おとぎ話の魔王

おとぎ話の魔王

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :2不問:2
総セリフ数 88
製作日 2015/7/9〜2015/7/9
概要説明  かつていた魔王が勇者に倒されてから平和が続き、いつしか人々の中から勇者は英雄化され、
魔王はおとぎ話だけのお話とされていった。その魔王がかつての長い長い眠りから目覚めて……
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
隊長 16 国境付近を守る兵士の髭も顔も渋い隊長
兵士 17 国境付近を守る長年の平和ボケで危機感を失っている兵士
魔王 28 遠い昔、勇者に敗れ、眠りについていたが、傷が癒え長い長い眠りから目を覚ます。
ゾロルノーヴ 27 魔王の忠実なる下僕。魔王が眠りについている間、魔王軍残党で魔王城を死守し続ける






【国境付近城砦】(見張り台に立つ二人の兵士)

001 兵士 「ふぁーー退屈退屈」
002 隊長 「ちゃんと見張っていろ」
003 兵士 「平和が一番と言っても、こうも何もないと退屈ってものでさ」
004 隊長 「平和になるとこうも平和ボケした輩が誕生するわけか」
005 兵士 「兵士の仕事って言ってもコソ泥を捕まえただの、迷子のお手伝いだの…」
006 隊長 「いくらお隣さんが攻めてこないからと言って気を抜くな」
007 兵士 「突然ドンパチ戦争が始まるわけでもないわけだし」
008 隊長 「こう危機がないと腑抜けの出来上がりってわけだ」
009 兵士 「まぁ非常事態には対応しますよ?その為に訓練して槍とか使えるようになったわけですし」(槍で突く真似する)
010 隊長 「その昔、魔王が現れた時、砦に行けと言われたら、墓穴に行くようなものだと言われていたがな」
011 兵士 「魔王って、どれ程昔の話だか。隣国と共闘するために創られた共通の敵ですよね」
012 隊長 「魔王があったからこそ、隣国とも友好な関係とも言われているがな」
013 兵士 「もはやおとぎ話ですよ、おとぎ話。魔王なんておとぎ話の登場人物」
014 隊長 「こう何もない日々が続くとな」
015 兵士 「童話作家が創った出来たストーリーなんですよ。子供のころ、わくわくして聞きましたけどね」
016 隊長 「もし現れたら、俺たちが真っ先に駆けつけて市民を守らないといけないんだからな」
017 兵士 「ハイハイ、オレたち一人一人が勇者様ですからね」
018 隊長 「まぁそういうことだ。」
019 兵士 「おとぎ話の魔王を倒すためのおとぎ話の登場人物ってわけですか。ならこの世界もおとぎ話でできているのかもしれないですねー」
020 隊長 「おとぎ話はベッドの中で見るんだな」
021 兵士 「初めにおとぎ話をしたのは隊長じゃないですか」
022 隊長 「今は退屈と暇と、平和の中の仕事と戦ってくれ」(肩をポンと叩き去る)
023 兵士 「へいへい。おとぎ話はおとぎ話。魔王なんてくだらない話は子供にだけ語ってくれって」



【魔王城地下】(横たわった魔王がゆっくり目を開ける)

