鎮まる錨 -沈める怒り-

鎮まる錨 -沈める怒り-

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :4:1
総セリフ数 142
製作日 2012/11/7〜2012/11/7
概要説明  レーダーにも映らない、見張りの二人以外にも見えない幽霊船と衝突した大型客船は浸水を始め、沈没し始める。
同時期に錨を振り回す少女が現れ…
無数の亡霊の怒りを鎮めるには…錨を沈める必要があった―――
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
少女 28 大きな錨を持ち、自在に振り回す。海に沈められ、胸に秘めた怒りを他者を海中に沈めることで鎮める亡霊。
船員 22 航海士と共に海上監視をしていたが、隙を見てお酒を飲んでいた。が、船との衝突後、事態の重要性に酔いを覚ます
航海士 24 主に夜間などの海上監視業務を行っており、三等航海士。
船長 36 数多くの経験を積んできたベテラン。ただ、頑固なところがあるため、周りからは老害と呼ばれることもしばしば
機関士 33 操舵室で舵を執っている機関士。数々の海を経験し、嵐の夜も越えてきた腕の持ち主だが…自然災害以外の事象にはからっきし。






【見張り台・甲板・ブリッジ】(幽霊船との衝突後、ゆっくりと航行を続ける大型客船)

001 航海士 「船がぶつかった……」(呆然としながら宙を見続ける)
002 船長 「一体何にぶつかったというんだ…」
003 船員 「酔いも・・・俺も吹っ飛んだわ…」(ヨロヨロと立ち上がりながら)
004 船長 「状況報告ッ!」(立ち上がり、周りの船員を叱咤する)
005 機関士 「レーダー、計器ともに異常ありません」
006 船長 「では、今の衝突は何もなかったと言うのか」
007 機関士 「計器を見る限りでは何事もなかったかのように思えますが…」
008 船長 「そんな馬鹿なっ。全員が同じ夢を見ていたわけでもあるまいに」
009 機関士 「クジラか何かにぶつかったのでしょうか」
010 船長 「だといいんだがな…レーダーに映らないということはどこかのステルス潜水艦である可能性は」
011 機関士 「潜水艦であればどこかに穴が開くかと」
012 船長 「接触した場所がどこかと、被害状況把握、場合によっては乗客の避難についての対応を早急にするのだ」
013 機関士 「はいっ」



【甲板】(監視台から甲板へ降りる航海士)

014 航海士 「これは見張りどころじゃないぞ…」(慌てて甲板へと降りる)
015 船員 「おい!無事かっ!」
016 航海士 「なんとかな…」
017 船員 「俺は船尾でぶつかったがのものが何だったかを見てくる」
018 航海士 「俺は船首で被害を見る。あれだけの衝撃だ、無事であるはずがない。」
019 船員 「これで沈みでもしたら責任問題だぞ」
020 航海士 「既に何かと衝突しているだけで責任問題になるのは免れやしない」
021 船員 「ったく、何で俺の時に起きるんだ、畜生っ」
022 航海士 「報告はすぐに船長にだ。避難が必要な深刻な状況になっているかもしれないからな」
023 船員 「了解っ」
024 航海士 「急ぐぞっ」



【船首付近】(甲板に座り込んでいる短パンはいた少女)

