シナリオ詳細 | |
掲載元 | 声物語劇団 公式サイト 声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場 |
作者 | 月宮東雲 |
登場キャラ数 | ♂:3♀:2 |
総セリフ数 | 268 |
製作日 | 2011/1/4〜2011/1/7 |
概要説明 | たまたま自殺しようとしていた場面で自殺しようとしていた女の子を見つける そしてさらに飛び降り自殺しようとしていた男をつい止めてしまった。 よくよく話を聞くと三人とも悩みを抱え、それぞれ死のうと考えていた。 敦賀屋の提案で死ぬ前に思いっきり遊ぶことになるのだが…。 |
利用にあたって | 利用規約 |
目安時間 |
登場キャラ | セリフ数 | 性別 | 備考 |
つばさ | 75 | ♂ | メガネを掛けた会社員。上司から理不尽な怒られ方が続き、ノイローゼ気味。 |
空大 (くうだい) |
73 | ♂ | 誰からも必要とされていないと家に閉じこもっていた。他人を思いやる心を持ち合わせている。 |
越谷 美代 (こしたに みよ) |
29 | ♀ | 敦賀屋の後輩で調子を合わせるが、腹にはドス黒い物を抱えている。〜ッス口調の明るい娘 |
敦賀屋 燕 (つるがや つばめ) |
79 | ♀ | 高校バスケ部で大会の選抜に選ばれたが、後輩を庇って選手生命を絶ってしまう。 |
上司 | 10 | ♂ | つばさの会社の上司。罵ったり人を馬鹿にすることによって優越感に浸っている。 |
001 | 空大 | 「飛べよっ!飛べってば!」 |
002 | 空大 | …ダメだった。今日も飛べなかった。激しく吹き付ける風が体を撫でる。だけど…僕を押してはくれなかった |
003 | つばさ | 「生きてる価値、存在意義。生まれて来た意味」 |
004 | 敦賀屋 | 「何のために生きる」 |
005 | 空大 | 「何のために生き続けなければいけない」 |
006 | 敦賀屋 | 「広がる空の果てに見える先は何?」 |
007 | つばさ | 「空の果てには何がある」 |
008 | 越谷 | 「敦賀屋先輩!」 |
009 | 敦賀屋 | 「あぁ、越谷」 |
010 | 越谷 | 「選抜入りおめでとうございまッス」 |
011 | 敦賀屋 | 「ありがと」 |
012 | 越谷 | 「いやぁ、自分もまだまだッスね」 |
013 | 敦賀屋 | 「越谷ももう少しだったじゃん。僅かな差」 |
014 | 越谷 | 「勝負の世界はその僅かが命取りッスよ」 |
015 | 敦賀屋 | 「越谷には身長差で勝ったようなもんだし」 |
016 | 越谷 | 「ズルいッスよ、何スか?この20センチ差。これは僅かでも何でもないッス」 |
017 | 敦賀屋 | 「越谷も牛乳たくさん飲めばいいさ」 |
018 | 越谷 | 「先輩と違って縦じゃなくて前後に伸びちゃうッスよ」 |
019 | 敦賀屋 | 「ま、身長関係なく頑張れば選抜になれるよ。越谷は」 |
020 | 越谷 | 「お世辞なんていいッスよ。今回選抜で行けんのは敦賀屋先輩で、ウチじゃないッスから」 |
021 | 敦賀屋 | 「そうむくれんなって、今度飯おごってあげるから」 |
022 | 越谷 | 「別にそんなんじゃないッスよ!まぁ…戴けるもんはもらうッスけど…」(赤信号に気付かず横断) |
023 | 敦賀屋 | 「越谷ッ!信号ッ!!」 |
024 | 越谷 | 「え…?」 |
025 | 敦賀屋 | 「伏せろっ!越谷ッ!!」(車に気付き、越谷を庇いに駆けだす) |
026 | 越谷 | 「敦賀屋先輩ッ!!」(車に轢かれ弾き飛ばされる敦賀屋) |
027 | 敦賀屋 | 「く…腕が…」(両腕に激痛が走る) |
028 | 越谷 | 「先輩ッ…先輩ッ!」(敦賀屋に駆け寄り、青ざめる) |
029 | 越谷 | 「あ…」 |
030 | 敦賀屋 | 「越谷…」 |
031 | 越谷 | 「調子…どうッスか?」 |
