だなって思いますね。もれなく魔王から狙われますっていう特権付じゃないですか。
勇者の命だけではなく、関係ない人にまで被害が及ぶのが辛いですよね。

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