されど空の深さを知る 2

されど空の深さを知る 2

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1:1不問:1
総セリフ数 92
製作日 2010/8/17〜2010/8/18
概要説明  前線基地で勝利し、敵国の侵攻を防ぎ帰還したシャルル司令官。
だが前線基地での戦闘は過酷だった。多くの部下たちを亡くし、また命の大切さを考えさせられ、心に傷を負った。
戦況が芳しくない中、国民を総動員しようとする将軍に異議を唱える。
利用にあたって 利用規約
目安時間 10分程度   【〜10分】
登場キャラ セリフ数 性別 備考
マラド 26 国の元帥。軍事的関係事の一切を取り仕切っている。
フラン 27 将軍職に就き、軍の指令を直接行っている。時に冷酷で残忍な提案をすることもある。
シャルル 39 蒼い瞳と尖り耳が特徴の賢い少数民族。前線基地で司令官を務めてきた。






【作戦会議室】(前線基地より帰還したシャルルが将軍と元帥の間に登場)

001 シャルル 「只今、帰還しました」(敬礼し、入室)
002 マラド 「ほぅ…これはシャルル大佐。遠方よりご苦労だったなぁ」
003 シャルル 「ハ…」(頭下げる)
004 フラン 「無事、前線基地は役目を果たしたものの、我が国の旗色がよろしくない…」
005 マラド 「うむ…。だがな…」
006 フラン 「国が危機だというのに国民の危機感はまるでないっ」
007 シャルル 「フラン将軍は何をお咎めで…?」
008 マラド 「戦時中に映画や娯楽施設を利用するのが不謹慎とのことを」
009 フラン 「そなたもそう思うであろう?」
010 シャルル 「あ、いや…戦時中とはいえ、本能のある人間。禁欲せよというのも酷な話かと…」
011 フラン 「…まぁいい、今回話したいのはそこではないからな」
012 マラド 「この旗色の悪さをどう覆すかであろう?」
013 フラン 「国民総動員だ」
014 シャルル 「え?」
015 フラン 「国の危機だというのに国民が何もしないでいいわけがないだろう」
016 マラド 「国家総動員というと…えー、あー…」(戸惑い、言葉を探す)
017 フラン 「女子供、老人に至るまで全国民の動員だ」
018 シャルル 「フラン将軍、いくらなんでもそれは…」
019 フラン 「いくらなんでも…何です?」
020 マラド 「非戦闘員である女子供達まで動員するというのは…」
021 フラン 「軍人だけでは不足しているこの状況下でそんな言葉が出るんですか」
022 シャルル 「非戦闘員と我々軍人と訳が違う。能力だって鍛えているのといないのでは違う」
023 フラン 「まずは敵との数を合わせねばなるまい」
024 シャルル 「敵の戦闘員と我々の非戦闘員では比べられないっ」
025 フラン 「人数が多ければ弾よけくらいにはなる」
026 マラド 「国民を盾に使う気かっ」
027 フラン 「例えだ、例え。弾よけ以外にも使えるだろ」(鼻で笑うように)
028 マラド 「…しかし、人員が足りていないのは周知の事実…、止むおえんのかもしれない」
029 シャルル 「マラド元帥ッ!?」
030 フラン 「なに、国民の中に軍に入らずともそれ相応な力の持ち主だって潜んでいるはず。必ずしも力になる」
031 シャルル 「フラン将軍ッ、私めは反対でございますッ。国民をこの戦いに巻き込むのはあまりにも酷かと…」
032 フラン 「わかってない…わかってないね、シャルル大佐。国民たち並みに分かっていないね」
033 シャルル 「む…」
034 フラン 「あなたのところは確かに敵軍の侵攻を退け、前線で守り抜き、敵軍にも大きな打撃を与えた。だが、全土全体を見回せば、侵攻が進んでいる」
035 マラド 「ノベール地方は敵国に陥落してしまったからな…」
036 フラン 「国があっての国民である。悠長な事を言っている場合ではないっ。少しでも人手が必要なんだ」
037 マラド 「負ければどうなるか…」
038 フラン 「マラド元帥、国民総動員の召集、かけて頂けますね?」
039 マラド 「うむ……」(諦めたように頷く)
040 シャルル 「…お二方は、兵士たちの命を何だと思ってます?」
041 フラン 「ん?」
042 シャルル 「確かに我々軍隊は戦うのを専門とし、仕事として請け負っています。しかしそれは、戦うことのできない政治家たちの代行として戦う、言わば傭兵のようなものです」
043 マラド 「侯爵に仕えし騎士とな…」
044 シャルル 「話し合いでまとめられなかった尻拭いを我々が犠牲を払ってまで請け負っているという!!」(怒りで顔を赤く染める)
045 フラン 「黙れッ!!…これ以上の侮辱は国家へ対する侮辱ぞ」
046 シャルル 「兵士のみならず、国民たちまでこの争いに巻き込むとはどういうことですかっ」
047 フラン 「数が足りないって言っているでしょ!!」(怒鳴る)
048 シャルル 「数々って…人間を…数値でしか見ない。人の数は命の数。フラン将軍は命の重さを感じたことがおありですか?」
049 フラン 「命の重さ……戦争の前ではそんなの、国の存亡と天秤にかければいくらあっても傾かない」
050 シャルル 「…命の数、かけがえのない人。ただその言葉だけでは少ないように思えるかもしれない。…だけど、その命からは無数の思い出がある」
051 マラド 「無数の思い出…」
052 シャルル 「命がなくなることは、その人の未来がなくなること。母親から誕生し、育て上げられてきた。どれほど苦労して育て上げられたことか」
053 フラン 「む…」
054 シャルル 「1つの命…と言ってしまえば軽いかもしれない。だけど、186851時間…私が生きてきた時間。そこには数多くの関わりと思い出が存在している、そうでしょう?」
055 マラド 「ぅむ…」
056 シャルル 「犠牲者は単純な数だけではない…戦争は、多くの未来と可能性と、紡がれるはずのその人の人生を奪っていく。そうではないですか?」
057 フラン 「…今すぐ戦争をやめて降伏しろと言うのか?」(吐き捨てるように息をつく)
058 シャルル 「…我々兵士も、国民もあなた方や政治家たちの物でも駒でもないことをお忘れなく」
059 フラン 「…ほぅ、それがあなたの言い分か。上官に対しての物言いとは…呆れるを通り越して逆に感心ね」
060 シャルル 「出過ぎた真似を致しました…」(頭を下げる)
061 フラン 「マラド元帥」
062 マラド 「む?」
063 フラン 「国民総動員を。すぐに召集し、軍と合流へ。指揮は全て軍部へ」
064 マラド 「ふむ…」
065 シャルル 「く…」
066 フラン 「折角の熱弁だけど、美談じゃ戦争は止まらない。戦況も変わらない。現実を見ること、空ばかり見ててもわからないこと」(マラドと共に部屋を出ていく)
067 シャルル 「…空ばかり見ていてもわからない…かぁ」(小さく呟く)



