・されど空の深さを知る・

されど空の深さを知る

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :5:2不問:1
総セリフ数 623
製作日 2008/11/25〜2015/7/31
概要説明  前線基地の司令官のシャルルは周りの人とは違った少数民族だった。
生まれ持ちながら高い知能を持つ為、抜擢されたのではないかと周囲に疎まれことに慣れず、気にしていた。
部下のルイはそんなシャルルと同期で入隊し、ずっと見てきてよき理解者であった。
自分の無茶からそんなルイを失い、出世をしていくシャルル。シャルルの活躍で隣国との戦争は終局へと向かうのだが……
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
シャルル 226 高い知能を持つ少数民族。青い瞳と尖った耳の容姿や周囲の噂を気にしている。
ルイ 193 シャルルの部下。真面目な性格でシャルルを支える。シャルルのよき理解者。
マラド 27 国の元帥。軍事的関係事の一切を取り仕切っている。
フラン 48 将軍職に就き、軍の指令を直接行っている。時に冷酷で残忍な提案をすることもある。
テトラ 56 シャルルの新パートナー。軍人としての誇りが高く、多少傲慢な面もある。
村人 14 田舎村に住む人々の一人。
農民 17 田舎訛りの激しい、田畑に愛情を注ぐ、農業に勤しむ農民。
ミシェル 31 シャルルと同じロナンバルドで親友同士。容姿端麗の国民的アイドル。






【前線航空基地】(隣国との戦争こう着状態でいつ攻めてくるか分からない状況下)

001 シャルル 「よぉーし、絶好の交戦日和だなー」(雨戸を開きながら)
002 ルイ 「なに物騒なこと言ってるんですか…」
003 シャルル 「空が青い。ルイ、上に行こうか」
004 ルイ 「シャルル司令官、仕事してください…」
005 シャルル 「仕事って?」
006 ルイ 「戦況の報告書や通信兵に対する返信や激励、部下たちに士気高揚のための激励やねぎらいの言葉など…」
007 シャルル 「あぁ。あんな紙っきれ何の役に立つの?」
008 ルイ 「紙っきれって…伝えることに意味があるんですよ?」
009 シャルル 「勝つか負けるかって話でしょ?そんなの首都まで攻められれば負けてんだし、来なければ勝ってるっての!察しろ」
010 ルイ 「どんだけアバウトなんですか…」
011 シャルル 「で?ねぎらいの言葉などだっけ?」
012 ルイ 「えぇ、まぁ。上司の励ましって嬉しいものですから」
013 シャルル 「いつもゴクロウサマ」(棒読み)
014 ルイ 「なんだって棒読みなんですか!?」
015 シャルル 「はい、言ったよ。これで満足?」
016 ルイ 「ちょっ、バカにしてんですかっ」
017 シャルル 「言葉だけじゃ足りないの?」
018 ルイ 「そうじゃなくて…っ」(息呑む)
019 シャルル 「なでなで、いつもご苦労様〜」
020 ルイ 「僕は子供ですかっ」(恥ずかしいのを隠すため怒鳴る)
021 シャルル 「ん?嬉しくない?なでなで〜って」
022 ルイ 「もぅっ恥ずかしいからやめてくださいっ!」(手払いのける)
023 シャルル 「士気上がった?」
024 ルイ 「あがるわけ…あがるわけ…あがりましたよ……」(じっと見られているのに気付き言い換える)
025 シャルル 「OK」
026 ルイ 「ですが、これ兵士の一人一人にやるつもりなんですか?」
027 シャルル 「何?違うことしたいの?」
028 ルイ 「誤解するようなこと言わないでくださいっ」
029 シャルル 「え…何考えたの」(軽蔑するように)
030 ルイ 「ちょ、そこだけドン引きしないでくださいよ。今の僕、悪くないですよ!」
031 シャルル 「……」(軽蔑の目)
032 ルイ 「何でそんな目で見るんですかっ、え?僕悪くないですよね?」
033 シャルル 「ま、いいや。上行こう上」
034 ルイ 「ちょ、お待ちくださいっ!被弾したらどうするんですかっ!?」(シャルルのあとを追う)



【屋上飛行場】(滑走路に戦闘機がずらりと並んでいる)

035 ルイ 「シャルル司令官、もう少し行動を謹んでください!」
036 シャルル 「敵がきたら物陰に隠れればいいよ」
037 ルイ 「戦闘機が爆破するでしょうが!」
038 シャルル 「ルイはうるさいなぁ〜」(迷惑そうに)
039 ルイ 「嫌われても言いますよ、あなたは我々の上司なんですから」
040 シャルル 「よっこらせー」(滑走路に仰向けに寝る)
041 ルイ 「シャルル司令官ッ!」(呆れたように)
042 シャルル 「空がきれいやわー」
043 ルイ 「その空から敵機がきたらどうするんですか…」
044 シャルル 「ルイが撃破してくれるよ」
045 ルイ 「他人任せですかっ!何ですか、僕の目からビームが出るとでも言うんですか」
046 シャルル 「え、ビーム出るの?」
047 ルイ 「出ませんよっ!」
048 シャルル 「残念」
049 ルイ 「残念なのは頭だけにしてください」
050 シャルル 「………」
051 ルイ 「ん?どうされました?もしかして…お怒りですか?」
052 シャルル 「……ん、ちょっとね」
053 ルイ 「…多少言い過ぎたかもしれませんけど、僕はいつ敵が現われるか…」
054 シャルル 「ルイ、私ってばおかしい?」
055 ルイ 「…思考がですか?」
056 シャルル 「やっぱりおかしいと思うよね。蒼き瞳のロナンバルド」
057 ルイ 「民族特有のその容姿…その尖った耳のこととかですか?」
058 シャルル 「賢き少数民族。ロナンバルドの特徴でこの地位にいるのだもの」
059 ルイ 「我々と容姿は違えども、同じ国、国を守る軍人ではありませんか。民族なんて関係ないです」
060 シャルル 「きっと部下たちの中でも面白くないと思っている者がいると思う」
061 ルイ 「思いたい奴は思わせていればいいですよ。そんなこと気にしている人間は、器の小さい奴なんですから」
062 シャルル 「でも…」
063 ルイ 「それこそまさしく、空を眺めて自分のちっぽけさを感じてください」
064 シャルル 「空…」
065 ルイ 「この広い空を眺めているとどれだけ自分が小さいものなのか。そんなシャルル司令官を見て、太陽や月が笑いますよ?」
066 シャルル 「…蛙君よ蛙君。君はどうしてこんな狭いところに住んでいるんだい?」(少し声色変えて)
067 シャルル 「何を言っているんだい?亀君。僕の家はこんなに広いよ。こんなに素敵な家はここのほかにないよ」
068 シャルル 「ほぇ?僕の住んでいるところの方が数百倍広いよ。大海だけど」
069 シャルル 「大海だって?」
070 シャルル 「そうだとも。上には…」
071 ルイ 「上には青い青いどこまでも続く空にその下に青々と広がる海。僕はこんな狭いところじゃ暮らせないよ」(シャルルの台詞途中から入る)
072 シャルル 「ここが狭いだって?」
073 ルイ 「今度遊びにおいで。お邪魔したね」
074 シャルル 「大海かーどんな素敵なところなんだろう…」
075 ルイ 「…世間知らずの蛙のお話ですか」
076 シャルル 「井の中の蛙、大海知らず…井戸の中に住む蛙君は井戸より広い世界を知らないんだ。そして大海を聞いてそれに憧れた」
077 ルイ 「確か、何かの書物に書かれていましたね。学生の時に聞いたんだったかな…」
078 シャルル 「されど空の深さを知る」
079 ルイ 「空の深さ?」
080 シャルル 「井戸の上を眺めるとそこには空が広がり、空の広さは知っていた。それは手の届かないものだとも」
081 ルイ 「あれ?そんなのあるんですか?」
082 シャルル 「世間知らずではあるが、自由だけは知っていたというお話」
083 ルイ 「へぇ…」
084 シャルル 「…ま、何でもいいや!空見てるとどうでもよくなった!」(大きく伸びをして)
085 ルイ 「その調子ですっ。シャルル司令官が意気消沈してますと、我々までショボンとしますからね。一心同体です」
086 シャルル 「じゃあ、ルイも元気になるのを手伝ってよ」
087 ルイ 「…はぁ。たまには気晴らしに付き合いますけ……うわっ!シャルル司令官!避けてくださいッ!!」(敵機接近、二人へ威嚇射撃)
088 シャルル 「ほぅ…その喧嘩買った!!…こほん。全軍に告ぐっ!敵国の襲撃、迎撃する。総員、配置につけ!」
089 ルイ 「…戦闘開始ですね」
090 シャルル 「全軍突撃ッ!!」
091 ルイ 「いや、シャルル司令官。全軍出撃したら守りが希薄になりますッ。どう見ても今の哨戒機だったじゃないですか。挑発ですよ」
092 シャルル 「…よかろう戦争だ」
093 ルイ 「いやいや、突撃するなら本部とかの応援とか」
094 シャルル 「応援とか待ってたら首都まで攻められる。察しろ」
095 ルイ 「いや、ここは察するところじゃないと思います…。」
096 シャルル 「あと2機目視したら私も出撃するから」
097 ルイ 「ちょっ…何言ってるんですか!我々の頭脳、上司、作戦の要である司令官自ら突撃してどうするんですかっ」
098 シャルル 「言ったでしょ?絶好の交戦日和だって」
099 ルイ 「いや、え?ちょっ、お待ち下さいッ、シャルル司令官!ちょっと!バカ言わないで下さいよッ」




