死神生命保険5

死神生命保険5

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1:1不問:1
総セリフ数 111
製作日 2012/10/29〜2012/10/29
概要説明  徐々に弱って顔色も悪くなっていく広茂。
死を受け入れるしかないのかと、納得のいかないまま諦めはじめる。
友華が徐々に広茂の異変に気付き始める…
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
菊池 広茂
(きくち ひろしげ)
56 妹想いの高校二年生。彼女ができて浮かれているが、良きお兄ちゃんとして友華も可愛がっている
菊池 友華
(きくち ともか)
33 広茂の妹の中学三年生。両親を突然失い、まだ心の整理はできていないが、兄を支えないとと強く気丈に振る舞っている
死神キル 22 死神界よりやってきた死神。広茂の母より生命保険の行使をしに現れる。人の形をしているが、人間のような顔を持っているかは不明






【夕方・菊池宅】(ケーキ箱片手に帰宅する広茂)

001 友華 「お兄ちゃん、お帰り。ご飯できてるよ」
002 広茂 「あー…佐川と飯食ってきてさ…お腹いっぱいなんだ」
003 友華 「えー?連絡入れてよ」
004 広茂 「悪い悪い、入れるタイミングがなかなかなくて…」
005 友華 「もぉ、合間見ていれるとかさ」
006 広茂 「ごめんなぁ。お詫びにほら、大好きなモンブラン買ってきたからさ」
007 友華 「え、ほんとっ!お詫びだなんて気が利いてるね」
008 広茂 「だろ?できるお兄ちゃんだからさ」
009 友華 「自分で言ったらダメでしょ」
010 広茂 「ダメか?」
011 友華 「ここのモンブラン大好きなんだよね。あれ、お兄ちゃんの分は?半分こ?」
012 広茂 「ケチ臭いこと言ってんなって。お詫びつったろ。全部友華の分だ。お兄ちゃんはお腹いっぱいだからさ」
013 友華 「ありがと。お兄ちゃん大好き」
014 広茂 「餌づけされた動物かっ、誰でもホイホイついてきそうだな」
015 友華 「別に私は餌づけされても懐かないもん」
016 広茂 「そうか?俺には尻尾をはち切れんばかりに振っている犬のようにしか見えないけどな?」
017 キル 「菊地広茂、お前は幻覚が見えるようになったのか?」
018 広茂 「は?バーカ、喩えだよ、喩え」
019 友華 「分かってるよ、それくらい。本当に犬に見えていたら頭おかしくなってるんだから」
020 広茂 「あ、え?あぁ…」
021 友華 「どうしたの?誰か見えない人とでも話していた?」
022 広茂 「いや、なんでもない」
023 友華 「…なんだか、顔青白いよ?具合悪いの?」
024 広茂 「あ、あぁ…ちょっと調子に乗って食い過ぎたかも」
025 友華 「もう、お兄ちゃんたら意地汚いんだから。早く寝なよ?」
026 広茂 「…そうだな」



【夜中・リビング】(電気もつけず、暗闇の中ぼんやりと食器棚に映る自分の顔を見つめる広茂)