032 | 敦賀屋 | 「…見ての通り元気さ。越谷は無事だったようで…良かった」 |
033 | 越谷 | 「お蔭様で、すり傷程度ですんだッス」 |
034 | 敦賀屋 | 「そっか…良かった。今日はお見舞い?」 |
035 | 越谷 | 「まぁ、そのつもりだったんスけど…コーチから伝言預かってて」 |
036 | 敦賀屋 | 「伝言?」 |
037 | 越谷 | 「その腕なら先輩、選抜無理ッスね…」 |
038 | 敦賀屋 | 「この腕…?あ、んと打撲だから全然…それにすぐに退院だって…」 |
039 | 越谷 | 「嘘…」(敦賀屋の腕を握る) |
040 | 敦賀屋 | 「痛ッ…」(激痛に顔しかめる) |
041 | 越谷 | 「こんな身体でバスケなんてできるって思ってるんスか?」(敦賀屋を見下ろす) |
042 | 敦賀屋 | 「こんなのすぐ治…」 |
043 | 越谷 | 「先輩。選抜なめてません?ちょっとばかしウチより背高くて記録良かったからってサ」 |
044 | 敦賀屋 | 「越谷?」 |
045 | 越谷 | 「先輩がこうやってサボってる間にも他校の選手は練習してんスよ」 |
046 | 敦賀屋 | 「サボってるって…別に好きで練習休んでるわけじゃ…」 |
047 | 越谷 | 「だから先輩よりしっかり練習できるウチが選抜に選ばれたッスよ」 |
048 | 敦賀屋 | 「え?」 |
049 | 越谷 | 「練習もできない木偶の坊は用済みだって言ったんスよ」 |
050 | 敦賀屋 | 「越谷?何言って…」 |
051 | 越谷 | 「敦賀屋先輩の代わりにこの越谷が選抜の選手になったって話ッス。要は先輩はクビってことッス」 |
052 | 敦賀屋 | 「嘘…」 |
053 | 越谷 | 「ま、先輩は身長ぐらいしか取り柄なかったスしね。ウチの技術でディフェンスはカバーできますし」 |
054 | 敦賀屋 | 「私選抜に間に合う…それまでに絶対退院できるから…」 |
055 | 越谷 | 「もう監督もコーチも決めちゃったッスから遅いッスよ?まぁ、先輩も正直ざまぁって感じなんスけどね?」 |
056 | 敦賀屋 | 「ぇ…?」 |
057 | 越谷 | 「身長差でいっつも人を見下ろしてサ…。たまには見下ろされればいいッスよ」 |
058 | 敦賀屋 | 「別に見下ろしてなんか…」 |
059 | 越谷 | 「あ、ウチを怨まないで下さいッスよ?ウチが悪いんじゃないッスから」 |
060 | 敦賀屋 | 「人助けして怪我して…」 |
061 | 越谷 | 「そだ、どうせ戻ってきてもポジションないッスから、いっそ辞めたらどうッスか?デカイのがいるだけで迷わ…いやいや。ね?」 |
062 | 敦賀屋 | 「越谷?」(眉をつり上げる) |
063 | 越谷 | 「選抜の練習して来るッスわ、じゃあ、時間の無駄なんで」(一瞥し、立ち去る) |
064 | 敦賀屋 | 「馬鹿みたい…何してるんだろ…。ノッポなだけのでき損ない…。私って何のために生きてるんだろう…」 |
065 | 上司 | 「おいっ!加藤ッ!」 |
066 | つばさ | 「はいぃっ!」 |
067 | 上司 | 「『はいぃっ』じゃねぇ!なんだこの書類は」 |
068 | つばさ | 「依頼されていました報告書です」 |
069 | 上司 | 「こんな報告でできたつもりかっ!こんなの小学生でもできるぞっ」 |
070 | つばさ | 「申し訳ありません…」 |
071 | 上司 | 「今すぐ作り直せ。フォントはゴシックじゃなくて明朝だろ」 |
072 | つばさ | 「修正すべきところはそこだけでしょうか?」 |
073 | 上司 | 「自分で考えろっ。何、人に頼ってるんだ」 |
074 | つばさ | 「申し訳ありません…」 |
075 | 上司 | 「ったく、使えないな。おい、加藤。お前の代わりなんて幾らでもいるだぞ」 |
076 | つばさ | 「はぁ…」 |
077 | 上司 | 「お前みたいな使えない奴なんかよりよっぽどいい。お前は小学生より使えないんだよ」 |