【作戦会議室】(前線基地より帰還したシャルルが将軍と元帥の間に登場。司令官より大佐へ昇進)

100 マラド 「ほぅ…あのロナンバルドの……。それはそれは」(戦況図を見つつ、目を細める)
101 シャルル 「只今、前線航空基地より帰還しました」(敬礼し、入室)
102 マラド 「ほぅ…これはシャルル大佐。遠方よりご苦労だったなぁ」
103 シャルル 「ハ…」(頭下げる)
104 フラン 「無事、前線基地は役目を果たしたものの、我が国の旗色がよろしくない…」(チラチラ、シャルルを見つつ)
105 マラド 「うむ…。だがな…」
106 フラン 「国が危機だというのに国民の危機感はまるでないっ」(憤る)
107 シャルル 「フラン将軍は、何をお咎めで…?」
108 マラド 「なに、戦時中に映画や娯楽施設を利用するのが不謹慎とのことを…だ」
109 フラン 「そなたもそう思うであろう?」
110 シャルル 「あ、いや…戦時中とはいえ、本能や煩悩があるのが人間。禁欲せよというのも酷な話かと…」
111 フラン 「…まぁいい、今回話したいのはそこではないからな」
112 マラド 「この旗色の悪さをどう覆すかであろう?」
113 フラン 「国民総動員だ」
114 シャルル 「え?」
115 フラン 「国の危機だというのに国民が何もしないでいいわけがないだろう」
116 マラド 「国家総動員というと…えー、あー…」(戸惑い、言葉を探す)
117 フラン 「女子供、老人に至るまで全国民の動員だ」
118 シャルル 「フラン将軍、いくらなんでもそれは…」
119 フラン 「いくらなんでも…何です?」
120 マラド 「非戦闘員である女子供達まで動員するというのは…」
121 フラン 「軍人だけでは不足しているこの状況下でそんな言葉が出るんですか」
122 シャルル 「非戦闘員と我々軍人と訳が違う。能力だって鍛えているのといないのでは違う」
123 フラン 「まずは敵との数を合わせねばなるまい」
124 シャルル 「敵の戦闘員と我々の非戦闘員では比べられないっ」
125 フラン 「人数が多ければ弾よけくらいにはなる」
126 マラド 「国民を盾に使う気かっ」
127 フラン 「例えだ、例え。弾よけ以外にも使えるだろ」(鼻で笑うように)
128 マラド 「…しかし、人員が足りていないのは周知の事実…、止むおえんのかもしれない」
129 シャルル 「マラド元帥ッ!?」
130 フラン 「なに、国民の中に軍に入らずともそれ相応な力の持ち主だって潜んでいるはず。必ずしも力になる」
131 シャルル 「フラン将軍ッ、私めは反対でございますッ。国民をこの戦いに巻き込むのはあまりにも酷かと…」
132 フラン 「わかってない…わかってないね、シャルル大佐。平和に呆けている国民たち並みに分かっていないね」
133 シャルル 「む…」
134 フラン 「あなたのところは確かに敵軍の侵攻を退け、前線で守り抜き、敵軍にも大きな打撃を与えた。だが、全土全体を見回せば、侵攻が進んでいる」
135 マラド 「ノベール地方は敵国に陥落してしまったからな…」
136 フラン 「国があっての国民である。悠長な事を言っている場合ではないっ。少しでも人手が必要なんだ」
137 マラド 「負ければどうなるか…」
138 フラン 「マラド元帥、国民総動員の召集、かけて頂けますね?」
139 マラド 「うむ……」(諦めたように頷く)
140 シャルル 「…お二方は、兵士たちの命を何だと思ってます?」
141 フラン 「ん?」
142 シャルル 「確かに我々軍隊は戦うのを専門とし、仕事として請け負っています。しかしそれは、戦うことのできない政治家たちの代行として戦う、言わば傭兵のようなものです」
143 マラド 「侯爵に仕えし騎士とな…」
144 シャルル 「話し合いでまとめられなかった尻拭いを我々が犠牲を払ってまで請け負っているという!!」(怒りで顔を赤く染める)
145 フラン 「黙れッ!!…これ以上の侮辱は国家へ対する侮辱ぞ」
146 シャルル 「兵士のみならず、国民たちまでこの争いに巻き込むとはどういうことですかっ」
147 フラン 「数が足りないって言っているだろう!!」(怒鳴る)
148 シャルル 「数々って…人間を…数値でしか見ない。人の数は命の数。フラン将軍は命の重さを感じたことがおありですか?」
149 フラン 「命の重さ……戦争の前ではそんなの、国の存亡と天秤にかければいくらあっても傾かない」
150 シャルル 「…命の数、かけがえのない人。ただその言葉だけでは少ないように思えるかもしれない。…だけど、その命からは無数の思い出がある」
151 マラド 「無数の思い出…」
152 シャルル 「命がなくなることは、その人の未来がなくなること。母親から誕生し、育て上げられてきた。どれほど苦労して育て上げられたことか」
153 フラン 「む…」
154 シャルル 「1つの命…と言ってしまえば軽いかもしれない。だけど、186851時間…私が生きてきた時間。そこには数多くの関わりと思い出が存在している、そうでしょう?」
155 マラド 「ぅむ…」
156 シャルル 「犠牲者は単純な数だけではない…戦争は、多くの未来と可能性と、紡がれるはずのその人の人生を奪っていく。そうではないのですか?」
157 フラン 「…今すぐ戦争をやめて降伏しろと言うのか?」(吐き捨てるように息をつく)
158 シャルル 「…我々兵士も、国民もあなた方や政治家たちの物でも駒でもないことをお忘れなく」
159 フラン 「…ほぅ、それがあなたの言い分か。上官に対しての物言いとは…呆れるを通り越して逆に感心だ」
160 シャルル 「出過ぎた真似を致しました…」(頭を下げる)
161 フラン 「マラド元帥」
162 マラド 「む?」
163 フラン 「国民総動員を。すぐに召集し、軍と合流へ。指揮は全て軍部へ」
164 マラド 「ふむ…」
165 シャルル 「く…」
166 フラン 「折角の熱弁だけど、美談じゃ戦争は止まらない。戦況も変わらない。現実を見ること、空ばかり見ててもわからないこと」(マラドと共に部屋を出ていく)
167 シャルル 「…空ばかり見ていてもわからない…かぁ」(小さく呟く)