027 広茂 「…ひどい顔だ」
028 キル 「元からだ」
029 広茂 「失礼だな。元々はこんなに青白くなかった」
030 キル 「人間に礼を尽くす必要が何故ある」
031 広茂 「はいはい、死神様でしたね」
032 キル 「じきにその青白さは血の気を失い、土気色になる。案ずるな」
033 広茂 「…どういう案ずるなだよ。心配しかしねぇよ」
034 キル 「浮かない顔してどうした」
035 広茂 「ほんと不思議な奴だな。死神のくせに気にかけてさ」
036 キル 「人間に多少なりは興味を持っているからな」
037 広茂 「…ほんとはさ、あのモンブラン食いたかったんだぜ?美味いんだぞ…ほんとにさ」
038 キル 「…そうか」
039 広茂 「何でさ、何で食えなくなっちまったんだよ…何でこんな身体になっちまったんだ…」
040 キル 「後悔しているのか?その身体」
041 広茂 「食べたいもんも食えなくて、激しい運動もできない。将来もない。何のために生きてるんだよ、俺は」
042 キル 「ただただ命が抜け出さぬよう、無理矢理身体に押し込めている器にすぎぬ」
043 広茂 「何で俺が…俺が死ななくちゃいけなかったんだ…」
044 キル 「そういう運命であったと言えば納得できるか?」
045 広茂 「納得なんかできるかっ」
046 キル 「…そうか」
047 広茂 「納得なんか…できるか…」
048 友華 「…お兄…ちゃん?」
049 広茂 「ん?あぁ…」
050 友華 「こんな時間に電気もつけないで何してるの?」
051 広茂 「あぁ、ちょっと考え事かな」
052 友華 「…泣いてた?」
053 広茂 「馬鹿、泣くわけないだろ」
054 友華 「失恋でもした?」
055 広茂 「してねーよ」
056 友華 「ま、あんな彼女さんいなくても私がいるしね」
057 広茂 「なんだそれ」
058 友華 「見栄張りたい時は付き合ってあげるよ。モンブランとかケーキ奢ってくれたら」
059 広茂 「ばーか」
060 友華 「馬鹿って何さー」
061 広茂 「俺の妹がこんなに可愛いはずがない」
062 友華 「外国に留学して欲しいの?それとも罵ればいい?」
063 広茂 「いや、言ってみただけだ。心折れるから汚物を見るような目で兄ちゃんを見ないでくれよ」
064 友華 「何かあったら私にすぐに言うんだよ」
065 広茂 「はいはい」
066 友華 「家族なんだし、頼れる可愛い妹でしょ」
067 広茂 「自分で言うな」
068 友華 「…なんか、お兄ちゃん最近いなくなっちゃいそうな顔してるんだもの」
069 広茂 「そうか?」
070 友華 「パパとママみたいに急にいなくなったりしないでね?」
071 広茂 「いなく…なる」
072 友華 「もう寂しい想いは嫌だよ…」
073 広茂 「彼氏作ればすぐに俺なんかいらなくなるって」
074 友華 「そんなんじゃないの!」
075 広茂 「明日に響くから早く寝た方がいいぞ起きれなかったら大変だろ」
076 友華 「うん。お兄ちゃんもね」
077 広茂 「あぁ…もう少ししたら寝るわ」
078 友華 「おやすみ、お兄ちゃん」
079 広茂 「…いなくならないでね…か。俺、いなくなっちまうのかな」
080 キル 「そうだ。」
081 広茂 「折角、友華が立ち直ったばっかだって言うのに、俺がいなくなったらアイツを誰が面倒みんだよ…」
082 キル 「獅子は谷から子を落とすらしい。それでも獅子の子は崖を這い上がって逞しくなるそうだ」
083 広茂 「何が言いたい」
084 キル 「お前が心配するほどあの娘はか弱いわけではないだろう」
085 広茂 「…別れがもうすぐ…か」



【朝・リビング】(朝食の後片付けをしながら起きてきた広茂に声掛ける)

086 友華 「おはよう、お兄ちゃん」
087 広茂 「あ、あぁ」
088 友華 「寝不足?顔色超ワルいよ?」
089 広茂 「顔色?」
090 友華 「病人みたいに真っ青。頬もこけてきているし。ちゃんとご飯食べてる?」
091 広茂 「まぁ…」
092 友華 「ちゃんとしないと病気になっちゃうからね」
093 広茂 「病気…か」
094 友華 「あ、今日日直だから先に出るね。皿洗いは帰ってからやるから。それじゃ、行ってきます」
095 広茂 「そんなに顔色悪いかな…」
096 キル 「機能が止まっているんだ。段々腐ってもくる」
097 広茂 「ゾンビってやつか」
098 キル 「近日中に身体がいうこときかなくなってくる」
099 広茂 「はは…ゾンビか…」
100 キル 「やり残したことがあれば早めに済ますことだな」
101 広茂 「いっそ、頭にボルトしめて、フランケンシュタイーンッてか」
102 キル 「やりたければやればいい」
103 広茂 「やるかっ!・・・これが死んでいくということか」
104 キル 「死を緩やかにしたものだ。死とは気付かない内に忍び寄り、突然襲いかかって来て一瞬のできごと」
105 広茂 「生殺しも惨いな」
106 キル 「死を徐々に受け入れていけるように配慮した結果だがな」
107 広茂 「死刑宣告をされ、死神の鎌をヒタヒタと喉元に突き付けられ、ただ振り下ろされるのを待ち続ける。そんな気分だ」
108 キル 「そうか」
109 広茂 「生きている気がしないな」
110 キル 「間もなく死ぬ身だ。満足に生きるも不満足に生きるもお前の自由だ」
111 広茂 「くっ…」






作者のツブヤキ
 もし病気なりなんなりで余命数ヶ月…数週間と言われたら…
あなたは何したいですか?何を望みますか?…その答えはすぐに出せますでしょうか。
私はすぐには答えが出ないと思います。
今も何したいと訊かれても「特にはない」…と。夢も希望もあったもんじゃないですね。
多分、少しでも自分が存在した証を残したいとして作品を最期の最期まで作品を創り続けるのではないでしょうか。

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