謀られた査問会

謀られた査問会

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :3:1
総セリフ数 98
製作日 2014/10/18〜2014/10/22
概要説明  九死に一生を得て帰還した、旅団唯一の生存者の副長は査問会から召集を受け、訪れたのだが…
何やら話が段々おかしな方向に進んでいき……
利用にあたって 利用規約
目安時間 11分程度   【〜20分】
登場キャラ セリフ数 性別 備考
査問長 17 査問会の議長を務める落ち着いた老人。
ギブラト 26 貴族上がり査問官の一人。罪なき者の罪を作り上げることに生甲斐と楽しみを感じている。
ラーマット・ウォルネス 39 腕の立つことや、キレモノであることから実力で深黒の旅団の副長なった女剣士。
ゲーダ 16 富豪出身の査問官の一人。自分の利害以外には面白半分の興味しかない。査問会は富豪の戯れの一つ






【査問会開廷】(査問委員たちの前に立たされる女騎士)

001 査問長 「これより第三次遠征旅団壊滅事件の査問会を開廷する。静粛に」
002 ゲーダ 「…ウォホン」
003 査問長 「それでは被告のラーマット・ウォールネス、前へ」
004 ラーマット 「はい…」
005 査問長 「ギブラト、説明を」
006 ギブラト 「…ンンゥッ。あー皆さんご存知のように先日、未確認大型魔物討伐に『深黒の旅団』、『森人族』、『霧ナシ旅団』の合同の大規模な遠征を行ったわけですが」
007 ゲーダ 「多数の死傷者を出し、壊滅したあの忌まわしき事件ですかな」
008 ギブラト 「彼女は生還者の一人で『深黒の旅団』の副長のラーマット・ウォルネスです」
009 ゲーダ 「…ほぅ」
010 ラーマット 「あの事件の数少ない生存者の為、説明責任があるのは存じておりますが、査問長…『被告』というのは、いささか語弊(ごへい)があるかと」
011 ギブラト 「あの事件?そう『事件』だよ、『事件』なのだよ、ウォルネス君」
012 ラーマット 「は?」
013 ゲーダ 「此度の一件はただの魔物による不慮の事故ではない、事件であると皆の共通見解だ」
014 ラーマット 「意図が見えてきません。私は査問会に呼ばれ、何が起きたのかをお伝えするためだと心得ているのですが」
015 ギブラト 「そうだね。まさに悪夢と言えよう奇跡の生還劇を是非聞きたいねェ」
016 査問長 「被告は起きたことを脚色せず、ありのままに話したまえ」
017 ラーマット 「既に一度帰還した際にお話はしましたが、この場でもう一度お話します」
018 ギブラト 「君の武勇伝を聴きに我々は来ているわけではないので、手短に頼むよ」
019 ラーマット 「地形を把握している『森人族』を先陣に索敵を行い、後方は主に『霧ナシ旅団』で我々『深黒の旅団』は真ん中を担当していました」
020 ゲーダ 「ふむ」
021 ラーマット 「突然の轟音と共に霧ナシ旅団が大型魔物に襲われて陣形が崩れました」
022 ギブラト 「大型魔物の正体は?」
023 ラーマット 「竜のような巨体と巨大な尾を持つ、非常にどう猛な魔物でした」
024 ゲーダ 「それで?」
025 ラーマット 「最初は交戦したものの、歯が立たず撤退指示を出しました」
026 ギブラト 「それは団長の指示で?」
027 ラーマット 「いえ、その時団長は交戦中で指揮権は私に任されていたので」
028 ゲーダ 「ほぅ…判断・指揮は団長ではなく、あなたにあった。と?」
029 ラーマット 「そうです」
030 ギブラト 「それで仲間を見捨てて帰還して生き残って戻ってきたと」
031 ラーマット 「私は仲間を見捨ててなどいませんっ」
032 ギブラト 「見捨てていなければ何故生存者があなた一人だけなのです?おかしいでしょう」
033 ラーマット 「私以外にも生還者はいたはずッ」
034 ギブラト 「心身とも喪失してあなたのようにまともに帰ってきていないのですよ」
035 査問長 「被告は副長として仲間を一人でも多く守り、返す義務が、職務があった。それを放棄して逃避、実行した。相違ないか」
036 ラーマット 「そんな…確かに私は団長の代わりを果たさなければならない場面もありました。ですが」
037 査問長 「自分の命、保身のために仲間を職務を放棄した」
038 ラーマット 「誤解ですッ!私は私なりに退路を確保しました」
039 ギブラト 「仲間を餌にして?」
040 ラーマット 「そのようなことはしていませんっ」
041 ゲーダ 「なんとでも言えよう。物言える証言者など全員始末したのだろうから」
042 ラーマット 「何の証拠があってそのようなこじつけを!」
043 ギブラト 「証拠ォ?ウォルネス君が団長と何度も旅団の方針で対立していて争っていたことは言質をとっている」
044 ラーマット 「…それは組織を運営していく上で対立することはよくあることです」
045 ギブラト 「そうよくあること。それは罠にかけ、暗殺することもよくあること。そうでしょう?」
046 ラーマット 「貴方は私を犯罪者にしたいのかッ!」
047 査問長 「静粛に!」
048 ゲーダ 「事故に見せかけ、多くの者を葬り去ったということが仮に事実であるならば…我々は取るべき対応は変わってくる」
