それは悪い醒めない夢のようで

それは悪い醒めない夢のようで

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :3:1
総セリフ数 90
製作日 2014/10/25〜2014/10/26
概要説明  突然の怪我をして玄関に倒れていた父を病院に搬送した時のお話
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
高谷 志之
(たかや しの)
38 搬送された患者の息子。異動先から数日前実家に戻ってきた
高谷 嘉穂
(たかや かほ)
30 志之の母親。
救急隊員 15 通報時に駆けつけた救急隊員。
医師 7 救急救命治療を行った医師たち






【自宅】(ふとインターホンの音や嘉穂の声に目を覚ます)

001 志之 「……何か声が聴こえる。また母さんが父さんとケンカしてるのかな…」
002 嘉穂 「志之、志之ッ!ちょっと来て!早くッ」
003 志之 それは唐突の出来事だった――
004 嘉穂 「お父さん大丈夫?お父さん、ちょっと」
005 志之 「どうしたの一体…」
006 嘉穂 「わからない。お父さん一体何があったの?」
007 志之 「とにかく救急車呼ぶね」
008 嘉穂 「救急車……」
009 志之 父が血塗れの足で、右腕は骨がむき出しで変な方向に曲がっていて玄関に倒れていた
010 嘉穂 「聞こえる?お父さん。何があったの?」
011 志之 「えと…11……11……9……」
012 嘉穂 「救急車呼ばないでって…そんなわけにいかないでしょっ」
013 志之 「救急です。事故のようで…詳しいことはちょっと…母さん頼む」
014 嘉穂 「志之こっちをお願い」
015 志之 「お父さん、何があったの?どうしたの?右手折れてるの?痛い?」
016 嘉穂 「救急車すぐ出たって」
017 志之 「聞こえる?一体何あったの?…ショック状態みたい」
018 嘉穂 「……」(頭抱える)
019 志之 「…救急車の音…。案内してくる」
020 嘉穂 「案内しなくてもここで開けられるでしょ」
021 志之 「行ってきます」



【自宅】(救急隊員を自宅へ案内誘導)

022 隊員 「こちらですか」
023 志之 「意識は一応あるんですが、声をかけても反応がない状態です」
024 隊員 「失礼します。土足でもいいですか」
025 嘉穂 「はい?」
026 隊員 「ちょっと土足でも大丈夫ですか?」
027 志之 「大丈夫です」
028 隊員 「失礼しますねー。高谷さん、わかりますかー?」
029 志之 「ちょっと何が起きたのか、私達もよく分からなくて…」
030 隊員 「お名前と生年月日をお伺いしてもよろしいですか」
031 嘉穂 「あ、はい…」
032 志之 「あ、警察の方は僕が対応するんで」
033 隊員 「これは早く運ばないとマズイですね。ストレッチャー」



【救急車搬送】(病院へ移動する際、目の前に駐車されたパトカーで出られず)

034 隊員 「県警の車が邪魔で車出せないです」
035 嘉穂 「保険証とかこの財布の中に入っているかしら…」
036 志之 「なかったら後でウチが取りに行ってくるから」
037 隊員 「あー無理だ、出せない」
038 志之 「あ、呼んできま…」
039 隊員 「ちょっと行ってきます」
040 嘉穂 「あぁ、とんでもないことになった…」
041 志之 「大丈夫だよ、ショック状態になっているだけで大したことなさそうだし」
042 隊員 「それじゃあ、出発します」
043 志之 その時は様子から過小評価をし過ぎていたことに気付かなかった…
044 隊員 「すぐ近くの病院が引き受け可能でしたので10分ほどで着きます」
045 志之 「良かったね…たらい回しになっちゃうこととかあるから」
046 嘉穂 「…お父さん、大丈夫」
047 隊員 「高谷さん、それ外さないで下さい。すみません、押さえてもらっていいですか」
048 志之 「邪魔かもしれないけど、呼吸器つけないとダメだからね」
049 隊員 「…着きました。どうぞ」
050 志之 「すみません。…母さん大丈夫?」
051 嘉穂 「うん…」
052 志之 病院の搬送口では既に看護師や医師たちが手術着で待っていた
053 隊員 「それではご家族の方はあちらでお待ち下さい」
054 志之 「右腕は折れていたけど、左手は動かしてたし、足は出血してたけど大したことなさそうだったから少し時間かかるかもしれないけど処置して終わるでしょ」
055 嘉穂 「……うん」
056 志之 すごく楽観的に考えていた。『救急車を呼ばないで』と言っていたことや外傷がそれ程なかったように見えていたから…だから……
057 隊員 「それでは失礼します…」(一礼して去る)
058 嘉穂 「…何でこんなことになったの……」
059 医師 「高谷さんのご家族ですね。輸血の同意書にサインをお願いします。こちらにも…」
060 嘉穂 「…はい」
061 医師 「処置が終わるまでお待ちください」
062 嘉穂 「今のって何のサインって言っていた?」
063 志之 「輸血とあとその時の合併症の了承の同意書だと思うよ。手術した時に出血多量になることもあるでしょ?それでだと思う」
064 嘉穂 「なんだか、肺がもうなんだかって言っていた気がするけど」
065 志之 「え。そんなこと言ってた?大丈夫でしょ、普通に声出していたんだし」
066 嘉穂 「そうなのかなぁ…」