025 航海士 「べっこり大穴開いていたらどうするか…」(懐中電灯で足元を照らしながらぼやく)
026 少女 「こんばんは」(くるっと振り向き、航海士を見る)
027 航海士 「…ん、こんなところで何やってるんだい?さっきの衝撃で危なかっただろう」
028 少女 「まずは挨拶しないとな…ってね」(ニッコリと笑う)
029 航海士 「お友達とかくれんぼかい?悪いけど、それは中でやっててもらえるかな」
030 少女 「かくれんぼ?それはこの船に乗っている乗客全員とってこと?」
031 航海士 「悪いけど、お兄さんは君と遊んでいる暇はないんだ」
032 少女 「そうだよね。かくれんぼだったらもう見つけちゃってるもんね?」
033 航海士 「ここは危ないから中に入りなさい」
034 少女 「鬼ごっこの方が楽しいかな?追いかけっこの」
035 航海士 「お兄さんの言葉が聴こえてるかい?」
036 少女 「じゃぁ…隠れ鬼でいっか。お兄さんはもう見つけたから、逃げていいよ?」
037 航海士 「お兄さんは何かにぶつかった原因を調べなくちゃいけないんだ。君とは遊んでられないんだよ」(懐中電灯で船首を照らす)
038 少女 「逃げないと捕まっちゃうよ?」
039 航海士 「だから、他の人に遊んでもらって。お兄さんは忙しいの」
040 少女 「…どうやってこの怒り、鎮めようか」
041 航海士 「あれ…おかしいなぁ…こすった痕一つなさそうだ。ありえるのか?」
042 少女 「ボクがこの船に移るためにぶつけたんだもの」
043 航海士 「は?」
044 少女 「この錨…どう沈めようか?」
045 航海士 「何だって?」(少女の不可解な言葉に眉を寄せて振り向く)
046 少女 「錨を沈めて、怒りを鎮めようか」(ひょいと航海士の制帽を奪う)
047 航海士 「おい、こら返せっ」(少女の手から制帽を取り返そうとする)
048 少女 「ボクの怒りは鎮まらない。錨が沈むのはこの船が沈む時さ」(きゅっと目深く制帽をかぶり、ニッと歯を見せる)
049 航海士 「ふざけてるとお兄さん怒るぞ!」(荒々しく捕まえようとする)
050 少女 「その怒り…鎮めてあげるよ。錨と共にね!」(さらりっと避けて身体をしならせる)
051 航海士 「うぼわぁっ・・・あばぁっ!?」(暗闇から鼻先をかすり、脇腹に激痛が走り弾き飛ばされる)
ジャラララララララン…ジャルルルルル…(錨の鎖が地面を這う音)
052 航海士 「が…っ……何が…」(血反吐を吐きながらうずくまる)
053 少女 「…お兄さんの怒り、鎮めてあげるよ。海の奥深くにね」(錨を大きく振るって航海士に狙いを定める)
054 航海士 「いか…り……うわぁあああああああああああああああああああっ…………」(少女の錨が見え、恐怖に顔が歪む)



【操舵室】(狂いだす計器やメーターの対応に追われる機関士)

055 機関士 「船長っ!計器が狂い始めました!?」
056 船長 「計器が狂いだした?」
057 機関士 「針が左右に振れて安定しません!」
058 船長 「何が原因だ」
059 機関士 「わかりませんっ」
060 船長 「強力な磁場が現れたのか?」
061 機関士 「レーダーに大量の反応が!!」
062 船長 「魚群か?」
063 機関士 「いえ…船舶レーダーの方です!」
064 船長 「馬鹿なっ!肉眼では何も見えない!仮に大量の船舶があったとするならば見えるはずだ!」
065 機関士 「それが…点滅していて場所もあちこち移動しているんです!気味が悪いほどに」
066 船長 「レーダーも故障したというのか!」
067 機関士 「一体何が起きているんですか」
068 船長 「こっちが聞きたい!」
069 機関士 「船長ッ!動力が停止、機関部が完全停止しました」
070 船長 「何が起きた」
071 機関士 「わかりません!」
072 船長 「ここは海のど真ん中なんだぞ、こんなところで遭難したら助からんぞ」
073 機関士 「第二、第三区画が浸水!隔壁が自動で作動しています!」
074 船長 「浸水だと!?先程の衝突か?」
075 機関士 「関係ない部分のはずです!隔壁作動が制御できません!」
076 船長 「そこには乗客がまだいるのではないのか!」
077 機関士 「早く乗客を避難させないと閉じ込められて船ごと沈みます!」
078 船長 「総員に告ぐ!ただちに乗客を救命ボートに避難させ、船から退避させよ!沈没に巻き込まれるぞ」
079 機関士 「はっ」



【客室前の通路】(避難でパニックになった乗客にあたる船員たち)

080 船員 「ったく、とんでもない話だぜ。まだこの船を満喫していないのに沈没だって?…はいはい、指示に従って移動してください!」
081 船長 「大丈夫です。この船は沈みません。安心して係の指示に従ってください」
082 船員 「はい、慌てないで。そこ押さないで!走らない!」
083 船長 「ボートも数あります。皆さん避難できます。皆さん節度を持った落ち着いた行動を!」
084 船員 「第二、第三区画は別ルートで避難しています。後で合流できますよ。ささ、甲板へ」
085 船長 「ここは任せた」
086 船員 「船長、どちらに!?」
087 船長 「操舵室だ」
088 船員 「ここ俺一人で仕切れって言うんですかっ!?」
089 船長 「こうなった原因を作り出したのは誰だ!」
090 船員 「チビっと酒を飲んだだけなのに…」



【操舵室】(計器やレーダーなどを何とかしようとする機関士たち)