078 | つばさ | 「申し訳ありません…」 |
079 | 上司 | 「申し訳ありませんしか言えないのかってよ。バカみたいにそればっかで」 |
080 | つばさ | 「いつからだろう…社会の歯車になって、ただひたすら仕事をこなしてロボットみたいになったのは」 |
081 | 上司 | 「大体お前は…辞めてくれた方がありがたいっての」 |
082 | つばさ | 「理不尽な上司の注文をただひたすら頭下げながら聞き、人間味を失っていくのは…」 |
083 | 上司 | 「おい、聞いてんのか加藤!おいっ!」 |
084 | つばさ | 「もううんざりだった。上司の小言も、社会の歯車も…」 |
085 | 空大 | 「僕はいらない子…世の中から必要なんてされていないんだ…。どうして望まれもしないのに生まれてしまったのだろう…」 |
086 | 空大 | 「誰からも疎まれ、邪険にされ、必要とされない…。誰も理解してくれない誰も理解しようとしてくれない」 |
087 | 空大 | 「それは犯罪者と同じ思想だって?誰も理解してくれないということが犯罪者だって言うの?」 |
088 | 空大 | 「もう疲れた。疲れたよ…。ここから飛んで全て終わらせたらどれほど楽なんだろう…」 |
089 | 敦賀屋 | 「…部活一本で生きてきて、まさかこんな結末になるなんて…」 |
090 | 空大 | 「誰が望んだ結末なんだよ…こんな結末だなんて…。だったら最初から生まれてきたくなかった…」 |
091 | 敦賀屋 | 「この高いところから飛べば…全てを終わらせることができるのだろうか…」 |
092 | 空大 | 「今日こそ…ここから飛んで…」 |
093 | 敦賀屋 | 「死んで全て、なかったことに…なかったことに…」(フェンスに足をかける) |
094 | 空大 | 「…おい」(敦賀屋に気付き、声掛ける) |
095 | 敦賀屋 | 「え?」(キョロキョロと見回す) |
096 | 空大 | 「お前だよ、お前」 |
097 | 敦賀屋 | 「…私?」 |
098 | 空大 | 「そう。お前だ、お前。何してるんだ?こんなところで…」 |
099 | 敦賀屋 | 「私はその…あの…」(狼狽する) |
100 | つばさ | 「あぁぁぁあああああっ!もう死んでやる!死んでやるぅうううっ!」(屋上に現れ、フェンスに駆け寄る) |
101 | 空大 | 「うわっ、ちょっと!」(つばさに駆け寄り、腕つかむ) |
102 | 敦賀屋 | 「落ち着いて下さいっ!」(つばさを押さえる) |
103 | つばさ | 「うるさいっ!死ぬんだ!死なさせてくれっ!こんなところで生きていたくないっ!」(フェンスに足掛ける) |
104 | 空大 | 「早まるなって!」 |
105 | 敦賀屋 | 「落ち着いて!」 |
106 | つばさ | 「俺にかまうなっ!俺なんかいてもいなくても代わりが幾らでも居るんだ!!」 |
107 | 空大 | 「冷静になれって!」 |
108 | つばさ | 「うわぁぁあああっ…って。君たち何でこんなところにいるの?」(冷静になる) |
109 | 空大 | 「冷静になり過ぎっ」 |
110 | つばさ | 「熱は冷めやすいものさ…」 |
111 | 敦賀屋 | 「…その」 |
112 | つばさ | 「君たちも本当は自殺しに来たんじゃないのか?」 |
113 | 空大 | 「いや…別にその…まぁ、なんというか」 |
114 | 敦賀屋 | 「そういうわけじゃ…」 |
115 | つばさ | 「まぁ、他の人が自殺しようとしたらついつい止めちゃうものな。俺だってその場に居合わせたら止めてたな、きっと」 |
116 | 空大 | 「あの…僕、悪いことしましたか?」 |
117 | 敦賀屋 | 「私ったら余計な事を…」 |
118 | つばさ | 「余計っちゃあ、余計だったかもしれないけどな。死にたかったのに死なせてくれなかったってのは」 |
119 | 空大 | 「仕切り直して死にます?」 |