【渡り廊下】(窓の外を眺めながら一人劇を始めるシャルル)

168 シャルル 「カエル君、カエル君。君は何故、空ばかり見ているの?」
169 シャルル 「やぁ、カメ君。いらっしゃい」(声色変える?)
170 シャルル 「君はいつも空を見上げてばかり。外に出たいんじゃないのかい?」
171 シャルル 「冗談を…。ボクはこの井戸で十分さ、それと目の前に広がる空だけでいっぱいいっぱいさ」(声色変える?)
172 シャルル 「海から見える、うーんと広い空を見たことがないからそんなことを言っているんだよ。邪魔したね」
173 マラド 「…シャルル大佐、少しよろしいかね?」(シャルルに近寄っていく)
174 シャルル 「あ…ハッ!!」(背筋を伸ばす)
175 マラド 「うむ…。先ほどの君の考え、確かに頷けた」
176 シャルル 「はぁ…」
177 マラド 「だがな、戦争…戦いとなるとそんなものになる。命なんて石ころ同然にな…。賢き君がそう考えるのも無理はない。だが、疑問に思ってはいけないものなのかもしれないな」
178 シャルル 「死んでいった者たちや我が同志たちを思うとそれは不憫でなりません…」
179 マラド 「確か、君は前線基地の戦闘において部下を失ったとか…」
180 シャルル 「えぇ…まぁ…」(俯く)
181 マラド 「すぐにまた戦地へと赴いてもらうことになるため、あとで君の所に新たな部下を行かせよう」
182 シャルル 「人は…」
183 マラド 「ん?」
184 シャルル 「大切な人が傷ついたり、いなくなったりするだけで人は物凄く心配するのに…どうして戦争はこうも物のように人を扱うのか…」
185 マラド 「人は…物事の犠牲を換算するときにどうしても理解しやすい形…数値に置き換えてしまう。それは仕方がないこと…また戦争という魔物が人々を変えてしまうのだろう」
186 シャルル 「戦争という魔物?」
187 マラド 「生きるか死ぬかの、非日常的な出来事。殺さなきゃ殺される。なら殺すしか…殺してもいい…そういった感情へと変わっていく」
188 シャルル 「それらの被害者と…」
189 マラド 「戦争の本当の加害者とは何なのか…考えなければならないのかもしれないな」
190 シャルル 「…元帥」
191 マラド 「オパート地方にて敵国の侵攻の阻止、領地奪還の任を任せたぞ。シャルル大佐」
192 シャルル 「ハッ…」



【バハートルア地区】(小さな田舎村に軍隊で到着、村の中央でテトラが演説)

193 テトラ 「これよりこの地は戦闘地域となる。諸君たちは我々軍に食糧や物資、人員などを今すぐ提供するように」
194 村人 「何だ何だ?どういうことだ!」
195 農民 「何であんだらにやらねばいがんねっ!」
196 テトラ 「国民総動員令が全土に下った。戦闘地域になる地区は軍へ速やかに協力し、戦闘を優位にする必要があるっ」
197 農民 「そんなんで納得いぐがよっ!オラたちは税金、作物税とか言われ、キチンと納めがぁっ」
198 村人 「お前たちに提供するほど食いもん余ってねーぞっ!」
199 テトラ 「軍に協力しない者たちは国家に反逆する者とみなし、拘束、又は処罰する!」
200 農民 「だんれが協力するがかっ!いぎなし来て食べ物よこせ、くれなきゃ暴力っちゃあ、理不尽だべ!」
201 村人 「そうだ!そうだ!田舎だと思ってなめんなよ!ふざけるなっ!」
202 テトラ 「俺は忠告したぞ。協力しない者は反逆する者とみなすと」
203 村人 「あぁ、聞いたとも!そんな国ならいっそ敵国だか何だかの領地になった方がいいわ!」
204 農民 「んだ!んだ!軍は出てけっ!」
205 村人 「帰れ帰れ!」
206 テトラ 「…全員拘束しろ」
207 シャルル 「待て」
208 テトラ 「あ…?」
209 シャルル 「現場の指揮官は誰だ…」
210 テトラ 「指揮官ってそれは…」
211 シャルル 「お前が私の新しい部下なのだろ。命令判断を下すのは私だ」
212 テトラ 「…何だと?」(納得いかない)
213 シャルル 「突然部下が手荒で大変申し訳ないことをした…」(深々と頭下げる)
214 村人 「あんたがリーダーか」
215 シャルル 「都の方からこの地域を防衛するよう命が下り、やってきた…シャルルという。突然のことで全く理解できないかと思うが…我が国は現在戦闘状態である」
216 農民 「おぅ」
217 シャルル 「正直言うと旗色はあまりよくないっ…」
218 農民 「そうなのか?」
219 村人 「で、どうなんだ」
220 シャルル 「もうじきこの地域も戦闘地域へとなる。少しでも被害を減らすようこの地を拠点にしてここで敵を撃退するつもりだが…それにはあなたたちの協力が必要なんだ」
221 村人 「協力って、食糧よこせってことだろ?」
222 農民 「村人たちが食うのにいっぱいいっぱいだ。他人にあげられるほどねっ」
223 シャルル 「兵士の人数も満足ではなく、兵も徴兵といった形となる」
224 農民 「この村から男手を取ってくがか?」
225 シャルル 「村の者たちは守る。安心してくれ…。この村の食糧は兵士たちにとってとても重要なのだ…少しでもいい分けて頂けないか…?」



【戦闘地域】(村人たちを兵士育成中)