【病院待合室】(搬送から2時間半後、両開き自動ドアから医師が出てくる)

067 志之 「ようやく終わったかな。色々検査して、腕の応急処置とかで結構かかったなぁ…」
068 医師 「高谷さんのご家族ですね…。残念ですが、もう最期なんでお会いしますか?」
069 志之 「ぇ…?」
070 嘉穂 「会えるんですか?」
071 医師 「色々と処置は行ったんですが、心停止を起こしまして…残念ながら最期の言葉をかけてあげられますか」
072 志之 つい先程まで、動いていた父が死んだと言われてもピンとこない
073 医師 「…今は心臓を動かすお薬でなんとか心臓が動いていますが、これが徐々に切れて、そうしたら止まります」
074 嘉穂 「お父さん…?お父さん」
075 志之 さっきまで青白かった顔や肌は土気色になり、目は濁り、充血してまさにホラーで見る死体だった…
076 医師 「…とめて」
077 嘉穂 「お父さん、聞こえる?ねぇ、あんまりでしょ…」
078 志之 心臓マッサージをしていた看護師を止めて、後片付けをして次々去っていく医師たち…
079 嘉穂 「嘘でしょ?ねぇ、ひどいよ」
080 志之 「お父さん、還ってきて。まだ死んじゃダメでしょ。全然話してないじゃん…」
081 嘉穂 「そうだよ。志之だって帰ってきたんだよ?」
082 志之 「わざわざこっちに戻ってきたばっかりなのに…死ぬなんて許さないよ」
083 嘉穂 「戻っておいで。まだでしょ」
084 志之 「お兄ちゃんも向かってるって。もう少ししたら来るから。来るんだから帰ってきてよ」
085 嘉穂 「お家に帰ろう、ね。帰ろう」
086 志之 「戻ってきてよ。あり得ないよ…夢を見ているんだよね。怖い夢…怖い夢を見たんだよね…」
087 医師 「…血圧が戻っ…検査しますので、待合室の方で御待ち頂けますか」
088 志之 …過小評価して危機感のなかった自身が赦せなかった。過去に戻れるならばぶん殴ってやりたいくらいだった
089 嘉穂 「…はぁ」
090 志之 ――後日談にはなるが、搬送されてから19時間半後、容態は完全ではないが一命を取り留めた。二度の心停止を起こし、奇跡的な復活劇を起こしたが…残念ながら心停止の際、脳に致命的なダメージを受け、現在はほぼ脳幹を残し、父は生ける屍となった――






作者のツブヤキ
 もはや完全な芝居用とかではなく、ただの読み物です。
正直こういったネタ(題材)にするようなのも不適切なのかもしれませんが、突然起きたことに精神的ショックは大きかったです。
ドラマのような展開、物語であって欲しかった出来事が実際に起きた時の現実。
震災や交通事故、突然の身近な人の危篤というのは予想もしない時にやってくるものなのかもしれません。
ほんの数時間前には話していた相手が横たわっている…それは報道での画面の向こうだけの話じゃなかった。
悪夢を見ているんじゃないかと。醒めない夢を見ているのだと。
奇跡は起きるのかと驚いたのと同時にそこまで甘くない現実というのをここ一か月間で突きつけられました。
人の死を身近に感じたことがなかっただけに、ショックが大き過ぎました。
自身も万全な状況ではなかったので、精神的にかなりにやられていたところはありましたが…。
だいぶ心は落ち着いた感じで、少しでも日常を取り戻せるよう頑張っています。
死とは怖い夢を見ることなんだろうなとずっと呼びかけている時にそんな言葉がグルグルと回ってました。
どちらが怖い夢を見ているのかは分かりません。ただ、死の後は『無』しかないとはよく言われます。
醒めない夢を見てしまうのではないかと。遺された方も醒めない悪夢を見続けるんだと…
この辛さはどう乗り越えていくのだろうと考えさせられました。
まだ死が訪れていないので、こうしたことを言っていられるのかもしれません。
どうかこれを読んだ方は、死はいつ訪れてもおかしくないことを考え直して、日々を精一杯生きて欲しいと切に思います。
生きても地獄、死んでも地獄は勘弁して下さい。
この気持ちは共感できる人はなかなかいないですが、自責の念って怖いですよ。
思い出が深ければ深いほど失った時の穴というのは想像できないくらい大きいんだと…人生において思い出を作ることはいいことなのかと考えさせられた出来事でした。
とりとめもなく長々と申し訳ありませんでした。

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