049 ラーマット 「待って下さいッ!何故私がそう疑われないといけないのですかっ」
050 ギブラト 「団長の座を狙って起こすクーデターも良くある話でね」
051 ラーマット 「ならば、私は深黒の旅団を抜ければ疑いが晴れますか」
052 ギブラト 「辞める辞めないの問題じゃないよ」
053 ゲーダ 「それに今抜けるというのはあまりにも無責任ではないかね。本当に副長なのか?」
054 ラーマット 「まるで深黒の旅団を乗っ取るために謀ったようなことを言われればこちらも心外。気分も悪いわけで」
055 ギブラト 「別に何も君を大量殺人の策略者に仕立て上げたいわけじゃないさ」
056 ラーマット 「私には先程からの決めつけたような態度、物言い、そうとしか聞こえませんでしたが」
057 ギブラト 「正直、今回君が仕掛けた仕掛けていないはどうでもいい」
058 ゲーダ 「どんな事件にも絶対的な『悪』が存在する。分かるかね」
059 ラーマット 「悪…だと?」
060 ゲーダ 「それは大型魔物であってはいけない。それが公になれば、人々は恐怖で混乱を起こすからね」
061 ラーマット 「それはつまり、私に『悪』になれ…と?」
062 ギブラト 「話が早いねー」
063 ゲーダ 「長たる者が責任を取り、事態の収拾を図るのが常であろう?だが、深黒の旅団には長が不在…となれば、副長である…そちが責任を取るべきであろう?」
064 ラーマット 「私には残された深黒の旅団を率いていく義務があるッ!それこそが副長である責務だと私は…」
065 ギブラト 「なに、弱体化した深黒の旅団は解散だろう」
066 査問長 「被告は以上、査問官の述べた罪を認めるか?」
067 ラーマット 「認めるわけなかろう!濡れ衣も甚だしいッ!正式な調査もなくして、決めつけとなすりつけではないかッ」
068 査問長 「言葉を慎みたまえ」
069 ラーマット 「これが公正な査問会だと言えるのかッ」
070 ゲーダ 「人々の望む、恐怖を排除する実に統制された場所だよ」
071 ラーマット 「都合のいいように事実を捻じ曲げ、真実を歪められ隠匿された実に胸糞悪い、掃き溜めのような場だ」
072 ギブラト 「おやおやおや、実に口の悪いウォルネス君だこと。本性が出てきたようですね」
073 ラーマット 「『悪』が必要だ?ならば事実を隠す貴様らは『悪』以外何者でもない。罪もない私を陥れようとするのだからなっ」
074 査問長 「被告は発言を認めていない、慎みたまえ」
075 ラーマット 「安全な所に居座り、その曇った眼には真偽の何もかもが見えていない」
076 査問長 「被告は黙りたまえ」
077 ラーマット 「私は断固糾弾するッ」
078 査問長 「黙れと言っているのが聴こえぬか」
079 ラーマット 「喩え、職を解かれ、個人となろうとも義は我にある」
080 査問長 「黙れェいっ!」
081 ラーマット 「……」
082 ギブラト 「立場を分かっていないから教えてあげよう。糾弾されているのは君であって、我々ではない」
083 ゲーダ 「そうだ。我々を糾弾するとは見当はずれを言うなぁ」
084 ギブラト 「査問長。これ以上は、時間の無駄かと」
085 査問長 「…それでは、被告ラーマット・ウォールネスに判決を下す」
086 ラーマット 「な…っ」
087 査問長 「私情による深黒の旅団団長の謀殺、罪なき民を魔物に襲わせ、本来守るべき職務を全うせずに逃避したことは死刑に処す」
088 ラーマット 「…わからない、なぜ私が殺されなければならない…何故だ」
089 ギブラト 「生き残ってしまったのが罪なのかもしれないね。帰ってきてしまったのが運の尽きだ」
090 ラーマット 「これは査問会ではなかったのか…何故私は死刑を宣告されている」
091 査問長 「これにて第三次遠征旅団壊滅事件の査問会を閉廷する」
092 ゲーダ 「せいぜい死刑執行日までゆっくり休みたまえ。死を迎えればもっとゆっくりできるだろうがな」
093 ラーマット 「どこで、どこで…どこで狂った。私は、死んでいった仲間の分まで生きねばならないというのに…私が死ねば彼らは無駄死にではないか」
094 ギブラト 「良かったじゃないか。すぐに可愛い部下たちとも会えるさ。秘密を墓まで持ち去ってくれたまえ」
095 ラーマット 「許さんぞ…お前らを私は許さん…決して許さんぞ…」
096 ギブラト 「おぉ怖っ…これは女剣士の幽霊が現れそうだ。これも仕事なんでね…悪く思わないでくれ。では、査問長」
097 査問長 「うむ…」
098 ギブラト 「…失礼するよ」






作者のツブヤキ
 実に気持ちの良くないお話じゃあありませんか。
あなたのお心は病んでおいでか?って感じでございます。別にこういったお話を書く人が全て病んでいるのかって言えば、別にそうでないかと。
事実を隠そうとするお偉いさんというか、デカい組織に捻じ曲げられた事実。
正しき者は消されると暗喩なのかどうなのか。それは読み手の皆々様にお任せ致します。
世の中にはただの物語で終わるものとそうでないものがあるのでしょう。
いずれは悪しき輪廻も断たれる中に、巻き込まれる者々。それが早ければ救われる者も多かろう…ぜよ

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