血墨絵師噺

血墨絵師噺

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :2
総セリフ数 101
製作日 2014/6/6〜2014/6/6
概要説明  売れなかった浮世絵師がファンの町民の言葉をより新たなジャンルに手を出す。
いつの間にか流行り始め、都では一躍有名な人気絵師に。
しかしある満月の夜――
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
町民 51 絵師の絵に惚れ、絵師のファンとなり、買い始める
絵師 50 町で浮世絵を売り捌く絵師。才能にとり憑かれてか徐々に変貌していく






【店ならぶ通り】(茣蓙の上に浮世絵を大量に並べた店前にて)

001 町民 「いやぁ、先生の浮世絵は実に素晴らしいですなぁ」
002 絵師 「はは」
003 町民 「値踏みするのも難しいですな」
004 絵師 「これらは五十銭です」
005 町民 「はぁ五十銭!」
006 絵師 「私の絵がない広まれば良いですから」
007 町民 「ほぉー感心ですなぁ。…ところで先生。春画は描かれないのですか?」
008 絵師 「春画…ですか?」
009 町民 「先生程の腕でしたら飛ぶように売れましょうぞ」
010 絵師 「はは…要は私に描いて欲しい方がいるんですね」
011 町民 「遊廓の花魁と言いたいところですが」
012 絵師 「ひときわ美しい鶴羽殿とかですか?」
013 町民 「あっしは花魁道中では後ろ姿しか拝めなかったけど、シャンとしていて後ろ姿だけでもべっぴんさんと分かりやしたよ」
014 絵師 「私もまぁ一度見ただけなので記憶だよりに似せて描けるか怪しいですが…」
015 町民 「あ、いや。鶴羽殿も確かに興味はあるんですが、先生。描いてもらいたいのは別の方でさぁ」
016 絵師 「ほぅ」
017 町民 「峠の東茶屋はご存知ですか?先生」
018 絵師 「えぇ。雑木林の途中にある」
019 町民 「そこの看板娘を描いて頂きたいんですよ、先生」
020 絵師 「成程」
021 町民 「顔は拝みたいけど饅頭だ、団子だー茶だーと通っているとどうにも高くついていけねー」
022 絵師 「その代わりに私の絵ですか」
023 町民 「可愛い子は側に置いておきたいものでさぁ」
024 絵師 「成程…」
025 町民 「先生の腕なら凄いのが出来るんじゃないかと思いやして」
026 絵師 「分かりました。やってみましょう」
027 町民 「本当ですかっ!?有り難うございます!」
028 絵師 「半月ばかり時を頂ければ」
029 町民 「そりゃもぅ、待ちますよ。いやぁ楽しみだなぁ先生」



【店ならぶ通り】(1ヶ月以上経過し、茣蓙の上に浮世絵を大量に並べた店前にて)

030 町民 「あや、先生。久しいではありませんか」
031 絵師 「ご無沙汰しております。少し山に籠って絵を描いていたものですから」
032 町民 「…出来たのですね。」
033 絵師 「えぇ、注文通りにできたかどうかは…」
034 町民 「いやいやいや素晴らしい。先生素晴らしいですよ」
035 絵師 「ありがとうございます」
036 町民 「これ幾らです?」
037 絵師 「少々値は上がってしまいますが、八十銭で…」
038 町民 「八十銭!百二十銭払っても惜しくない!」
039 絵師 「有難うございます」
040 町民 「先生もやはり茶屋に通われたのですか?」
041 絵師 「いえ、私はあれから一度だけお茶を戴きに行って一目見て記憶しましてね」
042 町民 「ほぉそれは凄い」
043 絵師 「何故だか記憶だけはよくて、一度人の顔を覚えると、絵にすることができるのですよ」
044 町民 「…はぁ、まさに神が授けた力ではないですか」
045 絵師 「そうなのかもしれませんね」
046 町民 「先生の絵が完成して茶屋の娘を側に置いておけるのは嬉しいのですがね」
047 絵師 「如何しました?浮かない顔で」
048 町民 「先生は幸運だったというか、実はその茶屋の娘が賊に襲われたそうで…」
049 絵師 「賊…ですか」
050 町民 「いやね。あっしも詳しい話は又聞きでわかりやせんが、茶屋に行ったら茶屋はもうやってないんですよ」
051 絵師 「はぁ。それは残念な。お饅頭が美味しいとの評判でしたので、仕事も終えたので近々行こうかと思っていたのですが」
052 町民 「こうして茶屋の娘に会えるのは先生の絵だけになってしまいやしたよ…」
053 絵師 「それならば春画ではない方が良かったかもしれませんね」
054 町民 「いや、春画は春画であの娘の若さをよく表しているというか、なんというか、ヨイヨイ」
055 絵師 「…そうですか」
056 町民 「先生の絵は後生大事に取っておきます」
057 絵師 「ははっそう言って頂けるだけで絵師冥利に尽きます」
058 町民 「先生が描いてくれなければ二度と目に見ることができなかったであろうぐらいですからね」
059 絵師 「何だか人の不幸を食い物にしているような気持ちですね」
060 町民 「先生が負い目を感じることはありやせん。先生は今後とも素晴らしいまたとない絵を描き続ければいいんですよ」
061 絵師 「…そうですね。またとない」
062 町民 「今日のところはあっしもまた。次の絵を楽しみにしておりやすよ、先生!」
063 絵師 「えぇ…人の不幸を食い物に…人の不幸を絵にする……不幸は蜜の味…ですかね」



