魔王の掃除係

魔王の掃除係

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 不問:2
総セリフ数 92
製作日 2015/9/8〜2015/9/8
概要説明  いつもは黄色い月も、紫月に蒼白く輝き、少し肌寒い何かいつもと違う夜。
主に仕える従者は妙な胸騒ぎを感じていた。
その悪寒、寒気、胸騒ぎは決して気のせいではなく、その身に迫ろうとしていた。
ただ、与えられたのは、掃除の任だけだった―――
利用にあたって 利用規約
目安時間    
登場キャラ セリフ数 性別 備考
魔王 46 魔界から人間界に侵攻し、居城を構える。人間の暮らしをそこそこ楽しんでいる
ユク 46 魔王の忠実なるシモベ。魔界から魔王についてきて身の回りから何から何まで世話をする従者。



【魔王城 王の間】(玉座に座る王のところに呼ばれる)

001 ユク 「魔王様…お呼びでしょうか」
002 魔王 「今宵は紫月が美しく輝いて美しいぞ」
003 ユク 「…さようですね」
004 魔王 「魔界では紅月が当たり前だったがこの地では様々な姿を魅せてくれる」
005 ユク 「今夜は妙に冷え込みます。マントをお持ち致しました」
006 魔王 「気が利くな」
007 ユク 「魔王様に仕えるならば、これくらいのこと気が利かなければ、務まりません」
008 魔王 「そうだな、私の側で仕える者は相応しくあるべきだ」
009 ユク 「少し肌寒いくらいです。体調など崩されませんよう」
010 魔王 「自分の体は自分がよく分かる」
011 ユク 「こちら側に来てから幾百年…真夏の夜にこんなに冷え込む日はそうなかったかと思いましたので」
012 魔王 「夏の終わりなだけだろう」
013 ユク 「終わりですか…」
014 魔王 「夏の終わりが恋しいか」
015 ユク 「いえ、そのようなことは」
016 魔王 「それとも魔界の代わり映えのしない気候が懐かしいか」
017 ユク 「懐かしくないと言えば嘘になるかもしれません」
018 魔王 「暇を出してやってもよいぞ」
019 ユク 「魔王様のお側が私の故郷です。帰るところなどありません」
020 魔王 「…ユク、今宵はよく喋るな」
021 ユク 「申し訳ありません。何だか妙な胸騒ぎが…どうにも落ち着かず」
022 魔王 「ほぉ…胸騒ぎ」
023 ユク 「いつもと違い、何かざわついているというか」
024 魔王 「違う風でも感じているのか」
025 ユク 「何がそうしているかのは分かりません…従者の戯言と流して下さい」
026 魔王 「戯れ言とな…」
027 ユク 「紅茶でもご用意致しましょうか?」
028 魔王 「…頼みたいところだが、酒のグラスを用意してくれ」
029 ユク 「誰かお客様でも?」
030 魔王 「招かれざる客人がな」
031 ユク 「それはそれは実に無礼な客人ですね」
032 魔王 「何、非礼を詫びるような者ではあるまい。勇ましいことは良いことだ」
033 ユク 「…勇者ですか」
034 魔王 「掃除道具の準備もぬかりなく…だ」
035 ユク 「かしこまりました」
036 魔王 「万が一のことがあれば、書斎は塵一つ残さず消し去るように」
037 ユク 「…魔王様!?一体」
038 魔王 「胸騒ぎがするのであろう」
039 ユク 「そんなッ戯れ言です。私がたわけたことを申したばかりに何を弱気なことを」
040 魔王 「何、常に万に一、億に一、全ての事象に備えるが王たるもの…」
041 ユク 「魔王様の身に何かありましたら私はすぐに…」
042 魔王 「ユク」
043 ユク 「はい」
044 魔王 「魔界とこちらは遠かったか?」
045 ユク 「いえ…」
046 魔王 「ならば案ずることもなかろう」
047 ユク 「…はぁ…?」
048 魔王 「常に死の世界は隣り合わせ。そう長い旅にはならぬ」
