天まで届くバネ

天まで届くバネ

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :2
総セリフ数 92
製作日 2012/11/3〜2012/11/3
概要説明  突然、母親を失い、死を受け入れられずなぜ人が死ぬのかを悩み続けていた少女の下に
謎のお姐さんが声を掛ける。「あなたの悩み解決してあげましょうか?」
そんな優しさの微笑みから少女は質問を投げかける。「どうして人間は死んじゃうの?」
利用にあたって 利用規約
目安時間 6分程度   【〜10分】
登場キャラ セリフ数 性別 備考
美代
(みよ)
46 母親を亡くした少女。母親の死を半分しか受け入れられていないが、強い心を持っている。
お姐
(おねえ)
46 正体不明の自称忙しい(暇そうに見える)お姐さん。公園の周辺に住んでいるわけではないらしいのだが…






【公園】(ブランコの前で声を掛けてきたお姐さんに質問を投げかける美代)

001 美代 「どうして人間は死んじゃうの?」
002 お姐 「それはね、神様に見放されたからよ」
003 美代 「ママも神様から見放されたの?」
004 お姐 「神様には必要ないと思われちゃったのよ」
005 美代 「何で?美代がイイ子にしたから?」
006 お姐 「美代ちゃんはイイ子にしてたの?」
007 美代 「うん。イイ子にしてた」
008 お姐 「悪いことはしなかった?」
009 美代 「うん、しなかった。イイ子にしていたら神様がご褒美くれるっていうからイイ子にしていたよ」
010 お姐 「そうね…。イイ子にしていたからもう美代ちゃんにはママは必要ないなって神様思っちゃったのかもしれないわね」
011 美代 「神様は必要じゃなくても美代にはママ必要だったもん」
012 お姐 「神様はね、美代のお母さんを天国で働いてもらうためにこっちの世界から呼んだのかもしれないわ」
013 美代 「ママは天国に呼ばれたの?」
014 お姐 「そう。大人になったら分かるけどね、『人事異動』って言って働く場所を変わってもらったの」
015 美代 「美代のお家じゃないところで働いてるの?」
016 お姐 「そう。よくお店の店員さんも違う場所のお店で働いていることがあるでしょ?」
017 美代 「うん。お薬屋のお兄さん、いつの間にかスーパーのお店からアーケードに立っていた」
018 お姐 「大人の世界ではね、そういうことがよくあるの」
019 美代 「ママも美代のお家から移動して天国のお店で働いているの?」
020 お姐 「そう。だからいつかまた戻ってくるかもしれない」
021 美代 「本当に?ママ戻ってきてくれるの?」
022 お姐 「えぇ、戻ってくるかもしれない。…でもね、それはいつになるかは神様にしかわからないの」
023 美代 「そうなの?」
024 お姐 「そう。私たちの居場所を決めているのは神様だから」
025 美代 「じゃあ、美代も神様のところで働くこともあるの?」
026 お姐 「えぇ。いつかはそういうこともあると思うわ」
027 美代 「そしたら美代もママに会えるのかな」
028 お姐 「会えるかもしれない。でもね、神様が決めた時期に連れて行ってもらわないと天国まで上げてもらえないの」
029 美代 「そうなの?」
030 お姐 「そう。悪いことばっかりしていたり、神様の決めた寿命まで生きなければ天国に案内してくれる使者たちが迎えに来てくれなくて地獄へ引きずりおろされるの」
031 美代 「地獄に連れて行かれるの?」
032 お姐 「そう。人間はね、死ぬと屍と魂を拾いに地獄から死神や地獄の使者たちがやってくるの」
033 美代 「なんで?」
034 お姐 「地中を支える労働者が欲しいのかもしれないわ」
035 美代 「地面の下には死んだ人たちが働いているの?」
036 お姐 「そう。悪いことした人や神様に気に入られなかった人たちがいっぱいいるところ」
037 美代 「美代も連れて行かれる?」
038 お姐 「美代ちゃんはずっとイイ子でいれば大丈夫。人に嘘をついたり、騙したりせずに正直に生きて、人のために一生懸命生きれば神様も認めてくれるわ、きっと」
039 美代 「でもママは神様に見放されたから死んじゃったんでしょ?」
040 お姐 「そうね。もうずっと見ていなくても大丈夫だからって思われたから見放されたの」
041 美代 「じゃあ、ママは神様に嫌われたわけじゃないの?」
042 お姐 「その逆で神様に気に入られたから呼ばれたのかもしれないわ」
043 美代 「神様が美代に意地悪したわけじゃないの?」
044 お姐 「意地悪したわけじゃないわよ、きっと。ママがいなくなった分強くなれるでしょ?」
