| 021 |
四季 |
「あの世に行く方、この世に黄泉還る方…ゆっくりと温泉に浸かられては?」 |
| 022 |
なつ |
「ここはあの世でもこの世でもない四季宿亭」 |
| 023 |
はる |
「…わぁ綺麗な桜並木…」(桜並木に感動のため息) |
| 024 |
四季 |
「四季を宿し、人々に様々な顔を見せ、楽しませる」 |
| 025 |
はる |
「あの…ごめんください…」(階段を登りきり、四季宿亭の扉をカラカラと開ける) |
| 026 |
なつ |
「神様、人間、妖怪、生ける者、死してなお彷徨う者、どなた様でも大歓迎。」 |
| 027 |
はる |
「誰もいないんですか…?」(玄関に入り、キョロキョロ見回す) |
| 028 |
なつ |
「精一杯のおもてなしをさせて戴きます」 |
| 029 |
はる |
「あの……クンクン。私焦げ臭いかな?」(目をぱちくりさせ、着物のにおいを嗅ぐ) |
| 030 |
四季 |
「色鮮やかな四季と自慢の温泉をごゆるりとお寛ぎ下さい」 |
| 031 |
はる |
「確か温泉あったような…お借りしてこよう…かな」 |
| 032 |
なつ |
「…くぁーっ仕事終わりの風呂での酒は最高だなぁっ!予約客もまだまだ来ないし。のんびり羽伸ばすかーってウチ羽ないんだった。尻尾あるけど」(露天風呂で徳利持ちながら) |
| 033 |
はる |
「温泉…お風呂…久しぶりです」(脱衣所でウキウキしながら着物脱ぐ) |
| 034 |
なつ |
「んーっ、四季ちゃんはお出かけしてるし!自由だぁーっ…なんか忘れてる気がするけど」 |
| 035 |
はる |
「…失礼しまーす…」(カラカラと温泉の戸を開ける) |
| 036 |
なつ |
「おぁっ!?誰だぁっ?お客にはまだ早いし、四季ちゃんなわけないし…」(伸ばしてた足を慌てて沈める) |
| 037 |
はる |
「わわ…桜の花びらでいっぱいのお風呂…」(感動) |
| 038 |
なつ |
「…どうみても客っぽいよな」 |
| 039 |
はる |
「すぅーっ…んーっ桜の香りが!」(匂いを嗅いで笑顔) |
| 040 |
なつ |
「さーて、どうしたもんか」(腕組み、考え込む) |
| 041 |
はる |
「失礼しま…す」(そろっと足から湯につかる) |
| 042 |
なつ |
「やっ!」(手を挙げ、声かける) |
| 043 |
はる |
「ひゃあっ!?」(目を見開いて驚く) |
| 044 |
なつ |
「お?」 |
| 045 |
はる |
「あわわわっ…」(バランス崩して倒れて沈む) |
| 046 |
なつ |
「お、悪い悪い驚かした?」(はるを引っ張り上げ、覗き込む) |
| 047 |
はる |
「は、はい…スミマセン」 |
| 048 |
なつ |
「いやいや、あんたお客さん?」 |
| 049 |
はる |
「あ、いえ…その…お客じゃないんですけど…」 |
| 050 |
なつ |
「おっと、あぶないあぶない。お客じゃなくて良かった口調口調。…で、客じゃなかったら何でここにいるんだ?」 |
| 051 |
はる |
「あの…ここで働かせてもらおうかと」 |
| 052 |
なつ |
「ほぅ!?ここで?…まぁ環境は最高だけどねっ、ちょっとこっちに来てみ」(くいっと手を引く) |
| 053 |
はる |
「ぇ?」 |
| 054 |
なつ |
「ほら、いいから」 |
| 055 |
はる |
「あ、はい」 |
| 056 |
なつ |
「この露天風呂からの一望は絶景なんだぞ」(四季宿亭周辺部が見下ろせる) |
| 057 |
はる |
「わぁ…」 |
| 058 |
なつ |
「すごいだろ?」(自慢げに) |
| 059 |
四季 |
「なつー、まーたサボってるんじゃないだろうなぁ」(遠くから) |
| 060 |
なつ |
「やべっ!四季ちゃん帰ってきた!帰ってきたぞ」(はるの手を引き、脱衣所へ走る) |
| 061 |
はる |
「へ?ぇ?」(目丸くする) |
| 062 |
なつ |
「またどやされちまうや」(慌てて着物着て帯締める) |
| 063 |
はる |
「へ?あの…ふぇ〜…」(体も洗わず出てきたのでショック) |
| 064 |
なつ |
「お帰りなさい、四季ちゃん」 |
| 065 |
四季 |
「はいはい。…何だ、迷子でも拾ったか?」(はるに気付き、訊く) |
| 066 |
なつ |
「ほら、自己紹介」(はるの尻を軽くたたく) |
| 067 |
はる |
「へ?は?あの小稲荷神社で土地神をしていまして…この度焼き出されまして…」(わたわた) |
| 068 |
四季 |
「小稲荷神社…ってあの分社か。焼き出された?放火か何か?」 |
| 069 |
はる |
「いえ、煙草のポイ捨てによる不審火というか…」 |
| 070 |
四季 |
「道理でゴミの燃やした臭いなわけだ」(目細める) |
| 071 |
はる |
「へ?あ…やっぱり焦げ臭いですか?…ゴミ?」 |
| 072 |
四季 |
「そうだね、まじはその鼻についたすすを落とそうか」(はるの鼻を指差した後、自分の鼻をかるくこする) |
| 073 |
はる |
「あ、はい」 |
| 074 |
四季 |
「で、新しい社を再建するためにお金が入り用ってわけだね」 |
| 075 |
はる |
「はい!」(力強く頷く) |
| 076 |
四季 |
「困ってる者を見捨てる気は無いよ。なつ、この子の面倒を頼んだよ」 |
| 077 |
なつ |
「ほいよ」 |
| 078 |
はる |
「よろしくお願いします」 |
| 079 |
四季 |
「お前の名前は『はる』だ。四季宿亭にもようやく春がきたみたいだしね」 |
| 080 |
はる |
「はる…」 |
| 081 |
なつ |
「ウチはなつ。よろしくな、はる」(手差し出す) |
| 082 |
はる |
「はい!よろしくお願いします」(両手で握りしめる) |
| 083 |
四季 |
「さぁて、お客様をお迎えする準備をしないとね。なつ、休んでる暇はないよ」(立ち上がる) |
| 084 |
なつ |
「はいはい…よっしゃ、んじゃ行くぞ、はるっ」 |
| 085 |
はる |
「はいっ!」 |