華原の女

華原の女

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :3:2
総セリフ数 152
製作日 2011/6/6〜2011/6/6
概要説明  反乱の革命により國王は倒され、新王へと変わった。先の戦乱で、多くの震災孤児を出し、その多くは遊郭へ売られた。
先代の姫君も反乱軍に捕虜になるのを恐れ、遊郭へと逃げ込んだ…。そこで元兵士たちが出会い…
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
大隊長 45 反乱前、旧政府軍の副大将を務めていた。冷静な判断と腕を認められ、新王より大隊長を命じられる。

(じん)
53 元副大将の右腕。現在、百人隊長の役職についている。喧嘩っ早く、乱暴ではあるが筋を通す義理堅い人物。
29 先代の姫君。自分本位のわがまま娘で、反乱時捕虜になることを恐れ、華原に逃げ込み、姫籠屋で『白雪』の名を持つ。
花魁 18 姫籠屋のトップの遊女。実は経営権まで掌握している。親から捨てられ幼いころから這い上がり、裏では戦災孤児たちの面倒を見ている。
7 華原に通う下卑た笑いを浮かべるいやらしい男。






【華原】(遊郭。遊女や客で華やかで賑わいを見せている)

001 「しっかしぃ、あっしらがこうしてまた職につけるとはなぁ」
002 大隊長 「新王による取り計らいによる…感謝ですね」
003 「先の戦いでは敵であったあっしらを百人隊長との大隊長に任命するとは不思議な話でありやすなぁ、副大将」
004 大隊長 「私はもう副大将ではないですよ、刃」
005 「そうでした、すいやせん」
006 大隊長 「まぁ、新王のお考えは分かり兼ねますが。先代の残党は戦の先陣で特攻させて滅ぼそうとしてるのかもしれないし、ただ単に信用して置いて頂いているのかも知れません」
007 「反乱を起こすとは考えておらんのですかいね」
008 大隊長 「いくら我々が反乱を起こしたとしても微々たるもの…すぐに治められるでしょう」
009 「眼中にないってことですかい…それはそれで悔しい気もしやすな」
010 大隊長 「新王はそれだけの力をお持ちと言うこと。我々は所詮、手駒に過ぎません」
011 「一発ドカーンってやりたいもんですわ」
012 大隊長 「刃、生かされた命を無駄にすることは許しませんよ」
013 「…わかってやすよ。死んでいった仲間のためにも、生き抜いてみせやすよ」
014 大隊長 「生かされ、職をも与えられた。我々は任を全うするだけです」
015 「上が替わろうが、あっしらは尽くすだけってことですな」
016 大隊長 「そうです。我々に与えられたのはそれですから」
017 「…で、副大将。華原(はなはら)遊郭を見回りだなんて…こっからパァーッと行きやすか?」
018 大隊長 「副大将ではありません。…この華原では先の戦の後、多くの戦災孤児が売られたと聞きます」
019 「あー…パァーッじゃなくて…」
020 大隊長 「刃、残念ながら今回は遊びではなく、仕事です。本来ならあちこち踏み込み捕まえたいもの」
021 「戦災孤児と言いやすと…」
022 大隊長 「親を亡くして子供だけになった子たちがこの遊郭の店に売られてるのですよ」
023 「とんでもねぇ悪党もいるもんですねぇ」
024 大隊長 「生きる術を知らない子供たちは受け入れるしかできない」
025 「そんなんで儲けようとするなんてふん捕まえて拷問にかけたいもんですよ」
026 大隊長 「ただ、ここは遊郭街。國(くに)の下にあるとは言え、独自の自治を行なっているところ。残念ながら我々には手出しできないのが現状です」
027 「へぇ…國下にあるのに法で裁けないんですかい?」
028 大隊長 「そうなります。」
029 「…なんとも歯痒いですなぁ」
030 「姫籠屋に客を取らねぇ遊女がいるらしいぜ」
031 大隊長 「慣れない環境で立派な花魁になれる者もいれば、果てる者もいる」
032 「厳しい世界のようですからなぁ」
033 「へへへ、どんな面か拝んでみるか」
034 大隊長 「姫籠屋…客を取らねばこの華原ではやっていけない」
035 「可哀想ですや」
036 大隊長 「戦はそうした子たちも生み出す。そのことを肝に命じ…ッ」(目を見開く)
037 「どうしやした?副大将…」(立ち止まる)
038 大隊長 「姫…様」(格子越しに遊女を見て呟く)
039 「姫様…?な…姫ッ!?」(怪訝な顔で覗き込み、驚く)
040 大隊長 「刃、行きますよ」
041 「お、おぅ!」



【姫籠屋】(座り込む遊女の前に下卑た笑いを浮かべる男)

