キミノタメ

キミノタメ

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1:1不問:1
総セリフ数 98
製作日 2012/5/31〜2012/5/31
概要説明  魔王を討伐しに旅をしてきた勇者と賢者のペア。
旅のはじめは回復魔法すら唱えることのできなかった賢者が修行の成果もあり、無事賢者として活躍できるようになったはずだった。
だが、まだ魔王と対峙するには時期尚早だった。魔王の一撃を喰らい、気を失った賢者を庇い勇者は…―――
利用にあたって 利用規約
登場キャラ セリフ数 性別 備考
勇者 35 魔王を討伐するために旅立つ。賢者を気遣い、修行にも付き合う心優しき者
賢者 49 実力もなく、居場所を求め彷徨っていた僧侶。修行の甲斐もあり、名ばかりの賢者になったが実力はない。
魔王 14 世界を滅ぼそうと企てる悪の根源。人間を弄ぶ趣味を持っている。






【魔王城】(激戦の果てに目が覚めると目の前に魔王の姿)

001 魔王 「お目覚めかね、愚かな人間よ」
002 賢者 「ここ…は」(ぼやける視界、痛む全身に顔をしかめる)
003 魔王 「天界のゆりかごではなくて残念だったな、人間よ」
004 賢者 「勇者…様?」(上半身を起こし、周囲を見回しながらゆっくり勇者の姿を探す)
005 魔王 「とくと見るが良い、貴様を命がけで守ろうとした哀れな人間を」(ニィッと笑う)
006 賢者 「どこ…勇者様」(不安げに目で探す)
007 魔王 「愚かな人間よ、お捜しの人間はこやつのことか?」(人型のした黒焦げの頭を掴んで目の前にぶら下げて見せる)
008 賢者 「う…そ…」(目を見開く)
009 魔王 「黒焦げで姿も分からぬか?」
010 賢者 「あの腕輪…あのアクセサリーは…あ…ぁ…」



【回想】(とある町の広場で腕輪の入ったプレゼント箱を渡す賢者)

011 勇者 「…僕に?」
012 賢者 「いつもお世話になっているので」
013 勇者 「お世話になってってそんなに僕は何もしていないと思うけどなぁ」
014 賢者 「いえいえ、私がここまでなれたのも勇者様のお蔭ですもの」
015 勇者 「そんなこと言ったら、ここまでついてきてくれた君にもお礼をしないと」
016 賢者 「私、勇者様に出会ってなければ…あの町でずっと何もできずにあそこで終わっていました」
017 勇者 「僕だって、君と出逢ったお蔭で旅を楽しく過ごして来れたんだ。ありがとう」
018 賢者 「そんな…私は…私は足引っ張っているだけですよ」
019 勇者 「そんなことないよ。袖を引っ張られることはあるけど…たまには袖を引っ張って欲しいなと思う時もあるしね」
020 賢者 「袖…ですか?」
021 勇者 「君って結構暗い所が苦手でしょ?」
022 賢者 「は、はいっ」
023 勇者 「洞窟とか暗い所に行くといつも僕の袖をギュって握って離さないでしょ?」
024 賢者 「えっ!?私そんなことしてましたッ!?」
025 勇者 「無意識だったかぁ、なんか女の子らしいって言うかな。ほんと魔王を倒すために旅にしてるってのを忘れちゃう程でさ」
026 賢者 「そんな…私が女の子らしいって…そんなそんな…」
027 勇者 「うん、ありがとう。嬉しいや。君からプレゼントが貰えたことがとっても嬉しいよ」
028 賢者 「勇者様…」
029 勇者 「とってもいいデザインだね。気に入ったよ」
030 賢者 「ほんとですか!よかった…」
031 勇者 「君のことだからかなり悩んだでしょ?」
032 賢者 「はいっ!昨日一日お店の前をウロウロ…あ、いや!迷ってません!迷ってませんよ?」
033 勇者 「君は嘘が下手だなぁ」(くすくす笑いながら)
034 賢者 「別に嘘ついたわけじゃ…」
035 勇者 「折角だから君の欲しいものを買ってあげるよ」
036 賢者 「へ?」
037 勇者 「この腕輪のお礼。僕ばっかり貰ってちゃ不平等だから」
038 賢者 「い、いいですよ!別にお礼が欲しくてあげたわけじゃないですからっ」
039 勇者 「感謝の気持ちでしょ。僕も感謝の気持ちとして。欲しいモノ言ってよ?」
040 賢者 「へ、平気ですよ!気持ちだけでっ!」
041 勇者 「…んー、イヤリングなんてどうかなッ。ほら、あの水色の天然石がついたやつ」
042 賢者 「…あ、可愛い。って、高いですよ勇者様っ。私が買ったのと比べて数倍しますよっ」
043 勇者 「はいはい、値段のことは気にしない気にしない。口にしたらダメ!ねっ?」
044 賢者 「でも…勇者様…」
045 勇者 「おじさん、これ一つ下さい」
046 賢者 「勇者様…」
047 勇者 「この小箱じゃ、ちょっと飾り気がなかったかな。ごめんね。…はい、いつも傍にいてくれてありがとう」
048 賢者 「勇者様…そんな…いいんですか?もらっても…」
049 勇者 「感謝の印。僕がこの腕輪をつけて、君がイヤリングをつける。これで魔王も楽勝に倒せるよ」
050 賢者 「…あの、イヤリングってどうつけるんでしょうか…。私、その、あの…つけたことがなくて」
051 勇者 「僕も母さんがつけているのを見たくらいだからなぁ。動かないでね…」
052 賢者 「は、はい」
053 勇者 「今日が二人の旅の感謝記念日。だね。よし、こんな感じかな」
054 賢者 「ありがとうございます!…嬉しいです勇者様!」