045 美代 「うん…」
046 お姐 「美代ちゃんは神様に試されているかもしれないわ。本当にイイ子かどうかの見極めに」
047 美代 「試されてる?」
048 お姐 「そう、試練。この試練が乗り越えられれば、ずーっと美代ちゃんは強くなれる」
049 美代 「強くなれる?」
050 お姐 「どんなに辛いことがあってもね、負けない子になれる。…と、お姐さんはそう思うな」
051 美代 「うん」
052 お姐 「辛くて苦しいことがあっても今のツライ気持ちよりツライことはないって思えるし、その苦しみをバネにすればどこまでもどこまでも飛んで行けるかもしれない。ね?」
053 美代 「飛べる?」
054 お姐 「そう。天国に行く時のために今はバネの準備をしないとね。天まで届くほどのバネを造る為に」
055 美代 「よく『悔しさをバネに」っていうのはそういうことなの?」
056 お姐 「そう。『だから苦労は買ってでもしなさい』って言うの。美代ちゃんはその苦労をちょっと早めに買わせられちゃったのかもしれないわね」
057 美代 「…苦しいの?」
058 お姐 「ママがいないとご飯の用意やお洗濯できないでしょ?」
059 美代 「いつも手伝っていたから大丈夫!美代だってできるよ」
060 お姐 「そう…。でも毎日毎日続いていると嫌になっちゃうかもしれない」
061 美代 「大丈夫…だよ、多分…」
062 お姐 「寂しいなって思うこともあるだろうと思うし」
063 美代 「うん…でもね、大丈夫。お姐さんもいるし、パパだっているもん」
064 お姐 「そっか、うん。美代ちゃんは強いね。イイ子だ。」
065 美代 「でしょ?」
066 お姐 「お姐さん、心配性だからさ。心配していたの」
067 美代 「お姐さん心配しちゃった?」
068 お姐 「うん、ちょっとだけね」
069 美代 「ごめんなさい」(ぺこりと謝る)
070 お姐 「どうしたの?」
071 美代 「ママが人様に心配かけちゃダメだって言っていたから」
072 お姐 「…ふふっ、そういうことか。ううん、平気平気。お姐さんが心配性なだけだから」
073 美代 「美代は大丈夫だから心配しないで」
074 お姐 「そっか。うん、もう心配しない!美代ちゃんのお話聞いていたら安心した」
075 美代 「ね?」(ニコッと笑う)
076 お姐 「寂しくなったらいつでも探しにおいで。お姐さん、いつでも歩き回っているから」
077 美代 「お姐さん暇なの?」
078 お姐 「暇ではないわよ?すんごく忙しい」
079 美代 「この辺に住んでいるの?」
080 お姐 「住んでいる…っていうのはちょっと違うかもしれないけど。うん、いるよ」
081 美代 「そっか。お姐さんにどうして人間が死ぬのか訊けて良かった!ありがとう」
082 お姐 「答えになってたかな?どういたしまして」
083 美代 「あ、パパだ!お夕飯のお手伝いするんだ!だから帰るね!お姐さん、ありがとう!ばいばいっ」(手を振り、駆けて行く)
084 お姐 「そっか、うん。バイバイッ」(微笑み手を振る)
085 美代 「またねー!」(大きく手を振る)
086 お姐 「またね」
087 美代 「パパー、あのね。公園でお姐さんとお話していたの」
088 お姐 「次会う時はお迎えの時かな。それとも、パパのお迎えの時かな…強く生きるんのよ、美代ちゃん」
089 美代 「あそこのブランコのところでねー…お姐さん?…さっきいたんだよ、美代お話したもんっ」
090 お姐 『苦しみをバネに。悲しみをバネに。その力が天まで届きますように…』
091 美代 「むーっ、信じないならパパのおでんにからし入れてやるー」(声が遠ざかっていく)
092 お姐 願わくは、深い悲しみが心を覆わぬよう、幸せでありますように―――






作者のツブヤキ
 悲しみや辛さをバネに…そのバネの威力で天までジャンプする!という発想は当初全くありませんでした。
書いていく内になるほど…って思って書いてみました。多分意味合いが違いますね。
でもこの『天』。高みという『頂点』の天として高みを目指すといった捉え方もできますので、いいのかな…。
バイトのグラス洗いの最中に突然、「人間はどうして死ぬの?」って言葉が舞い降りてきて…
その時に考えついたのは10もいかない極々短い掛け合いだったのですが、いつの間にかそれなりの長さになっていました。
『神様に見放される』って言っておきながら『神様に気に入られたから』って矛盾がががが。
まぁ大目に目を瞑って頂ければ、これ幸いです。

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