091 機関士 「くそっ、どれもイカれてやがる…」
092 船長 「諸君、ここはもういい。直に船は沈む。動かなくなった船の舵にしがみついたところで、得るものは何もないぞ」
093 機関士 「船長しかし、我々はここを離れるわけにはいきません」
094 船長 「君たちはボートで避難するんだ」
095 機関士 「我々はここの責任者です。逃げ出すわけには」
096 船長 「動かない機械の前にボーっと突っ立っていることが責任を果たすことなのかね」
097 機関士 「船を動かさなければいけません!」
098 船長 「最期を見届けるのは私だけで十分だ。君たちは避難しなさい。すぐにだ!」
099 機関士 「最期まで諦められませんよ!」
100 船長 「これは船長命令だ。総員退避せよ。そして、乗客の先導、安全の確保に務めてくれ」
101 機関士 「船長…」
102 船長 「ただ今をもって、諸君たちの任を解く。すぐにここを出ていくんだ」
103 機関士 「…くっ、どうか御武運を!」
104 船長 「…一体何故こうなってしまったというのだ、何故!」
105 少女 「どうしてだろうね」
106 船長 「む…、お嬢ちゃん。迷子かね?みんなはボートに乗って移動しているぞ」
107 少女 「迷子…そう、迷子。行く宛もなく海を漂い続ける迷子…」
108 船長 「この船はもうじき沈んでしまうんだよ、お嬢ちゃんは早く避難しなさい。うん?その制帽は…誰かから貰ったのかい?」
109 少女 「航海士のお兄さんから」
110 船長 「そうか。イイ子だからその帽子を持って、ボートへ乗るんだ。いいね?」
111 少女 「錨、沈めてあげる」
112 船長 「錨?」
113 少女 「行き場のない怒り…鎮めてあげる」
114 船長 「何を言っているんだ、お嬢ちゃん。」
115 少女 「ボクがこの地に錨を打ち込んであげる。沈めてあげるよ」
116 船長 「意味が分からんな…一体何のことを…」
117 少女 「海にシズメテアゲル…」



【甲板】(救命ボードへ誘導を行っていたが、一緒に乗り込み、ボートの中から誘導する船員)

118 船員 「く…流石に船が傾いてきたな…そろそろ俺もボードに乗らさせてもらうとするか」
119 機関士 「船員は最後まで乗客の避難誘導しろ」
120 船員 「この救命ボードの船頭を俺が責任もってする。お前こそ、船に残って最期まで船と心中していろよ」
121 機関士 「なんだとっ」
122 船員 「あぁ、もういい。おーい、ボート降ろせっ」
123 機関士 「お前、降りろ!」
124 船員 「うるせー。突き落とされたくなければ大人しく座っていろ」
125 少女 「ところで船員さんたち、どこに避難するの?」
126 機関士 「どこって…」
127 船員 「…通りかかる船舶に助けてもらえるから大丈夫だよ、お嬢さん」
128 少女 「無駄だよ…このボードも船もみーんな沈んじゃうから」
129 船員 「大丈夫だ、俺たちは助かる。信じれば助かるからな」
130 少女 「この海域で沈んだ船の数々…無数の乗客たちの怨念が渦巻くこの海面を…怒りを鎮めることができる?」
131 機関士 「沈んだ船の数々…無数の乗客たちの怨念?」
132 少女 「怒りを鎮めるには、新たな錨を鎮めるしかない…それしかないよ?」(顔を上げてニコッとする)
133 船員 「新たな錨…意味が分かんねーな…お嬢さん、一体」
134 少女 「沈みし船の乗客よ!囚われた錨の鎖から解放されたければ、1000人沈めて静かにさせれば、その鎖を外そう!」(海面に向かって叫ぶ)
135 船員 「気でも触れてしまったのかい、お嬢さん…」
136 機関士 「いや、見ろ!海面を!」(ライトで海面を照らす)
137 船員 「あぁっ!?なんだこれ…っ!?」(救命ボートの合間に無数の青白い手が突き出ているのを見て腰を抜かす)
138 機関士 「まさか…レーダーに映っていたのは…」
139 少女 「ボクたちの怒りを鎮めるには、錨を沈めるしかないよ…その『命』という錨をね」(ニィッと笑う)
140 船員 「なんだ…この悪夢は…」(海面を漂う避難するボートがあちこちで悲鳴を上げながら次々と沈んでいく)
141 機関士 「…僕たちが何したって言うんだ」(放心状態で呟く)
142 少女 「さ、シズメヨウカ」(大きな錨を振り下ろす)






作者のツブヤキ
 錨を沈めると怒りを鎮める。ふと、錨を沈めて怒りを沈める。なんてことを思いついたのでそこから書き上げてみました。
ほんと、船幽霊の話が好きだなーって思います。いや、本物はホラーすぎて泣きそうになりますけど。
柄杓で沈められますからね。
まぁ十二分に錨で撲殺されるのも怖いですけど。

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