【魔王城】(勇者の屍を弄びながら賢者の反応を見て楽しむ魔王)

055 魔王 「実に滑稽だった、面白いくらいにな。我を倒しに来たはずなのに、倒されるためにただただ立ち尽くす様は可笑しくてたまらんかったわ」
056 賢者 「勇者様…そんな…勇者様が…」
057 魔王 「貴様の命が助かるならば、この身投げ出す覚悟があるとひたすら貴様を庇い続けた結果このザマよ。何しに来たのだ?死にに来たのか?愚かな人間共よ。心中の場を求めていたのか?」
058 賢者 「なんで…勇者様……なんで私なんか…」
059 魔王 「よほど守りたかったのだろうな。貴様が足を引っ張らなければ奴は死ぬこともなかっただろうだがな。貴様が自分の実力を見誤ったせいでこやつは死んだ」
060 賢者 「私の…せい…?」
061 魔王 「その姿、賢者とは名ばかりの愚かな愚かな愚者であろう。実力も分からず勝ち目もない戦いに挑む者は賢いとは言えぬからなぁ。片腹痛いっくくっ」
062 賢者 「…勇者様」



【回想】(広場で仲間が見つからず途方に暮れている賢者の前に現れる勇者)

063 勇者 「あの…君が旅の仲間を探している子…?」
064 賢者 「…あ、はいっ」
065 勇者 「良かったら、僕と一緒に魔王を倒しに行かないかな」
066 賢者 「…魔王を!?」
067 勇者 「あ、旅の目的が違ったのなら途中まででいいというかさ。旅に仲間がいた方が心強くてさ」
068 賢者 「私なんかでよければ…」
069 勇者 「ほんと!?ありがとう。これからよろしくね」
070 賢者 「あの…その私、回復ができなくて…」
071 勇者 「焦らないで。ゆっくり覚えていこう?それまで薬草でなんとかできるから」
072 賢者 「それじゃ、ご迷惑じゃ…?」
073 勇者 「修行して少しずつ強くなっていこう?一緒に成長していこうよ」
074 賢者 「はいっ!」
075 勇者 「じゃ、行こうかッ」
076 賢者 ―――私が強くならなかった。勇者様に甘えていたから…いつも助けてくれると思ってしまっていたから…だから勇者様は―――



【回想】(魔王城を見下ろしながら佇む二人→魔王城の現実へ)

077 勇者 「ようやくここまで来たね」
078 賢者 「あの…勇者様…」
079 勇者 「怖い?大丈夫僕がついているから」
080 賢者 「あの奥に町を一つ二つかるく潰して、多くの人々の命を奪った魔王がいるんですよね」
081 勇者 「そう。僕たちはその魔王を葬り去るためにここまで旅をしてきた」
082 賢者 「でも、私なんかでそんな魔王を…」
083 勇者 「もっと自信を持って!ここまで君はずっと修行して頑張ってきたんだ。君は賢者になれたんだよ?自信持って」
084 賢者 「…はい」
085 勇者 「もし、本当に身の危険を感じたら逃げよう。死んだら何も残らない。死んだら旅が終わっちゃうから」
086 賢者 「わかりました。…では行きましょうか、勇者様っ」
087 勇者 「うんっ」
088 賢者 ―――本当は怖かったんだ。私なんかよりずっとずっと怖かったはず。世界の期待を背負って押し潰されそうになっていたのに。勇者様の手は血が滲むほど握りしめられ、小刻みに震えていた。
089 魔王 「良いことを教えてやろう、愚かな人間よ」
090 賢者 ―――旅の終わりが怖かった。魔王を倒してしまったら私たちが一緒にいる理由はなくなってしまうから…このまま続けば旅が終わらなければいいと願ってしまった。私は願ってしまった。
091 魔王 「臆病になった者が喰われる。先に臆した者が負けるのだ」
092 賢者 ―――魔王なんか倒せなければ勇者様と旅を続けられるって…。そう思ったから勇者様は…
093 魔王 「八つ裂きにして欲しいか?それともこやつと同じように黒焦げか…」
094 賢者 ―――嗚呼、勇者様。あなたは私を庇う時どのような想いでいたのですか。恐怖で震えたのですか?それとも最後まで挫けなかったのですか
095 魔王 「…ゆっくりいたぶって転がしてやる」
096 賢者 「い…ゃ……いやぁああああああああああああああッ」(泣き叫び何度も転びながら逃走)
097 魔王 「無様に逃げ回れ、愚かな人間よ。逃げられるものなら逃げてみよ。我を楽しませよ、フフフ」
098 賢者 ―――勇者様…仇は必ず…必ず…、だから待っていてください。私は必ず…必ず…必ず戻ってきますから…二度と過ちを繰り返さないように…キミノタメニ…






作者のツブヤキ
 魔王と勇者の冒険ネタは書いても書いてもネタが尽きない感じですね!
久しぶりに考え付いたのが、勇者が命懸けで真っ先に魔王にやられた仲間を守り続けて代わりに死んでしまう物語でした。
時期尚早で、レベルが足りないと逃げることも勝つこともできず、ただ敗北というに文字しかない。
仲間は勇者との数々の思い出を回想して思いだし、辛い思いをするという…。
賢者は戦闘から離脱しようとしましたが、果たしてできたのだろうか…。
それは誰にも分からない…魔王と賢者のみが知ることではなかろうか―――

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