049 ユク 「魔王様やめて下さいッ!らしくありません」
050 魔王 「…何、勇者に倒されたとしても復活する。輪廻は終わらぬ」
051 ユク 「魔王様は…魔王様は勇者ごときに…やられたりしません」
052 魔王 「ユク、滅びない王などいない。いないのだ、ユク」
053 ユク 「魔王様は永久不滅です」
054 魔王 「…フ……」
055 ユク 「魔王様?」
056 魔王 「フ…ククク…フフフ…ハハハハッ!」
057 ユク 「如何されました、魔王様」
058 魔王 「まるで余が最期の時のやり取りのようで可笑しくなっただけだ」
059 ユク 「最期だなんて縁起でもありませんッ」
060 魔王 「そうだ。ユクの余への忠誠は演技でもない…そうであろう」
061 ユク 「……」
062 魔王 「ククク…ユクが喋るのがあまりにも珍しいのでつい…な」
063 ユク 「勇者が下にいるのであれば私は…」
064 魔王 「ユク」
065 ユク 「はい」
066 魔王 「お前は何だ?」
067 ユク 「魔王様の従者です」
068 魔王 「違う」
069 ユク 「……しもべ…でしょうか」
070 魔王 「…まぁ半分正解で半分不正解だ」
071 ユク 「はぁ…?」
072 魔王 「余の、この城の掃除係だ」
073 ユク 「掃除係…ですか?」
074 魔王 「余が食い散らかした時も、柱が血で染まった時も塵一つ残さず綺麗にしていただろう」
075 ユク 「それはもちろん、それが私の使命、役目ですから」
076 魔王 「そうだ。汚れたらきれいに片付ける。それが役目だ」
077 ユク 「それは言われずとも、こなすつもりですが…」
078 魔王 「それが肉塊であろうと、塵積もった塵であろうと、何であろうと…だ」
079 ユク 「魔王様、私は…気が気ではありません。魔王様の一言一言が恐ろしく、まるで聞いてはならぬ言葉のように思えます」
080 魔王 「掃除係は後片付けだ。ただただ痕を消せばいい」
081 ユク 「…仰せのままに」
082 魔王 「何、ユク。貴様の仕事を増やすだけだ。案ずるな」
083 ユク 「……ッ。魔王様、紅茶を…」
084 魔王 「いや、入念に掃除道具を磨きあげておくのだな」
085 ユク 「魔王様…」
086 魔王 「下がれ、ユク。貴様の仕事はまだ先だ」
087 ユク 「ご武運をッ」
088 魔王 「……さて、勇者よ。よくぞ来た。今宵は珍しい紫月。美しく輝いて美しいぞ、最期に実にふさわしいではないか」
089 ユク 「…違う。震えは…寒気なんかじゃない。武者震いなんかじゃない。この震えは高揚だ。掃除係として、魔王様の…魔王様の掃除係として」
090 魔王 「…そうか、酒もたしなまないとはな。人は儚い命、楽しまずに勿体ないな……ならば、余が楽しませてもらおうッ!」
091 ユク 「魔王様の名に懸けて、ユク。全力で掃除致します」
092 魔王 「その体、その希望、その命喰らい尽くしてくれるわっ」






作者のツブヤキ
 勇者・魔王フェア期間中にサクッと考えついてサクッと書いた作品となります。
勇者を待ち続ける魔王。意外と魔界から移ってきて優雅に暮らしていたけど、やっぱり勇者が倒しに現れちゃって…みたいなお話です。
今回書いていて、あれって思ったのが『魔王(専属)の掃除係』という意味合いから『魔王の(を)掃除係』といった意味合いにも取れるなという謎にかけてます。
一気にユクの危険度・野心度が上がるという。
魔王は死亡フラグが立っているとして、ユクは一体魔王亡き後、どういう行動に出るのかが気になるところです。
『掃除係』として勇者を『掃除』しに闇討ちしにいくのか、勇者たちがいなくなるのを息を潜めて魔王城を焼き払うのか…。
ユクの運命も気になるところですね。

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