024 魔王 「……ッ―――」
025 ゾル 「お目覚めですか、魔王様」
026 魔王 「…またしばし眠りについても良い気分だが」
027 ゾル 「魔王様が眠りにつかれてから数百年…人間どもは魔王様の恐怖を忘れ、好き勝手しております」
028 魔王 「そうか」
029 ゾル 「魔王様…」
030 魔王 「…余が眠りについた数百年。黙って指を咥えていたか」
031 ゾル 「とんでもございません。我が魔王軍残党で何度も進撃致しましたが…勇者共に返り討ちにあい…」
032 魔王 「魔王軍残党?」
033 ゾル 「ハッ!わ、私としたことがッ」
034 魔王 「フフッ、敗者には相応しい言葉だろうな」
035 ゾル 「も、申し訳ございませんッ」
036 魔王 「まぁ、永き間に積もり積もった感情もあろうな」
037 ゾル 「め、滅相もございませんッ」
038 魔王 「……長い長い夢を見ていたようだ」
039 ゾル 「夢…でございますか」
040 魔王 「…夢のせいで、貴様の名も忘れてしまったようだ」
041 ゾル 「ハハッ。私はゾロルノーヴでございます。魔王様に忠誠を誓い、お目覚めになるまで常に共におりました」
042 魔王 「そうか、ゾル」
043 ゾル 「ハッ」
044 魔王 「貴様は余に何を求める?」
045 ゾル 「何を……?と、とんでもございませんっ魔王様に私のようなものが求めることなど…」
046 魔王 「何も求めない…と。そう…言うのだな?」(ギロリと睨む)
047 ゾル 「いや、その…あの…」(慌てる)
048 魔王 「久しぶりの会話でろくに話もできなくなってしまったか?ゾル」
049 ゾル 「うぇうぇうぇ…」(焦って言葉にならない)
050 魔王 「貴様が余に何をして欲しいのかと訊いている」
051 ゾル 「お、恐れながら申し上げます。私は、魔王様に眠りにつかれる前の……あと一歩であった世界征服を…人類を支配して欲しゅうございます」(土下座する)
052 魔王 「魔王としての力を取り戻せ…と。そう申すか」
053 ゾル 「ハハァッ!」(額を床にこすり付ける)
054 魔王 「……その言葉。もっともだろう」
055 ゾル 「私が言うことではございませんでしたっ出過ぎた真似をッ」
056 魔王 「寝ぼけてしまって頭がうまく回っていないようだ」
057 ゾル 「はっ……えっと…」
058 魔王 「引き続き余のサポートを頼む。何、眠りについて疎くなったこの世界に余より詳しいのは貴様だろ」
059 ゾル 「ハハァッ!魔王様の為に身も心も、血の一滴までも捧げますッ」(深々と頭下げる)
060 魔王 「…さて、再び勇者を探すとするか」
061 ゾル 「魔王様が目覚められたということはどこかに勇者が誕生していてもおかしくないですからね」
062 魔王 「…また死の淵に追いやられたとしても…我は勇者と」
063 ゾル 「魔王様…如何いたしましょうか」
064 魔王 「余が勇者と対面するのはこの玉座で…だ」
065 ゾル 「魔王様のお力を持ってすれば、人類を支配するのにそんなにかかりません」
066 魔王 「…おとぎ話の魔王はな」
067 ゾル 「おとぎ話の魔王…でございますか?」(ポカンとする)
068 魔王 「昔話も年月が経てば、やがてはおとぎ話になるそうだ」
069 ゾル 「いかにも愚かな人間たちの考えそうなことですね」
070 魔王 「語り継いで消えない歴史とするためなのか。それとも現実から目を逸らすための物語か」
071 ゾル 「手始めに何から始めましょうか、魔王様」(ニヤリとする)
072 魔王 「何から?ゾル。余は魔王ぞ」
073 ゾル 「わ、私はまたもや魔王様に…ももも、申し訳ございませんッ」
074 魔王 「何、魔王の在り方を説こうとしたまでだ。謝るな」
075 ゾル 「ハハッ」
076 魔王 「魔王はな…勇者が目の前に現れるその時まで、玉座に座り、待ち続ける。そういうものだ」
077 ゾル 「ハァッー!」
078 魔王 「まもなく始まるわけだ、おとぎ話の悪夢が」



【国境付近城砦】(突然の土煙に魔物に襲われる兵士たち)

079 兵士 「敵影確認できませんッ!」(土煙を見ながら叫ぶ)
080 隊長 「何が起きているんだッ」
081 兵士 「次々仲間がやられてますっ」
082 隊長 「クソッ平和ボケしていたザマがこれかッ」
083 兵士 「隣国が攻めてきたわけでもないのであれば、この正体不明の原因は…」
084 隊長 「おとぎ話の魔王様ってわけだ」
085 兵士 「隊長、こんな時にバカな事言ってないで下さいよ」
086 隊長 「じゃあ世界の終りか?」
087 兵士 「縁起でもない事を言わないで下さいよっ」
088 隊長 ……いや、俺たちの人生の終わり……だった―――(迫りくる魔物の一撃に目を見開く)






作者のツブヤキ
 魔王の誕生っていつも唐突なんだと思います。そして平和ボケした人々。
長い長い平和が続くとどうしても人は危機感を忘れてしまうものかと。
長く続けば、やがて語り継がれていく物語と変わり、そして自分たちとほど遠い、ただのおとぎ話のように感じてしまう。
戦争も恐ろしいけど、人間たちが全く歯の立たない相手って恐怖だと。
魔王と勇者なんてとっくに忘れ去られた、おとぎ話のそんな物語。

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