226 テトラ 「貴様ッ!それでも軍人かッ!!」(怒鳴りつける)
227 村人 「ひぃっ」
228 テトラ 「ろくに動けない、戦えない、弱音は吐く。足ばっかり引っ張って!役立たずめっ!」
229 農民 「ひぃぃぃっ、オラやっぱ畑さ耕してた方がいがった…!」
230 テトラ 「あぁ?」
231 農民 「オラは軍人でねっ!農民さ!…無理やり連れてこられただけの農民さ…おっがぁ、お家へ帰りだい…おっがぁ…」(泣き崩れる)
232 テトラ 「んだとぉ…」
233 シャルル 「…なら村に戻れ」
234 農民 「あ…?」(シャルル見上げる)
235 シャルル 「無理して兵隊やってないで、村に戻れって」
236 テトラ 「何を…」
237 農民 「いいのが?…ほんとに村さ、帰っていいのか?」
238 シャルル 「あぁ…。いい、お前にはお前なりのやるべき仕事があるんだろ?」
239 テトラ 「おぃっ!どういう状況か分かって言っているのか!?」(シャルルの胸ぐらつかむ)
240 シャルル 「お前はここで死ぬべき人間じゃない。…そうだろう?」
241 農民 「あが…あが…うぇ…うぇぇ…」(泣きながら頭下げ、走り去る)
242 テトラ 「貴様ッ!いい加減にしろッ!ただでさえ戦力が少なく、苦戦している中、味方を逃がすなどと…正気の沙汰ではないっ!」(シャルルに怒鳴る)
243 シャルル 「彼には彼なりの仕事があった。ただそれだけだ」
244 テトラ 「ふざけるなっ!貴様が上司だ?そんなこと知るか!使えない役立たずの上司の言うことなど聞いていられるか!!」(シャルル突き飛ばし去る)
245 シャルル 「…正気の沙汰ではない…か。いつからだろう…いつから正気を失ったのだろうな…」
246 シャルル 「空が…灰色…か……」
247 シャルル 「カエル君、カエル君。また空を見ているんかい?」(声色変えて)
248 シャルル 「やぁ、カメ君。いらっしゃい」
249 シャルル 「今日は青くないじゃないか」(声色変えて)
250 シャルル 「そりゃそうさ。真っ青のままの空なんてないよ」
251 シャルル 「こーんな灰色の空なんてどんより気分もどんより。うんざりだね」(声色変えて)
252 シャルル 「だけどこんな空でも気持ちのいい雨を降らせてくれるさ」
253 シャルル 「そうかね、僕はあんまり気持ちよくないけどね」(声色変えて)
254 シャルル 「空だってご機嫌斜めな時だってあるさ。コロコロ色んな表情を見せてくれる。そんな空だから楽しいのさ」
255 シャルル 「へぇ、そうかい。僕は海の方がいい表情見せてくれると思うけどね。邪魔したね」(声色変えて)
256 シャルル 「…気持ちのいい雨…か。この乾いた心を潤してくれるのだろうか…」



【戦闘地域前線】(補給部隊が襲撃され食糧が尽きる)

257 テトラ 「貴様があの時、奴を逃がすから逃亡者が増えたんだぞッ!」
258 シャルル 「死なれるよりはいいだろ?足手まといだったんだろ?」
259 テトラ 「どんな役立たずでも盾ぐらいにはなっただろ」
260 シャルル 「私の作戦に盾はいらない」
261 テトラ 「指揮官として…いや、軍人として貴様は失格だ!」
262 シャルル 「残念だが、本部に戻るまで軍人であることとお前の上司であることは変わらないからな」
263 テトラ 「俺は認めん!貴様の指図は受けん!」
264 シャルル 「そんなに怒鳴ってると体力無くなるぞ…」
265 テトラ 「う…ぅ…腹が…力が…出ない…。もう三日も食べてない…」
266 シャルル 「ほら、食うか?これ」(自分の髪の毛指差す)
267 テトラ 「誰が食うか…」
268 シャルル 「髪の毛の成分は主にタンパク質と脂質からできているらしいからな…食べればいいと思う」
269 テトラ 「馬鹿馬鹿しい…くそっ!」
270 シャルル 「ま…私は五日も食っていないがな!」(テトラに向かって自慢げに)
271 テトラ 「飢えて死んじまぅ…」
272 農民 「シャルルさーん」(遠くから)
273 シャルル 「ん…?」(目細める)
274 村人 「食糧をお持ちしましたっ!」
275 農民 「採れたてのオラの畑のだ!」
276 村人 「前線で頑張っている皆さんで食べて下さい」
277 テトラ 「何だと…」
278 シャルル 「供給部隊で物資を輸送すれば狙われるが、彼らの独自のルートで来れば、無事届くという算段だ」
279 テトラ 「そんなバカな…」
280 農民 「これがオラたちにできることだ」
281 村人 「適材適所ってやつだな」
282 シャルル 「伏せろッ!!」(敵機に気付き、怒鳴る)
283 テトラ 「ぬぉっ!?」
284 シャルル 「…く、大丈夫か?」
285 農民 「軍人さんさぁ無事だら、なんさ問題ないだぁ…」(横たわっている)
286 村人 「きっちり仇をとって来て下さい…」(うずくまったまま)
287 シャルル 「…テトラ」
288 テトラ 「あ?」
289 シャルル 「反撃に出るぞ…総攻撃の準備だ」
290 テトラ 「…了解」
291 村人 「それでこそ軍人さんです……」




【病室】(ルイがベッドに座り、窓の外眺めている)