【渡り廊下】(窓の外を眺めながら一人劇を始めるシャルル)

068 シャルル 「カエル君、カエル君。君は何故、空ばかり見ているの?」
069 シャルル 「やぁ、カメ君。いらっしゃい」(声色変える?)
070 シャルル 「君はいつも空を見上げてばかり。外に出たいんじゃないのかい?」
071 シャルル 「冗談を…。ボクはこの井戸で十分さ、それと目の前に広がる空だけでいっぱいいっぱいさ」(声色変える?)
072 シャルル 「海から見える、うーんと広い空を見たことがないからそんなことを言っているんだよ。邪魔したね」
073 マラド 「…シャルル大佐、少しよろしいかね?」(シャルルに近寄っていく)
074 シャルル 「あ…ハッ!!」(背筋を伸ばす)
075 マラド 「うむ…。先ほどの君の考え、確かに頷けた」
076 シャルル 「はぁ…」
077 マラド 「だがな、戦争…戦いとなるとそんなものになる。命なんて石ころ同然にな…。賢き君がそう考えるのも無理はない。だが、疑問に思ってはいけないものなのかもしれないな」
078 シャルル 「死んでいった者たちや我が同志たちを思うとそれは不憫でなりません…」
079 マラド 「確か、君は前線基地の戦闘において部下を失ったとか…」
080 シャルル 「えぇ…まぁ…」(俯く)
081 マラド 「すぐにまた戦地へと赴いてもらうことになるため、あとで君の所に新たな部下を行かせよう」
082 シャルル 「人は…」
083 マラド 「ん?」
084 シャルル 「大切な人が傷ついたり、いなくなったりするだけで人は物凄く心配するのに…どうして戦争はこうも物のように人を扱うのか…」
085 マラド 「人は…物事の犠牲を換算するときにどうしても理解しやすい形…数値に置き換えてしまう。それは仕方がないこと…また戦争という魔物が人々を変えてしまうのだろう」
086 シャルル 「戦争という魔物?」
087 マラド 「生きるか死ぬかの、非日常的な出来事。殺さなきゃ殺される。なら殺すしか…殺してもいい…そういった感情へと変わっていく」
088 シャルル 「それらの被害者と…」
089 マラド 「戦争の本当の加害者とは何なのか…考えなければならないのかもしれないな」
090 シャルル 「…元帥」
091 マラド 「オパート地方にて敵国の侵攻の阻止、領地奪還の任を任せたぞ。シャルル大佐」
092 シャルル 「ハッ…」






作者のツブヤキ
 気付けばいつの間にか続編を書いていて、テーマは思いっきり「戦争」になっていました。
8月は原爆投下や終戦記念日があるために戦争物の番組が結構やっているといった状態ですものね。
いつもこうした戦争を美化した作品しかないですが、こうした作品から「戦争」とは何なのかと考えてもらえるきっかけになればと思ってます。
戦争や争いのない世界。話し合いで解決ができないから力で物言う…他国のものを奪う。
そうしたことはいつの時代でもいけないことではないだろうか…。
それとも生きるためには仕方がないと…あなたは言いますか?

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