起きない君へ

起きない君へ

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1不問:1
総セリフ数 129
製作日 2016/11/9〜2016/11/29
概要説明  全て夢なら良かったのに。
夢は見ている時が楽しく、終わった時…目が覚めた時が虚しく辛い。
夢見たまま帰ってこない『先生』を起こすべく、『光』は声をかける。
利用にあたって 利用規約
目安時間    
登場キャラ セリフ数 性別 備考
先生 65 心が折れ、立ち上がることも起きることもできなくなった『先生』と呼ばれる者。
64 『先生』と共にいる存在。希望の光なのか、光なのか、人なのかそうでないのか。眠り続ける『先生』に声をかけ続ける。



【部屋】(ベッドに横たわる『先生』)

001 「――生…、先生!起きて下さい、先生」
002 先生 「……っ」
003 「先生、いつまで寝てるんですか。先生」
004 先生 「放っておいてくれ…」
005 「もう起きる時間ですよ」
006 先生 「起きたくないんだ…」
007 「起きて下さい、先生」
008 先生 「もう起きていたくないんだ」
009 「何言ってるんですか、起きて仕事してください」
010 先生 「…もうしたくないんだ。寝させてくれ」
011 「夢から目を覚ます時間ですよ、先生」
012 先生 「そのままずっと夢を見たいんだ…」
013 「現実がつらいから?」
014 先生 「……そうだ」
015 「目を背けたい現実だから?」
016 先生 「…見続けられるならずっと夢を見ていたい」
017 「…先生?夢は…。夢は醒めないものは、ないんですよ?いつか必ず醒めるもの」
018 先生 「醒めた時には何も残っていないのだよ…」
019 「大きな喪失感と、つらい現実?」
020 先生 「そうだ。だったらそのまま一生目を覚ましたくないじゃないか」
021 「見続けられる夢だったら…ですよね」
022 先生 「…悪夢でなければ。思い続ければ、寝ていれば夢はいくらでも見れる」
023 「先生の見ていた夢は悪夢ではなかったの?」
024 先生 「悪夢ではなかった。楽しい夢だった…」
025 「でももう、その夢の登場人物はいない」
026 先生 「そう、いない」
027 「じゃあ、その夢はもう終わりだよ」
028 先生 「…あぁ…。終わったんだろうな…」
029 「終わったんだったら、目を覚まさなきゃ」
030 先生 「まだ見続けられる…新しい夢を…夢の続きを」
031 「夢は夢でしかないんだよ、先生…」
032 先生 「夢を見たっていいじゃないか…夢を見るのは自由だろ?」
033 「夢を語るのはいい、大きな夢を描くのもいい、でもね、先生。現実から目を背ける夢は見ちゃいけないんだよ…」
034 先生 「…もう、夢はないんだよ。夢は終わったんだ…」
035 「先生…」
036 先生 「今を生きるのにいっぱいいっぱいになっていて、気が付けば体を失い…心をすり減らし…色々と麻痺していた」
037 「先生はそれでも前を向いていた」
038 先生 「そう、前を向いていた。気持ち悪いぐらいにな」
039 「前を向くことは大切。前を向かなきゃ歩けないから…」
040 先生 「後ろを振り返るほどのものなんて、そう大層なものなんか持ってなかったから。」
041 「下を向いたりすることは、たまにあっても、先生は前を向き続けた」
042 先生 「前を向かせてくれるものが、そこにはあった。あったんだろうな」
043 「みんなと集まる場所があって?」
044 先生 「一人じゃない。同じ時間、同じ空間を共有できる仲間がいて」
045 「仲間…か」
046 先生 「年齢も性別も考えも経験も、いろいろ違っていて。それでいても一緒にいて楽しくて…」
047 「それはほんのひと時の夢…。楽しい楽しい夢」
048 先生 「そう…。長くは続かない夢だった」
049 「楽しい夢こそ、儚く、短い夢だよね」
050 先生 「できることならずっと見ていたかった…」
051 「夢は、必ずいつか終わるもの…。同じ夢を見て、ひとり二人と目を覚ましていった…それが夢の終わり」
052 先生 「目を覚ましていった…そうかもしれないな」
053 「現実が忙しくなって、段々一緒に夢を見れなくなって、夢の空間は終わりを迎えて…先生は新たな夢を求めた」
054 先生 「そう…非常に面白い夢を見てしまったから。つい続きが気になってしまった」
055 「忠告はしたはずだよ、先生」
056 先生 「忠告はされた…。でもそれだけ魅力的で、夢中になる夢だったんだよ…」
057 「物語の糧になるかも…。力になるかも…。これはチャンスじゃないかって」
058 先生 「そう…。そうなんだ」
059 「バカだなぁ…ほんと。バカだなぁ…先生」
060 先生 「いつでも目を覚ますことのできる夢だと思った…。自分は大丈夫だって……」
061 「大丈夫なわけないじゃんか…先生」
062 先生 「楽しくて…楽しくて……楽しく…て」
063 「先生が夢に逃げたくなったのも知ってる……」
064 先生 「いつしか手が止まっていて、足も止まっていて、気が付いたら時間ばかりが流れていて…」