292 シャルル 「調子はどうだ?」
293 ルイ 「シャルル司令官!……じゃなかった、シャルル大佐ッ」(慌てて背筋伸ばす)
294 シャルル 「元気そうで何よりだ。うん」
295 ルイ 「お見舞いに来て下さったんですか?」
296 シャルル 「まぁ…そんなところだろうな」
297 ルイ 「シャルル大佐に来てもらえるなんて感激です」
298 シャルル 「嘘をつく口はこの口かー」(ルイの口を引っ張る)
299 ルイ 「いひゃぃっいひゃいでふっ…ふぁにふるんでふふぁっ」
300 シャルル 「元気でたか?」
301 ルイ 「いたたたた…もぅ、それはこっちの台詞ですよ!何ですか突然来たと思いきや人の口なんか引っ張って」(口押さえながら)
302 シャルル 「ルイがやって欲しそうな顔をしてたから…」
303 ルイ 「してませんっ!シャルルさんにはどう見えているんだか…」
304 シャルル 「くーん、くーん鳴きながら濡れている柴犬だ」
305 ルイ 「僕は犬ですかっ!」
306 シャルル 「忠犬ルイ公」
307 ルイ 「全く…」
308 シャルル 「駄犬…」(ぼそっ
309 ルイ 「何 か 言 い ま し た か ? シャルル大佐…」
310 シャルル 「別に―、怪我して耳まで幻聴聴こえるようになった?」
311 ルイ 「そんなわけないでしょっ!…そんなシャルル大佐の方はどうなんですか?」
312 シャルル 「ん?何が?」
313 ルイ 「職場の方ですよ。うまくやってけているんですか?」
314 シャルル 「なんだ、まるで問題児扱いしてっ」
315 ルイ 「ロナンバルドだ、なんだって悩んでたじゃないですか。本部はさらに風当たり強いんじゃないんですか?」
316 シャルル 「別にシャシャらなきゃ問題ないっ」
317 ルイ 「……で、シャシャッちゃったわけですね…」(呆れたようにため息つく)
318 シャルル 「別に…。相手がお偉いさんだって関係ねぃやいっ」(ぷぃっと頬を膨らませながら横向く
319 ルイ 「子供ですかっ!?…全く、少しは大人になって下さいよ」
320 シャルル 「もう大人だ!」(胸を張って答える)
321 ルイ 「頭もです!」
322 シャルル 「な…ルイ、どこ見て『頭も』って言ったんだ?大人だと認めた所があるんだろ?」
323 ルイ 「…え」(目を逸らす)
324 シャルル 「あ、エッチな事考えた〜」(横目でからかうように)
325 ルイ 「もぅ!からかわないで下さいっ!」
326 シャルル 「先の戦闘では惜しい部下を亡くしてしまって…新しい部下をつけられて。あぁ…前の部下?いい奴だったよ…」(しみじみ)
327 ルイ 「人を死んだみたいに言わないで下さいっ!まだ生きてますよっ!」(突っ込む
328 シャルル 「いや、うん。ほんと、メンドーな奴が部下になって。大変だったんだからっ」
329 ルイ 「シャルル大佐が上司だったら誰でもメンドーなことになると思いますよ」
330 シャルル 「失敬だな、ルイは。本気で厄介な任務だったんだぞ」
331 ルイ 「はぃはぃ…。で、どう厄介だったんですか?」
332 シャルル 「バハートルア地区の防衛戦線任務だったんだけどさー、パートナーの奴が強引でさ…」
333 ルイ 「シャルル大佐も強引ですけどね…」(呟く)
334 シャルル 「村人たちに突然、飯よこせっだの、逆らうのは縛れとか、女子供も趣味で縛っちゃえ。ぐぇへっへっへっとか…」
335 ルイ 「どんな悪党ですか。それって盗賊団か何かじゃないですか?いや、本気で。絶対フィルターかかってますよね?」
336 シャルル 「私があんたの部下だ。私の命令に従えーと救世主参上。いや、ヒーローかな。正義の味方ビガッとね」(鼻高々に)
337 ルイ 「なるほど…フラグ立ちましたけどかなり」
338 シャルル 「何だと、認めねーとか言ってるが関係なく取り仕切るが。飯も人員も欲しい…ま、私の一声ですぐに集まったがな」
339 ルイ 「この人って何でこんなに自分をよく言えるんだろう…?」(首傾げる)
340 シャルル 「とか、軍人じゃねーやいっとか言ってる村人たちに辞めちまえ!と言ったらその新部下にブチギレられた」
341 ルイ 「当然じゃないですかっ!?戦況が良くない時に人員削減してどうするんですか!」
342 シャルル 「ルイもそう言うのかー。けどな?けどな?結局彼ら帰したから恩返しに食糧補給に来てくれたんだぞ?」
343 ルイ 「それは結果論ですよ。たまたまいい方向に転がったからそう言えるだけで…普通じゃありえませんっ!」
344 シャルル 「結果論は結果論でも、結果が大事だろ?結局結果で全てが決まるんだから」
345 ルイ 「全く…結果に辿りつくまでの過程にも様々な力があることを忘れないで下さいよ?」
346 シャルル 「む…」
347 ルイ 「そんなこと言ったらシャルル大佐がそこに立っているのだって結果論なんですから」
348 シャルル 「うむ…まぁ…うーん。感謝してるさ、ルイには。うん、感謝してる」(気まずそうに目逸らす)
349 ルイ 「勝手に突っ走るその行為は賞讃しかねますよ?」
350 シャルル 「あの時、ルイが庇って来てくれていなければ今の私はおろか、私という存在そのものすら危うかったからな…」
351 ルイ 「哨戒だというのに先陣切って敵拠点周辺を飛行するんですもの。普通じゃ考えられませんよ…全く」
352 シャルル 「カメ君カメ君。空は何故あると思う?」(少し声変えて)
353 ルイ 「お得意のカエル君話ですか…」
354 シャルル 「カメ君カメ君、空は何で広いと思う?」(少し声変えて)
355 ルイ 「…何を言い出すんだい、カエル君」(少し声変えて)
356 シャルル 「空は飛ぶためにあるんだよ、カメ君」(少し声変えて)
357 ルイ 「飛ぶためだって?」(少し声変えて)
358 シャルル 「あんなに広々としているのは自由に飛べるようにするためさ」(少し声変えて)
359 ルイ 「飛ぶって言ったってカエル君…」(少し声変えて)
360 シャルル 「どうせ飛ぶなら広々のびのび飛ぶんだっ」(少し声変えて)
361 ルイ 「…って、そんな理由であんな危険な先頭に行ったんですか!」(目を丸くする
362 シャルル 「空の広さは自由の広さ。カエルは空の広さと自由を知っていました」
363 ルイ 「空を飛んで浮かれたい気持ちもわかりますが、立場をわきまえてぐぐっと我慢して下さいよ…」
364 シャルル 「…だってー」(口尖らせる)
365 ルイ 「だっても、何もありませんっ。今後は絶対に無茶しないこと。戦闘地区での先陣は取らないこと…、約束して下さい」
366 シャルル 「えー…」(不満そうに)
367 ルイ 「『えー…』じゃないです!直接の部下じゃなくても僕はシャルルさんの部下なんですからね、部下は上司を守るのが義務なんですからっ」
368 シャルル 「全く…ルイはうるさいなー」(両耳押さえて頭振る)
369 ルイ 「少しは大人になって下さい!」(呆れて)
370 シャルル 「はいはい…、子供はさっさと飯食って寝ますよ」(口尖らせて踵を返す)
371 ルイ 「シャルル大佐の身を案じて言ってるんですからね!」
372 シャルル 「別にそんなに心配しなくてもいいってのに」
373 ルイ 「不死身になってからそれ言って下さい」
374 シャルル 「じゃー、不死鳥の羽根さがしてきまー」(そそくさと病室を出ていく)
375 ルイ 「全く、シャルル大佐を心配してこんなに口うるさく言ってるんですからねっ」(ドアに向かって言う)
376 ルイ 「…ふぅ。大佐…か。あの人は何だかんだ言って僕をおいて、ドンドン離れちゃってるんだなぁ…もぅ、追いつけないんだろうな…」(寂しそうに笑う)
377 ルイ 「本当に空に憧れたのは……カエルだったのだろうかな……カメ君」(語りかけるように)




【第七リアナ基地】(戦闘機整備していたルイ、滑走路に停車しているシャルルの小型戦闘機見つける)