【店ならぶ通り】(数月経ち、次々売れる絵。町民が人をかき分けながらやってくる)

064 町民 「先生!いや、先生!」
065 絵師 「どうも」
066 町民 「都で絵が飛ぶように売れているとか。風の噂で聞きやしたよ」
067 絵師 「噂は凄いようで、確かに近頃よく売れるようになりました」
068 町民 「…わっ般若やこの地獄絵図は一体…」
069 絵師 「世は地獄絵図のように災厄に包まれる日が来ると説く法師がおりまして、分かりやすいよう描いてみました」
070 町民 「妙に生々しいというか…不気味さが強く現れていますね。以前より凄みが増しやした」
071 絵師 「えぇ。絵師たるもの腕をあげなければ、いけません故」
072 町民 「天才絵師と都どころか国中で話題になりやしょうぞ」
073 絵師 「少しでも世に名が広まればと思います。」
074 町民 「……地獄絵図と言えば、先生。近頃、巷で辻斬りが出るそうです」
075 絵師 「辻斬り……」
076 町民 「天才絵師様が腕など斬られては大変ですからや。夜道は出歩かないことですよ」
077 絵師 「そうですね」
078 町民 「早く役人が捕まえてくれると大手を振って歩けるってもんでさぁ」
079 絵師 「……」
080 町民 「ではでは。先生の新作楽しみにしてますわ」



【満月の夜】(丑の刻に、雑木林の近くをフラフラと歩く)

081 町民 「…うぅ、ついつい飲み過ぎてこんな月が高く上っちまった…まぁ月明かりがあるから辻斬りも早々出てこ…あれ、先生?」
082 絵師 「…ッ。おや…」
083 町民 「先生もこんな夜更けに散歩ですか?」
084 絵師 「えぇ…墨が足りなくなってしまいましてね」
085 町民 「墨ですか。はは、ないと仕事になりませんものな…しかし、こんな夜更けに取り扱いなんてしてる者なんて…」
086 絵師 「えぇ。このような月が高く上る刻に…」
087 町民 「変わった商人もいるもんですね」
088 絵師 「夜道は気を付けなければいけないのでは…?」
089 町民 「はは、すっかり酒を引っかけ過ぎて…まぁ歩いていれば酔いも覚めるというもんですや」
090 絵師 「他人への忠告をすると己が疎かになる…まぁよくある話です」
091 町民 「月明かりで明るいですし、先生もいれば早々辻斬りなんて…」
092 絵師 「月夜の日こそ気を付けなければいけなかったのですよ」
093 町民 「ははっ、先生辻斬りに詳しいんで?」
094 絵師 「…私の絵になってもらいましょうか」
095 町民 「先生、酔っぱらってるからってからかいが過ぎますやぁ…」
096 絵師 「はじめは獣の血を混ぜて墨を作っていましたが、人間の血はより作品を良くするのでね」
097 町民 「まさか…先生が…辻斬り…」
098 絵師 「素晴らしい作品になりますよ…」
099 町民 「な…嘘だ…そんな…」
100 絵師 「天才絵師の作品と…なれ…」



【店ならぶ通り】(数月経ち、大勢の人が絵に群がる)

>
101 絵師 「…よくできているでしょう。人の最期を描いた絵は一枚百銭ですよ」






作者のツブヤキ
 完成は気が付けば相当前にしていた作品でしたが、こうして台本の形式になるには
随分時間を要してしまいました。
どこでもありがちな話なので、代わり映えしない作品だったかもしれませんね。
何かのマンガで現代の書道家が墨に血を混ぜていたなんて話があった気がするのですが、
この話を書いたずっとずっと後に見たものだったので、ホント誰でも考える話なんだなって。
少し斜め右上な作品が書きたい今日この頃。

使用報告・リクエスト・感想・コメント応援・随時、受付中! ⇒   掲示板  

(※どの作品からのコメントなのか、URLのfree/○○○.htmlの『数字3桁のみ』の後、続けてコメントを記載して頂けると助かります)









台本一覧へもどる

オリジナルボイドラ劇場へもどる

声物語劇団へもどる

ブログを見る

★☆先月の台本人気ランキング☆★