勇者になれなかった魔法使い

勇者になれなかった魔法使い

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 不問:1
総セリフ数 96
製作日 2012/11/30〜2012/11/30
概要説明  勇者が現れるまで、人々を守り、村や町を守り、世界の平和を守り続けようとして来た魔法使い。
評価されない自分の功績に不満が少しずつ膨れ上がっていく。
勇者に憧れつつも、勇者を憎み、自分が勇者になりたいとまで考えるようになっていく。
この憎しみは、魔王の謀か…それとも欲に目がくらんだ人間の醜き心か……
利用にあたって 利用規約
目安時間 9分半程度   【〜10分】
登場キャラ セリフ数 性別 備考
魔法使い 96 小さな村の出身の魔法使い。勇者に憧れ、自身が勇者になりたいと小さなころから考えてきた。実力はそこそこだが、実は井の中の蛙。






【道中】(町人達に見送られる勇者を横目で見ながら)

001 魔法使い これは魔王を倒しに行く途中の物語。
002 魔法使い しょせんボクはただの勇者の『仲間』でしかなく、『オマケ』に過ぎないと痛感させられた出来事だった
003 魔法使い ボクと勇者になんの違いがあったというのだ。ボクはただの『魔法使い』でしかなく、それ以上でもそれ以下でもない
004 魔法使い 勇者なんかになれやしなかった
005 魔法使い 何故、ボクが『勇者』ではなかったのか。どうして彼が選ばれたというのか…
006 魔法使い 誰しも頼るのは二言目には勇者様だ
007 魔法使い 確かに彼の優しさは見習うべき部分もあるだろう。愛し愛され、頼られる…多くの愛に囲まれ、愛に支えられた存在。
008 魔法使い 彼が動き出す前からボクは人々を支えてきた
009 魔法使い 魔物から町を、家を、物を、人を守り続けてきた…人々の生活を支えてきた。ただの魔法使いなんかじゃない…
010 魔法使い 『勇者』はボクの憧れだった。人々はそうやって希望を持ち続けてきた
011 魔法使い 魔物や魔王の脅威にさらされ、平穏に暮らせなかった。ボクの時に勇者なんていなかった。だからボクが勇者に。人々の希望の光になろうと思った。…誰もいなかったから
012 魔法使い それなのに彼は今頃現れた。今更現れて勇者気取りだ…
013 魔法使い 彼が生まれてくる空白の数年間、ただ恐怖に震えながら…ほんと今更だった
014 魔法使い 確かに彼は勇者だった。致命傷の傷を受けても加護で守られていた。悔しいほどに。それは悔しいほどに
015 魔法使い 勇者がいるからボクがなれなかったのではないか。彼がいなければ、彼さえいなければボクが勇者になれるのではないだろうか
016 魔法使い そうした感情が芽生えた瞬間、目の前の勇者が自分の両親を殺した騎士たちよりも、村を滅ぼした魔王よりも、勇者を憎らしく感じた
017 魔法使い 「お前さえいなければ…お前さえ存在しなければ…」
018 魔法使い 「ボクが英雄に…ボクのが勇者に…」
019 魔法使い お飾りの英雄なんて要らない。欲しいのは飾り物の名誉なんかじゃない。真の名誉。
020 魔法使い ボクが勇者である。その事実をボクは欲する
021 魔法使い まがい物の勇者なんて消してしまえ。
022 魔法使い 魔物の囁きか、悪魔の呟きか、魔王の陰謀か…
023 魔法使い どうでもよかった。 ボクにとってはどうでもいいことだった
024 魔法使い 旅に誘ってくれたことには感謝していた。
025 魔法使い 村の小さな英雄で終わってしまうところを連れ出してくれた。あぁ、感謝していたさ。
026 魔法使い 優しい勇者様。ボクを仲間に誘ってくれたのが例え『三番目』だったとしてもね
027 魔法使い 嬉しかったよ、勇者のおめがねに叶うのであれば
028 魔法使い 真っ先にボクに声をかけてくれなかったことなんて恨んでなんかいないさ
029 魔法使い みっともないだろ?自分より年下の勇者なんかに話し掛けられたのが遅かったくらいで恨んだら
030 魔法使い 何せボクが勇者なんだから



【迷いの森を抜けたフィールド】(野営の準備をしながら)