378 ルイ 「…あの飛行機は」
379 シャルル 「元気にしているか?ルイ」
380 ルイ 「やっぱり…シャルル大佐!」(敬礼)
381 シャルル 「たまたま近くを通ってな」
382 ルイ 「近くって軍会議でファントロジスの方に行ってたんじゃ…」
383 シャルル 「お?機密情報が駄々洩れか?」(笑う)
384 ルイ 「我が部隊の軍隊長が言ってたんですよ、軍会議がファントロジスで開催されるって。だから機密でも何でもないですよ」
385 シャルル 「そうか。まぁ軍会議つっても、ただの打ち合わせ程度なもんだったからなー」
386 ルイ 「ご活躍はよく耳にしますよ、第三師団が戦況を次々と覆してるって。頻繁に出動していた我が部隊も最近じゃほとんど出番なしですからね」
387 シャルル 「もうじき戦争も終わる。今日は敵国の残党掃討作戦の話だったからさ」
388 ルイ 「ちょっ…シャルル大佐!それこそ機密なんでしょうからこんなところであっさり言わないで下さいよ!」(慌てる)
389 シャルル 「ん?まぁ、突っ込めーだの、やれーだのって作戦聞いても誰も得しないだろ。理解できないし」
390 ルイ 「僕も理解できないんで、言わなくて結構です…」(呆れたように)
391 シャルル 「あ、私の飛行機整備よろしく」
392 ルイ 「…ぇ?自分でされないんですか?」
393 シャルル 「まぁ、どーせ立ち話してる間にも…ってね」
394 ルイ 「自分の乗る戦闘機は自分で調整したほうがいいですよ?他人に任せたりせず…」
395 シャルル 「ほんとはルイにお願いしたいけど、ルイは愚痴聞き係だから」
396 ルイ 「愚痴聞き係って……シャルル大佐、…もしかして時間がないんじゃ…」(ふと気付いたように)
397 シャルル 「ま、お願いお願いっ」(ルイの背中をぐいぐい押す)
398 ルイ 「な…時間ないんだったらこんな所で油を売ったりせず…」
399 シャルル 「私が頼んだってやってくれないからルイが頼んでね」(ルイの整備している戦闘機眺め始める)
400 ルイ 「ちょっ…シャルル大佐…はぁ、相変わらず自分勝手な…」(ため息つき、近くの整備士に声掛ける)
401 シャルル 「…君とは最後のフライトと洒落こもうか…な?」(そっと呟く)
402 ルイ 「頼んできましたよ。で、わざわざファントロジスから遠いこの地に来てまで何の用事ですか?」
403 シャルル 「ん?いや、大したことないんだ。今回の任務を最後に軍を退役しようと思ってさ」(しれっと言う)
404 ルイ 「へぇ…軍を退役。大したことな…くないじゃないですかっ!」(吃驚して大声あげる)
405 シャルル 「しーっ、声が大きい。ルイ」
406 ルイ 「たたた、退役って!一体何事ですか?こんな大事な時に!」
407 シャルル 「さっき言ったろ?もう戦争は終わり。あとは戦後処理活動に移行するわけさ」
408 ルイ 「これからじゃないですか!戦後処理の際に進級とか階層が大きく変わるというのに…特にシャルル大佐の場合は貢献してますからニ階級昇進もあり得るんですよ?」(興奮しながら)
409 シャルル 「まぁ、その…何だ?軍辞めたから空飛べなくなるってわけじゃないし?うん」
410 ルイ 「……シャルル大佐?」(訝しげに見る)
411 シャルル 「別に戦闘機じゃなくてもスピード出る飛行機はいくらでもあってだな…」
412 ルイ 「あの…シャルル大佐、もしかして…実力を認められてないんじゃ…?」(躊躇いがちに言う)
413 シャルル 「デザインだってカッコい……」(気まずそうに口開けたまま喋るのをやめる)
414 ルイ 「第三師団が活躍すればするほど、あまりよくない噂も耳にします。シャルル大佐はそれを気にされてるんじゃ…」
415 シャルル 「噂がなんだって…?」(引き攣った笑顔を浮かべる)
416 ルイ 「ロナンバルドだからどうのこうのって…ロナンバルドは誇り高く、賢き民。だから作戦も成功するし…今回だって周りを立てるために…」
417 シャルル 「…はっ、私がそんなに器用な人間だと思うか?そんな、他人様のことまで考えて軍を辞めるだなんて…」
418 ルイ 「いや…不器用だからこそ…ですよ」(呟く)
419 シャルル 「少し自由に空を飛ぼうかなって。軍にいちゃ、どっからどこまでしかダメーとか私用に使うなとかさ、制限多いしね」
420 ルイ 「本当にそれだけですか?」
421 シャルル 「ん…それ以外理由ないっしょ、この気楽な楽観的思考、しばらく相手したルイならよーく知ってるっしょ」(明るく笑う)
422 ルイ 「えぇ、よーく知ってますよ。シャルル大佐が嘘ついたり、誤魔化したりする時の癖もね」
433 シャルル 「ぇ…」
434 ルイ 「自分で気付いてましたか?シャルル大佐、僕に嘘ついたり誤魔化したりする時、左手が震えてるんですよ」(目細める)
435 シャルル 「なっ…」(そっと右手で左手を握りしめ隠す)
436 ルイ 「シャルル大佐の昇進を快く思わない輩のためにシャルル大佐は軍を退役されるんですか?」
437 シャルル 「そんなことはないっ」(左手を握りしめる)
438 ルイ 「気にしちゃ駄目ですよ…?昔言ったと思いますが、シャルル大佐はシャルル大佐ですもの。種族なんて関係ないですよ」
439 シャルル 「決めつけと思い込みはよくない癖だぞ、ルイ」
440 ルイ 「…いえ、今回の件じゃなくてただ呟いただけですよ?僕は」(クスッと笑う)
441 シャルル 「…ふぅ。昔の知人も男を見つけたようだから私も捜そうかな…ってな。そろそろ歳だし…」(頬かきながら)
442 ルイ 「あの人気国民的アイドルのミシェルちゃんも彼氏できたらしいですからね」
443 シャルル 「明るいニュースの一つや二つは欲しいからな」(遠い目をしながら)
444 ルイ 「アイドルっていつ恋愛するんでしょうね」
445 シャルル 「軍人もいつ恋愛するんだかねぇー」(ルイを横目で見ながら笑う)
446 ルイ 「し、知りませんよっそんなのっ!」(顔を赤くし、横向く)
447 シャルル 「好きな人の一人や二人できたらちゃんと報告にくるんだぞ?それが部下の務めだからな」
448 ルイ 「いちいち報告しませんよっ!」
449 シャルル 「あ、どこまで進んでるのか交際度も詳しくな?」
450 ルイ 「仕事して下さいっ!」
451 シャルル 「部下の相談に乗るのも上司の務めだからな」
452 ルイ 「そんなことシャルル大佐に相談しませんよっ!」
453 シャルル 「なんだ、つまらん…」(口尖らせながら)
454 ルイ 「全く…シャルル大佐こそ、悩みがあったらいつでも相談に来て下さいよ?上司の話を聞くのも部下の務めですから」
455 シャルル 「ま、私に相応しい相手は空を飛べる奴だがな」
456 ルイ 「鳥人ですかっ!」
457 シャルル 「鳥男はキモそうだからいい…」
458 ルイ 「そうそう居ませんよ…」
459 シャルル 「空でデートとか空中散歩とかな…」
460 ルイ 「空で結婚式挙げる気ですか?」
461 シャルル 「おぉ、それもいいな。空で結婚式を挙げて、死ぬ時も空で…」
462 ルイ 「ほんと空がお好きなんですね、シャルル大佐は」
463 シャルル 「まぁな。人は空から生まれるんだろう?コウノトリが運んでくるとか…」
464 ルイ 「え…」
465 シャルル 「早く私の所にもコウノトリが来ないかな」
466 ルイ 「…ロナンバルドって本当に頭いいんだろうか…」(呟く)
467 シャルル 「さて、邪魔したなっ」
468 ルイ 「行かれるんですか?」
469 シャルル 「今夜中にアーゲンハイツに着かないといけないからな」
470 ルイ 「今夜中って…こんなところで寄り道している場合じゃないじゃないですかっ!」



【軍本部】(将軍室にテトラが入ってくる)

471 テトラ 「航空事故調査員の派遣をお願いします」
472 フラン 「何事だ?」
473 テトラ 「第七リアナ基地にて戦闘機の爆破事故が発生」
474 フラン 「…聞いてないぞ、そんな報告」
475 テトラ 「いえ、起きるんですよ」
476 フラン 「は?」
477 テトラ 「シャルル大佐がお亡くなりにね」



【第七リアナ基地】(小型戦闘機に乗り込むシャルル)