042 「あの女が一度も客を取らないと言う無愛想な女か…へへっ」
043 「どう見ても行方不明だった先代の姫君じゃあありやせんか」
044 大隊長 「戦でお姿をお隠しになってから…何故このような場所に」
045 「あの女がいいな。俺が取ってやるよ」
046 「お帰り下さい。客を取る気はありません」
047 「なんだぁ?俺が指名してあげてんだぞ」
048 「いくら積まれても客を取る気はありません」
049 「遊女の分際で何言ってやがる。客がいなきゃいる意味ねーだろうが」
050 「ただの男と寝る気はございません」
051 「俺がただだと!?畜生っ馬鹿にしやがって、覚えてろよ。女」
052 大隊長 「姫様…」
053 「…裏切り者め、今更何をしに来た」
054 「捜しやしたぜ、姫」
055 大隊長 「ご無事で何より…」
056 「…無事!?貴様らは戦で目をくり抜かれたか!妾(わらわ)が無事!笑わせてくれるわっ」
057 大隊長 「姫様…」
058 「遊郭にいる女を捕まえて無事とはそなたも面白いことを言うのう。何も知らずにぬけぬけと」
059 「姫、副大将は本当に心配して…」
060 「のうのうと生きておると。父を殺してまで生き延びたかったか!」
061 大隊長 「……」
062 「姫、先代は自害で…」
063 「うるさいっ!黙って見ておったんじゃろうが。止めようとせず、共について行こうともせず、こうして敵方に尻尾を振りおって」
064 「姫さん…」
065 「何故、生きておる!どの面下げて妾の前に現れた!」
066 大隊長 「申し訳ありません。力及ばず…」
067 「ふざけるなっ!今すぐここで死ねっ!自害せよっ」
068 「姫さん!」
069 「何だ?できぬのか?妾の言うことが聞けないのか?」
070 大隊長 「申し訳ございません。その命令、聞き兼ねます」
071 「ふん、所詮裏切り者め」
072 大隊長 「私の命は姫様のものではなく、新王のもの故、貴女様の一存で失うわけにはいきません」
073 「そうかそうか。性根まで腐ったな」
074 「姫…城へ」
075 「城だと?妾に城があるとでも?」
076 「先代の姫君。新王もそう悪く扱わないと思いやす。姫がこんなところにいちゃいけねぇ」
077 「…妾を愚弄してるのか?そこまでして辱めたいのか?」
078 「姫が嫌がってもあっしは連れて帰りますぜ」
079 花魁 「待ちな。」(戸口にパイプ咥えながら立つ)
080 「なんだ?」
081 花魁 「その子は店の商品。勝手に持ち出す算段は諦めてもらえないか」
082 「誰だか知らないが、このお方は先代の姫君。このような場所にいるような方では…」
083 花魁 「姫だろうが、新王だろうがこの店の中はただの遊女しかいない」
084 「なんと言われようが姫様は連れて帰りやす」(刀を抜く)
085 花魁 「できるもんならしてみな。あんたら兵士がいくら押しかけてこようが、あんたらの勝手にはさせないよ。あちきが許さないっ」
086 大隊長 「刃、引きなさい」
087 「副大将、目の前の姫さんほっぽって行くんですかい?」
088 大隊長 「花魁が言うようにここは華原。國(くに)の法が通用するところではありません。」
089 花魁 「そう。物分かりが良くて助かるね」
090 大隊長 「今日のところは行きますよ、刃」
091 「副大将、あっしは納得できやせん。」
092 大隊長 「刀を収めなさい、刃」
093 「いいんですかい?副大将。姫さんに誤解されたままで」
094 大隊長 「誤解より何より、先代も姫も助けられなかったのは事実」
095 「だったら!…だったら、尚今連れ出さんでどうするんですかい、副大将!」
096 花魁 「随分とやる気だねぇ。いいのかい?華原を敵に回しても」
097 大隊長 「刃、引きなさいっ!今すぐに!」
098 「聞けねぇ、副大将!」
099 大隊長 「刃、あなたをクビにすると言ってもですか?」
100 「百人隊長より大事な物だってさぁ。大将の命令より大切な物があるんでさぁ!」
101 花魁 「お〜お〜熱い熱い。熱い恋と熱い男はあちきも好きさね」
102 「へぇ…そいつはどうも」
103 花魁 「当の白雪はすっかり置いてけぼりだけどね…ま、遊女に自由はないけど。」
104 「とんだ茶番。いい迷惑」
105 「姫さん、いい加減にしてくれんと…いくらあっしでも姫さんを怒らなきゃいけなくなっちまう」
106 「妾からこの姫籠屋に飛び込んだのじゃ。敵の辱めを受けるなら…のうのうと生きとる貴様らの情けを受けるぐらいなら遊女として生きると!」
107 大隊長 「姫様…」
108 「父の何が悪い。税が納められん者が悪い。役人共の賄賂がなんじゃ。棚にあげて反逆じゃ?新王なぞ…」
109 大隊長 「刃ッ!」(刃が刀を納め、姫をの頬をはたく)
110 「…ッ、く、貴様ッ。妾は姫ぞ!誰に手をあげて…ッ!?」
111 花魁 「あちきからも。過去の栄光にすがって情けない。あちきは言ったろ?ここは華原。いるのは花魁と遊女。姫様なぞ、いないっ」(姫の頬はたく)
112 「姫さん…あっしは正直、先代が亡くなって良かったと思ってやす」
113 「なんじゃと?」
114 「悪行が横行し、乱れた治安を統治し切れず、結果反乱が起きた。当然の結果やありやせんか。この際やから言わせて頂きやすが、貴女が姫であったのはもう過去のこと。貴女が姫であったと分かる者もどれほどいるか」
115 大隊長 「刃!」
116 「それであろうと、姫さんは姫さんで、あっしらは助けたいと思ったまで。どうしても助けてくれるなと言うならあっしらは諦めるしかありやせんぜ」
117 「な…いつ妾が貴様らに助けてくれと頼んだ!貴様らに情けを掛けられるのは敵に媚びへつらい服従するも同じ。妾をどこまで愚弄すれば気が済むのじゃ」(顔を真っ赤にして怒鳴る)
118 「…あい分かった。行きやしょう、副大将」(踵を返す)
119 大隊長 「刃…」
120 「姫さんはよっぽど籠暮らしがお好きのようですぜ」(ちらっと姫を見る)
121 「裏切り者共に助けられとぅない」
122 「…邪魔しやした。なっ…!」(出ようとしたところ、花魁に頬はたかれる)
123 花魁 「あちきの大事な大事な商品を傷つけてくれた礼だ」
124 「…邪魔しやしたな。行きやしょう、副大将」(頬を押さえながら)
125 大隊長 「……っ」
126 「副大将…、これで良かったんですかい?」
127 大隊長 「……ん」
128 「姫さんは相も変わらず、世間知らずなあの態度。変わりやせんな」
129 大隊長 「先代が甘やかし過ぎたとは言え、華原とは厳し過ぎるように思います」
130 「ですかい…。いいんですかい?このまま姫さんほっぽっても。いつどこぞの馬の骨か知らぬ野郎に抱かれちまうなんてことも…」
131 大隊長 「いいわけはありません。だが、考えねば。真っ向に立ち向かえないとなれば如何にして連れ出すか」
132 「諦めちゃいなかったんですな」
133 大隊長 「当然です。…元姫とは言え、先代には私のような者を副大将にして頂いたと言うご恩があります。そのご恩はお返しせねば。」
134 「へへっ…副大将は律義ですな。あっし、副大将のそういうところ、好きですぜ」
135 大隊長 「そうですか」
136 「あっしにできることならドンパチだろうが、ドカンと一発どこまでもついていきやすぜ」
137 大隊長 「刃…」