031 魔法使い ボクは勇者になるために、まがい物の勇者を消すことにした。そのために、彼が連れてきた仲間を先に消すことにした。
032 魔法使い 熱狂的な信者はボクの邪魔にしかならない。ボクはそう考えた。
033 魔法使い 力で勝てない戦士は不意をついて魔法で襲ってもゴキブリ生命力で死にやしない。だから、知恵を使って消し去る
034 魔法使い そう、ようやく抜けた迷いの森でみんな疲弊しての野営。
035 魔法使い 寝ずの番をしていた戦士を呼び出して、とても大切な形見のナイフを落としてしまったと言って森の奥へと誘い込む
036 魔法使い そして、背後からその形見のナイフで背中を一突き。
037 魔法使い 戦士の驚いた顔は初めて見たね。
038 魔法使い いつも凛々しくてカッコいい顔も驚愕と苦痛に歪んで、鮮血が滴って…
039 魔法使い でもやっぱりゴキブリ生命力。危うく首をはねられそうになったさ
040 魔法使い けど、続けて魔法を唱えて燃やし続けたら大事な剣を手放してしまってね
041 魔法使い それでも這ってきた。黒焦げのドロドロになりながら…
042 魔法使い それは怖かったさ。燃やしても燃やしても死なないのだから…
043 魔法使い ボクは言葉通り形見のナイフを落としてきた。黒焦げの死体に突き刺したままね



【魔王城付近の村】(宿屋⇒魔王城)

044 魔法使い 翌日、戦士の行方を心配した勇者たちが近辺を捜したけど、さすが魔物の多くいる森。捜索は困難を窮め、先に進むことに
045 魔法使い 厄介だったのは僧侶に昨晩、戦士と一緒にいたところを見られていたことだった
046 魔法使い 魔王城に行く、最後に立ち寄った村でしつこく言及された
047 魔法使い 疑いの眼差しを向けたまま部屋に戻った僧侶をボクは後ろから魔法で氷漬けにした
048 魔法使い 氷を粉々に砕いてしまった方が良かったのかもしれない。まぁ、顔は見られていないから、仮に溶けるようなことがあっても問題はないだろうけどね
049 魔法使い 凍りついた僧侶をベッドの下に転がし、何食わぬ顔で翌日、勇者に会う。
050 魔法使い 僧侶のいない理由は、戦士を捜しに森に行ったのではないか。そんな憶測だけで納得してくれた
051 魔法使い いや、本当に納得していたどうかはわからないけど
052 魔法使い ここまで来たのだからと魔王城に乗り込むことになった
053 魔法使い 魔王城に突入した時にボクは遂に決行した
054 魔法使い 「ボクが『勇者』になることに。」
055 魔法使い それはもう勇者の顔は歪んでいたよ
056 魔法使い いつもの余裕の勇者面はそこにはなく、ただただ恐怖と焦り。勇者には似つかわしくない
057 魔法使い そう、勇者には似つかわしくない絶望の顔をしていた
058 魔法使い 仲間が次々に消え、そしてボクにも裏切られた。そう、お前は勇者に相応しくなかった
059 魔法使い ボクこそ勇者に相応しい
060 魔法使い 「お前なんか魔王の目の前で不様に命乞いをして助かろうとするだろう。ボクの前で子供のように泣きじゃくっているんだから」
061 魔法使い 加護がある?なら、生き返らないぐらいメタメタにすれば…ね
062 魔法使い サヨウナラ。先代の勇者様
063 魔法使い そしてボクが勇者に、伝説になる勇者になった―――



【魔王の間】(大きな玉座に座る魔王に杖を向ける魔法使い)