065 「そうだね…。先生はそうやって、少しずつ、一歩一歩夢の深みにはまっていった…」
066 先生 「いずれ醒める夢だと分かっていながらも…その歩みは止められなかった」
067 「甘く見過ぎてたんだよ、先生は」
068 先生 「軽いヤケドくらいだと思ってたんだよな…」
069 「小さな火が、身を焦がす炎に変わっていることにも気付かないで先生は…」
070 先生 「おかしいな…とか、あーこれはヤバいかもなとは思ったさ」
071 「思ったけど。気が付いた時にはもう…消せやしない大火事だったわけだよね、先生」
072 先生 「…そう。それで俺はもう燃え尽きたわけだ」
073 「くすぶりは?」
074 先生 「そりゃくすぶってるよ」
075 「そのくすぶりを他のことに利用してよ、先生」
076 先生 「もうそんな力は残っていないよ」
077 「いくらでも煽るから、うちわとか手とか」
078 先生 「煽るな…。煽ぐだろ…」
079 「なっさけねー、燃えカス、まさしくクズかよ」
080 先生 「マジで死ぬけど…それ」
081 「まぁ、先生は煽ってもダメなのは知ってる」
082 先生 「何故煽ったし…」
083 「仕事をしてよ、先生…。起きてペンを取ってよ、先生」
084 先生 「俺じゃなくていい…。俺がペンを取らなくたっていい…」
085 「転がったペンを先生は拾わないといけない」
086 先生 「そのペンは、もうゴミ箱いきだ」
087 「まだ書けるよ、先生。そのペンはまだ使えるよ」
088 先生 「使えない。もうカスレカスレで使い物になりやしないよ…」
089 「ボロボロかもしれない…だけどまだ」
090 先生 「まだ?…もうダメさ。そのまま夢を再び見るために眠りにつかせてくれ」
091 「もう十分楽しい夢は見たでしょう、先生。もう夢の時間は終わりだよ」
092 先生 「夢から醒めたらそこに何がある」
093 「現実」
094 先生 「そう、誰もいないベッドの上という現実だ」
095 「先生、孤独が怖いの?」
096 先生 「あぁ、孤独は怖い。一人は怖い。独りは…」
097 「孤独という魔物に心を食われちゃいました?先生」
098 先生 「一人、二人と自分のそばから人が消えて行って最後に何が残る」
099 「……」
100 先生 「気が付いてしまった…。気付いてしまった。夢中になりすぎて、足元が真っ暗なことに」
101 「夢中になって光を追いかけたから…」
102 先生 「もう帰る道はないし、立ち止まったら。もう俺は一歩も動けなくなる」
103 「そう、先生はもう…」
104 先生 「先生はもう死んだのかもしれないな」
105 「そっか…」
106 先生 「がっかりさせて申し訳ない」
107 「もう先生はあの頃の先生はいない」
108 先生 「人は変わる。変わらずにはいられない。今まで変わってきていないつもりでいたから、一番驚いているよ」
109 「大好きな先生は夢の中で死んでしまった。強い毒に侵されて…死んでしまった」
110 先生 「これで、もう俺が起きる理由はなくなったんだ」
111 「……もう目を覚まさないのですか」
112 先生 「終わらない夢をね…。全て夢だったね、と笑えるように。」
113 「先生が夢じゃなくて良かった…という現実があることを」
114 先生 「現実はいつでも残酷でつらいものさ」
115 「先生が目を覚ますのを待ってる」
116 先生 「目はな…、もう閉じるしかない。もう何も見なくていいように」
117 「目をつぶってしまうの?」
118 先生 「目はつむるためにある。その閉じた眼が開かれるときは…灼熱の炎に焼かれ時だろうな」
119 「その時見えるものは、なんだろうね。先生」
120 先生 「すすで焦げた真っ黒い天井か。炭の花か…なんだろうな」
121 「…そうなる前に再び目を開くことを祈ってるよ、先生」
122 先生 「……おやすみ。煩わしいこの世界に終わりを。」
123 「…今日とはお別れ。さようなら。明日を夢見て…おやすみ、先生」



【】()

124 「――生…、先生!起きて下さい、先生」
125 先生 「…あと何回夢を見れば、終わりが来るんだい?」
126 「冷たくなっちゃ嫌ですよ、先生…」
127 先生 「嗚呼、もう起きる力はなさそうだ……」
128 「先生、こんなところで寝ないでくださいよ…起きて下さい、先生!」
129 先生 「何回起きれば、夢になるだろうか――」






作者のツブヤキ
 夢がリアルすぎて、現実なのか夢なのか分からなくなる時ってありませんか?
夢の中で仕事していて、バッチリ疲れるとか。あんなにしっかり考えて作品とか書いていたのに朝起きてみると真っ白とか。
あれあの話は夢での出来事だったんだっけ?それとも現実に起きたことだったんだっけと記憶が混乱することも。
最近はあまりにも心に負荷がかかり過ぎて、強制的に現実逃避の夢認定が半端ないです。
多分色々と夢だったんだと思う。何も残ってないし。そんなものだよね

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