478 ルイ 「そういえば…よくシャルル大佐が話してくれていたカエル君の話…」
479 シャルル 「ん?」
480 ルイ 「続きってどうなるんですか?空に憧れたカエル君は…」
481 シャルル 「あれか…。空に憧れ住みなれた地を離れ、空を目指す旅に出るんだ」
482 ルイ 「ふむ…」
483 シャルル 「鳥は空を飛べることから自分も翼を作り、背中に翼をつけて空を飛んだ」
484 ルイ 「そんなんで飛べたんですか!?」
485 シャルル 「あぁ、飛べたとも。カエルのくらいの体重だったらな。…空を飛べるようになったカエル君はカメ君に空の深さを知らせに行った」
486 ルイ 「カメ君はさぞ驚いたでしょうね」
487 シャルル 「あぁ、驚いた。バカにしていたカエル君が本当に空を飛んで現れたのだからね」
488 ルイ 「なるほど…飛べてよかったですね。ハッピーエンドで良かったです」
489 シャルル 「ん、じゃ、また」
490 ルイ 「はいっ、お気をつけて!」(敬礼
491 シャルル 「……ハッピーエンド?この話にはまだ続きがあるんだけどな」(呟き、発進させる)
492 ルイ 「空に憧れたカエル…か」
493 シャルル 「空の深さを教えようと調べに行ったカエル君は…空へと消え、二度とカメ君のもとに現れることはなかった…」(操縦桿を引く)
ドーーーーンッ(爆発音と共に戦闘機が爆発)
494 ルイ 「…シャルル大佐?」(振り返り、爆発を呆然と見つめる)



【軍本部】(将軍室にテトラ)

495 テトラ 「カエルは大人しく井戸の中に住んでいればよかったんだ」
496 フラン 「井戸の中の蛙ということか…」
497 テトラ 「ロナンバルドは世に出てくるべきではなかった。空なんて飛べやしない」
498 フラン 「蛙は地を這う生き物か…」
499 テトラ 「這いつくばるのがお似合いさ、あんな奴に命令されてたまるか…」
500 フラン 「井の中の蛙、大海を知らず。…されど空の深さを知る。シャルル、お前はどれほどの自由を知っていた…?」




【軍所有会館】(略式葬儀・花に囲まれシャルルの遺影)

501 フラン 「これより、優秀勇猛であったシャルル大佐改め、シャルル中将の略式葬儀を執り行う」
502 ルイ 「シャルルさん…」
503 ミシェル 「嘘だよね…シャル…」(飾られている遺影を見つめながら涙ぐむ)
504 ルイ 「また僕を置いて行っちゃうんですね…」
505 ミシェル 「今度遊ぼうって…約束したばっかだったのに」
506 ルイ 「…失礼、あなたのその容姿…ロナンバルドですか?」(隣で泣いているミシェルに声かける)
507 ミシェル 「そうよ、ロナンバルドよ。何か文句ある?」(キッとルイを睨み付ける)
508 ルイ 「あ…や…シャルルさんとは…」(たじろぐ)
509 ミシェル 「親友よ。シャルの親友のミシェル」
510 ルイ 「ミシェル…って、あのアイドルの?」(ハッとしたように)
511 ミシェル 「アイドルでもなんでもない、シャルルの親友として来たの」
512 ルイ 「…そうでしたか。僕はシャルルさんの下でしばらく働かせてもらっていたルイと言います。今は第七リアナ基地で戦闘機の整備長をしています」
513 ミシェル 「君がルイ君か…シャルの言ってた通りの子だね」(クスッと笑う)
514 ルイ 「シャルルさんはなんと?」
515 ミシェル 「ルイは根っから真面目で堅っ苦しい奴だって。シャルが随分気に入っていたみたいだよ」
516 ルイ 「シャルルさんらしい発言ですね」
517 ミシェル 「電話で部下のルイがルイが…っていつも言うからどんな子だろうって思ってたら噂通りの子だってね」
518 ルイ 「そんなにシャルルさんは僕のことを言っていたんですか?…何話していたんだか」(呆れたように)
519 ミシェル 「ほんと夢中だったみたい。そんなに言うなら結婚したら?って言ったら本気で怒って電話切っちゃたり。死んだなんて嘘だよね?」
520 ルイ 「…嘘だといいんですけどね。シャルルさんは僕の目の前で…」(俯く)
521 ミシェル 「シャルを見たの?」
522 ルイ 「第七リアナ基地で僕のところにわざわざ寄って…僕が殺したようなものです」
523 ミシェル 「どういうこと?」
524 ルイ 「シャルルさんは寄り道で僕のところに来たんですよ。そして滑走路から飛び立った瞬間に爆発して…」
525 ミシェル 「シャルの飛行機が爆発したの?」
526 ルイ 「はい…シャルルさんの飛行機が」
527 ミシェル 「整備はシャルがやっていたの?」
528 ルイ 「いえ、シャルルさんに時間がないから誰かに頼んでくれと。近くにいた整備士に…。あの時、僕がやっていれば…」(制帽を深くかぶる)
529 ミシェル 「その時関わった整備士は?」
530 ルイ 「数時間後に姿を消して行方不明のままです」
531 ミシェル 「その整備士が怪しいね。ルイ君は悪くないよ」
532 ルイ 「あまりにも酷過ぎませんか?シャルルさん、今回の作戦が終わったら退役するって…昇級も勲章もいいから軍を辞めるんだって」
533 ミシェル 「そうだったんだ…」
534 ルイ 「シャルルさんは知ってたんですよ。周りからあまりよく思われてないって。だから辞めるなんて…」
535 ミシェル 「だから殺されるって…」
536 ルイ 「カエルは大海を知って幸せだったんでしょうか?」
537 ミシェル 「大海?」
538 ルイ 「井の中の蛙(かわず)大海を知らず。井戸の中しか知らなかった蛙は亀に大海の存在を教えられて憧れるんです」
539 ミシェル 「大海よりも空を飛びたいと思ったカエル君のこと?」
540 ルイ 「井戸の中だけで暮らしていれば平和に過ごせたんじゃないかなって…こんなことには…」
541 ミシェル 「うん…こんなことにはならなかっただろうね。けどね、シャルは外の世界を知れた。村を出れた。楽しかったと思う。後悔してないよ」
542 ルイ 「そうでしょうか…」
543 ミシェル 「カエルを外に連れ出したのはカメ君。唆したのはカメの私」
544 ルイ 「カメに教えられなければ、カエルは大海を知らなかった。自分だけの世界で満足してたと思います」
545 ミシェル 「カメ君は外に出ようかと迷っていたカエル君の背中を押したんだ。空に憧れているなら大海くらい見ておきなよって」
546 ルイ 「シャルルさんはいつも僕のことを置いていくんですよ。士官学校の時もそう、さっさと実戦部隊に所属して…前線基地では司令官から後に大佐。方や整備長だなんて。随分離れたなって思ったら…今度は置き去りですよ」(泣き笑い)
547 ミシェル 「シャルは優しい子だからね。きっとルイ君のこと待ってる。少し離れたところで腕組みしてきっと待ってるから」
548 フラン 「…――非常に惜しい部下を亡くしたものと思っている。この終戦まで導いてきたのは彼女だった。最後の作戦に彼女を加えられないのが残念で仕方がなく…」
549 ミシェル 「シャルはね、カエルとカメの物語が大好きだった。自分を空に憧れるカエルって言ってね。私はカメで…」
550 ルイ 「僕もやりました。シャルルさん独り劇するんですもの。でも…カエルは僕で、シャルルさんは知らない大海を教えてくれたカメだと思います」
551 ミシェル 「あっちでもシャルは独り劇してるのかなー。だったらドン引かれるからやめときなって言っとかないと。みんな離れちゃうや」
552 ルイ 「あはは、そうですね。ほんと…」
553 ミシェル 「シャルがまた帰ってくる気がするんだ…だから…私待ってる。待ってるから…」
554 フラン 「以上をもってシャルル中将の略式葬儀を終了する」



【第七リアナ基地】(戦闘機の整備を行うルイの下に軍人たちが取り囲む)