064 魔法使い 簡単だった。仲間たちを殺し、勇者と呼ばれる選ばれし者も殺し、魔王のもとにたどり着くなんて簡単なことだった。
065 魔法使い 「魔王、覚悟しろ。貴様の野望もそこまでだ!」
066 魔法使い 「ボクが勇者だ!…今なら無様に泣き叫び、のた打ち回って命乞いをし、懇願すれば助けてやらないこともない!」
067 魔法使い フン…魔王城にいた魔物共もただの雑魚、それに魔王を倒せると言われていた元勇者すら呆気なく殺せた。ボクに倒せないわけがない
068 魔法使い 「後悔しながらのたうち回って死ねッ!」
069 魔法使い そう、コイツを倒してボクが勇者として世界を闊歩するんだ!
070 魔法使い 「…くくっ、見たか!戦士も焼き殺し、僧侶も凍りつかせ、勇者も糞尿垂れ流して感電死させたボクの魔法は!」
071 魔法使い しょせん魔王もその程度の……
072 魔法使い 「ボクが勇者だ!これで世界に広められる!ボクの名を!魔王と名乗る愚か者を……者を……?」
073 魔法使い 嘘だ…夢だ…。ボクの魔法が…全く効いていないなんて
074 魔法使い 「ははっ…もう一発お見舞いしてほしい…欲しいよね。消し去ってやるっ」(頬を痙攣させながら引き攣った笑を浮かべ、杖を振り再び魔法を発動)
075 魔法使い 今度こそやったハズだ。あんな爆発に堪えられるわけがない…ボクだって吹っ飛んだんだからな
076 魔法使い 「やった!……か?」(ニィッと笑い、煙が薄れるのを待つ)
077 魔法使い 今度こそ、真の勇者と認められる時…
078 魔法使い 「……へへっ、何で?何で魔法が効いてない?何でボクの魔法が効かないんだよっ!戦士だって、僧侶だって!勇者だって死んだんだぞ!なんで、お前は死なないんだよッ!死ねよッ!」
079 魔法使い 嫌だ…座ったままでいろよ…。立ち上がるなよ…こっち来るな…なんだよ、その笑みは…やめろよ
080 魔法使い 「死ねっ死ねっ死ねっ!死ねェッ!?……ッあれ、魔法…切れ……?」
081 魔法使い 連日消費し過ぎたか?ただの雑魚共を片付けるのに大技を連発していたからか?…嘘だよね
082 魔法使い 「…ひぃっ!?なんだ…なんだこれ…なんだよっ!ゆ、勇者なんだからなっ!ボ、ボクは死にやしないッ!死なないからなッ!何度でも蘇って…」(尻もちをつき、杖を激しく振りながら後退)
083 魔法使い 蘇ってこいつと…この恐怖と戦わないといけないのか?
084 魔法使い 「何度でも……ハラワタを引きずり出してグチャグチャに?…それ、生き返れるのか…嫌だ……」
085 魔法使い ボクが元勇者にやったこと…。もし、その理論が成り立つのなら復活しているし、成り立たないのなら…ボクは『死』ッ
086 魔法使い 「嫌だ!うぇっ…うぷっ…うげぇっ…ハラ…ハラワ……ハラワタ…嫌……嫌だ…」(吐瀉しながら両手でお腹押さえ、首をガクガク振りながら後退する)
087 魔法使い おかしい…こんなはずじゃなかった。神か、精霊か…勇者を殺したからボクを陥れる気で魔王に力を与えたのか?
088 魔法使い 「わら、笑うなッ!…はっ…はっ…ひっ…来るなッ!来るなァッ!こっちに来るなッ!ボクに…ボクに近づくな」(目を見開きったまま怒鳴り続ける)
089 魔法使い ヤバい…ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
090 魔法使い 「嫌だッ!ボクは勇者だ…勇者なんだッ!ひぃいいいいいいいいいい…あぶっ……痛い……痛い…痛いぃ…」(逃げ出そうとし、ローブを踏みつけ、転ぶ)
091 魔法使い 誰か助けてよ!勇者なんだぞ…ボクは勇者なんだ!神も精霊も…ボクを守れッ!この恐怖から守れッ
092 魔法使い 「や…やめ…そ、そんなの喰らったら…ひ、ひとたまりもないじゃない…か」(魔王の集まるエネルギー体を見て震えあがる)
093 魔法使い ……声が聴こえる。神か、精霊か…。逆転の呪文か……『今回も勇者は殺され、選ばれし勇者ではない者が挑み魔王に惨殺されたか…?愚かな歴史は繰り返される……』
094 魔法使い 「ははっ・・・はははっ…」(力なく笑う)
095 魔法使い 嘘だろ…ボクが勇者がいないと嘆いていた間もボクと同じように勇者が殺されていただって?…そうか、だから…だから勇者がいなかったのか
096 魔法使い 「ボクは…勇者じゃない……」(全てを悟り、フッと笑う)






作者のツブヤキ
 なりたくてもなれなかった勇者っていると思うんですよね。ただ、それは素質がなかったという一言で片づけるにはあまりにも冷酷で残忍な判断なのかもしれません。
そして、頼りにされるのは勇者。傍で聞いていた仲間というのは少し遠い存在である勇者を羨ましくも嫉妬してしまう存在だったのかもしれません。
嫉妬のあまり、この魔法使いは奇行に走ってしまうわけですが…嫉妬に狂い、欲望のまま奪い取った結末が…といった内容でした。
魔法使いって正直、魔法力なくなったら攻撃力もないしお荷物になってしまいますよね。
HPもそこまで高くないので普通のRPGだと決戦までパーティに残ってるかすら怪しいです。
そんな可哀想な魔法使いが実行した下剋上。成功したものの、本末転倒というか目的の魔王打倒ができませんでした。
これは一人台本というよりは読み物に近い感じで使用する感じになるのでしょうかね

使用報告・リクエスト・感想・コメント応援・随時、受付中! ⇒   掲示板  

(※どの作品からのコメントなのか、URLのfree/○○○.htmlの『数字3桁のみ』の後、続けてコメントを記載して頂けると助かります)









台本一覧へもどる

オリジナルボイドラ劇場へもどる

声物語劇団へもどる

ブログを見る

★☆先月の台本人気ランキング☆★