【姫籠屋】(座り込む姫を見下ろしながら柱にもたれ、パイプを咥える花魁)

138 花魁 「随分でかい態度で何者かと思いきや、先代の姫君とは」
139 「悪い?」
140 花魁 「お節介かもしれないが、本当に良かったのかい?折角助けに来てくれた者たちを追い払ってさ」
141 「寝返ってのうのうと生きているあの者たちなんかに助けられとうないわ」
142 花魁 「性根まで腐った姫様だこと」
143 「何よ」
144 花魁 「言っとくが、あちきもこの華原の世界も甘くないから。客が取れなきゃ死ぬのが当たり前の世界。あちきらはみんな死神をまとっているのさ。いつまでも天使を引き連れてる考えは捨てちまいな」
145 「死神…」
146 花魁 「華原の女は幸せになれない。なろうとすると野郎を不幸にする死神さ。そういう運命さ」
147 「…ふ、ふん」
148 花魁 「自由になりたきゃ花魁目指しな。見せかけの自由だけど、一目おかれるのは確かさ」
149 「妾は客なぞ取らぬ」
150 花魁 「華原で生きたきゃ、下手な自尊心は捨てるんだね。でなければ、野たれ死ね」
151 「妾は…華原で生きる…」
152 花魁 「女達が咲き誇る華やかな街…華原。女達は逞しくそこで生きる」






作者のツブヤキ
 実際にある、遊楽街の吉原を模して華原という歓楽街をつくってみました。
人々から恨まれるような政治をしていた王を倒し、新しい政治が始まった國。
戦災孤児の多くが生きる術を知らずに遊郭へと売られていった。凛と華を咲かせるか、それとも咲かずに枯れるか。
さり気なーい姫様台本強化期間開催中…。

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