555 テトラ 「ルイはいるか!整備長のルイはいるか?」
556 ルイ 「ん…、ルイは僕ですが…?」
557 テトラ 「航空事故調査委員会の報告書よりシャルル中将は搭乗していた戦闘機に細工されていたとの結果が出た」
558 ルイ 「戦闘機が爆発したのですから当然の結果だと思われます」
559 テトラ 「そしてシャルル中将はここに立ち寄り、彼女の整備を担当したのが…ルイ、お前だ」
560 ルイ 「え…?」
561 テトラ 「裏もちゃんと取っている。お前はシャルル中将を事故死に見せかけて殺害した。大体ファントロジス軍会議に参加し、ファントロジスに向かうハズであったのを第七リアナ基地に寄るはずがない」
562 ルイ 「シャルルさんは確かにここに来て僕と話をしました」
563 テトラ 「まぁ、殺害するためにお前が呼び出したと考えられるな。…で、どんな話を?」
564 ルイ 「まもなく退役をすると…」
565 テトラ 「はは、そんな馬鹿なはずがあるわけない。もうすぐ昇級式がある目の前で辞めるなんて馬鹿げた妄言を吐くわけがない」
566 ルイ 「シャルルさんは確かに退役されると。自由に空を飛ぶために」
567 テトラ 「貴様はそんなに元上司が憎かったか?命を懸けて守った挙句、奴は大佐級。貴様は地方の整備長…戦闘から外れた軍人の恥だ」
568 ルイ 「…先程から決めつけた言動が多すぎます。僕はシャルルさんを憎んでもいないですし、整備長の役職も満足しています。左遷だと思ったこともありません」
569 テトラ 「調べたら士官学校の時では首席の座を奪われ、前線基地では司令官補佐。彼女さえいなければ全てうまくいっていた。違うか?」
570 ルイ 「それがシャルルさんを殺した動機だと…?」
571 テトラ 「別に動機がなんだっていい。貴様が細工したというのは明白だからな」
572 ルイ 「あの時、僕は近くにいた『バーン』に整備を任せてシャルルさんと話していました」
573 テトラ 「その整備士バーンの口から整備したのはルイ、貴様という証言が取れた」
574 ルイ 「そんな馬鹿なッ!シャルルさんの戦闘機はバーンが整備し、バーンは数時間後に失踪した」
575 テトラ 「貴様に口封じされるのを恐れ、貴重な証言者として我々が保護した。他にも貴様が整備していたのを見ていたと証言する者もいる」
576 ルイ 「ありえないっ!あの時、確かにシャルルさんと話していて…」
577 テトラ 「名誉な上官を殺害、国への損害は大きい他、それは反逆ともとれる。よって貴様は死刑…だ」
578 ルイ 「そんなのおかしいっ!調べ直しを要求しますッ!僕はやっていない!」
579 テトラ 「誰でもそういうんだよ、ルイ君。死刑宣告を前にするとね」(ニィッと笑い、ルイの肩に手を置く)
580 ルイ 「な…」
581 テトラ 「航空事故調査委員会の総意だ。死刑は確定しているのだよ。連れて行けッ」



【処刑場】(軍公開処刑として処刑台に縛り上げられるルイ)

582 フラン 「これより国家へ反逆した重罪人を公開処刑を執り行う」
583 ミシェル 「嘘…」
584 フラン 「この者はシャルル中将の戦闘機に細工を施し、爆破した実行犯であり、元部下である」
585 ルイ 「…そういうことか。僕は最初っからハメられていたのか」
586 フラン 「戦乱に乗じて国家へ牙を剥こうとした。元上司であり、わが国を優位にしたシャルル中将を殺害したということで、我が国が失ったものは大きい」
587 ミシェル 「ルイ君がシャルを殺すわけないッ!」
588 フラン 「よってルイ死刑囚は銃殺刑と処す」
589 ミシェル 「調べ直して!絶対おかしいよ!」
590 テトラ 「そこの傍聴人を黙らせるか、叩き出せッ」
591 フラン 「これは航空事故調査委員会による調査結果に基づくものである」
592 ミシェル 「軍部と癒着している機関じゃないの!大体、航空事故調査委員会の立ち上がりが早過ぎたわ!」
593 テトラ 「そこの女をつまみ出せ!」
594 ルイ 「…ありがとうございます。ミシェルさん…」
595 フラン 「シャルル大尉がいることによって出世ができなかった、地位を妬んだという動機も十分揃っている」
596 ミシェル 「ルイ君はそんな子じゃないッ!怪しいのはそのテトラとかって奴じゃないッ!シャル言ってたもの!痛ッ!ルイ君ダメ死んじゃ!」(軍人たちに取り押さえられ連れて行かれる)
597 ルイ 「…ありがとうございます。…もういいんです」
598 フラン 「ルイ処刑囚、五分だけ時間をやる。犯した罪を悔い、懺悔するがいい」
599 ルイ 「シャルルさん…すみません、思ったより早く追いかけることになっちゃったみたいです。だから…待っててください」
600 テトラ 「将軍…シャルルは軍を退役するつもりだったそうです」
601 フラン 「昇級式の前にか?」
602 テトラ 「猫を狩るつもりがとんだカエルを捕まえてしまいましたね」
603 フラン 「鳥は不用心に歩いているカエルを捕まえて食したんだ。警戒せずにいたカエルが悪い」
604 テトラ 「それもそうか。賢きロナンバルド、頭が回っても厄介。そして今回処刑のルイは元部下として再調査を独自でもされると困りますからな」
605 ルイ 「カメ君…カメ君…空を飛んだボクを見ていてくれたかな…」
606 ルイ 「カエル君カエル君…ああ見ていたとも」(少し口調変え)
607 テトラ 「ルイの奴が何かつぶやき始めました」
608 ルイ 「空は自由だった…君の知ってる大海より広かったんだ」
609 フラン 「気でも触れたのだろう放っておけ」
610 シャルル 「カエル君カエル君、君は素敵な旅人だったよ」
611 ルイ 「シャル…ルさん?」
612 シャルル 「君が空を飛ぶ姿、滑稽だったけど、とっても凄かったよ」
613 ルイ 「…どうだ、すごいだろう?」
614 シャルル 「大丈夫、君はもうそんな道具をつけなくたってもう自由に空を飛べるんだ」
615 ルイ 「井の中の蛙、大海を知らず…」
616 シャルル 「井の中の蛙、大海を知らず、されど空の深さを知る」
617 ルイ 「カエルは幸せだったのかな…」
618 シャルル 「あぁ、幸せだったとも。自由を知ったからな」
619 フラン 「さて、時間だ。撃ち方、構えッ」(処刑部隊に指示出す)
620 ルイ 「…カメ君、カメ君や、ボクは空より広い自由を手に入れたんだ」(フッと笑う)
621 シャルル 「救いの無い物語…」
622 フラン 「撃てッ」
623 シャルル 「空で消えたカエル君はカメ君に言いました。空は自由でよかったとね」






作者のツブヤキ
 一番最初の『され空』が発表されたのは今から約7年も前になるのですね。
10分前後のストーリーにしていたのですが、いつしか続き、シリーズとなり、長編の台本として公開してみては。
という提案もあって、一つ一つ分けていたものを統合&加筆修正をしつつ、一つの物語としました。
既に多くの方々に演じて頂け、作者冥利に尽きます。
ボイスドラマを作って頂いたサークル・個人の方々もおり、編集や演技等々楽しく聴かせて頂いています。
この公開をきっかけにまた再度演じて頂けたらなと思います。どうぞ、され空、ごゆるりとお楽しみくださいませ

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