120 | つばさ | 「野暮なこと言うねー、君」 |
121 | 空大 | 「いや…つい咄嗟に引きとめちゃって何だか今更申し訳なく思えてきて…」 |
122 | つばさ | 「もう死ぬ気が失せたよ…今はね」 |
123 | 敦賀屋 | 「何でそんなに死のうとしてたんですか…?」 |
124 | つばさ | 「それ聞いちゃう?聞いちゃうの?短いよ?」(目見開き、敦賀屋に顔近付ける) |
125 | 空大 | 「このメガネ、ウザい…」 |
126 | 敦賀屋 | 「えぇ…まぁ…」 |
127 | つばさ | 「誰にだって悩みや苦しみはあると思う。それがつらいと思うことも」 |
128 | つばさ | 「それが仕事とか半一生のことだと尚、重荷となってのしかかる」 |
129 | 空大 | 「職場で嫌な事があったってこと?」 |
130 | つばさ | 「恥ずかしいことに…いや、恥ずかしくなんかない。理不尽な上司に罵られ、社会の歯車の一つとして酷使されてきた。もう限界なんだ」 |
131 | 敦賀屋 | 「転職とか…職場を変えるとかってダメなんですか?」 |
132 | つばさ | 「それができたら多分してるね。そうじゃない、俺は幾らでも代用がきく。そんな世の中に絶望しただけで…」 |
133 | 空大 | 「世の中を動かしているのは誰でもいい、使える人間・道具だってこと…」 |
134 | つばさ | 「そう考えたら自分じゃなくてもいいんだ…じゃあ、何のために頑張ってるのってなってね。…辛いことから逃げようとした」 |
135 | 空大 | 「辛いことから逃げる…」 |
136 | 敦賀屋 | 「…実は私も本当は辛いことから目を逸らしたくて…逃げたくて自殺しようって…」 |
137 | 空大 | 「そんな自殺しようって…いじめか何か?」 |
138 | 敦賀屋 | 「部活で選抜に選ばれて、これからだって時に後輩を庇って交通事故に遭って…選抜から外されただけじゃなくてその助けた後輩からも嘲笑われた…」 |
139 | つばさ | 「それはヒドイな…」 |
140 | 敦賀屋 | 「私許せなくて…。あそこで彼女を助けていなければ選抜に出れただろうし、こんな身体にもならなかったって…嘲笑った彼女も許せないけど…私自身を許せない…」 |
141 | 空大 | 「…そっか」 |
142 | 敦賀屋 | 「それに部活一筋でやってきたから…この部活ができなくなった体には何も残ってない。木偶の坊なんだって…」 |
143 | 空大 | 「そんなことない。…僕に比べたら…僕なんかに比べたら全然生きてていい人間だよ」 |
144 | つばさ | 「それはどういうことで?」 |
145 | 空大 | 「僕は望まれて誕生したわけじゃなかった。誰からも必要とされなかった。だから目立とうとしたんだと思う。悪戯とか人が嫌がることとか平気でやってきた」 |
146 | 敦賀屋 | 「……」 |
147 | 空大 | 「人様に迷惑かけて生きてきた。今は反省してる…だけどどうしてもやっちゃうんだ…」 |
148 | つばさ | 「人から必要とされたい、必要とされるには目立たないと…人間の持つ欲求だな」 |
149 | 空大 | 「誰からも必要とされず、迷惑だと思われるなら生きている意味はないじゃないか」 |
150 | つばさ | 「結局三人とも自殺志願者ってわけか」 |
151 | 敦賀屋 | 「そうみたいですね」 |
152 | 空大 | 「自殺しようと思う人が偶然三人鉢合わせるなんてこともあるんだね」 |
153 | つばさ | 「死ぬ前の縁なのかもしれないな」 |
154 | 敦賀屋 | 「…あの、どうせ死ぬならただ死ぬんじゃなくて何かしませんか?」 |
155 | つばさ | 「それは…人文字でもしながら飛び降りろと?」 |
156 | 敦賀屋 | 「そうじゃなくて…」 |
157 | 空大 | 「そうだなぁ、最後くらいは人様に迷惑かけないで死にたいな…」 |
158 | つばさ | 「飛び降りて下の通行人とぶつかった場合、下手すると通行人殺しちゃうことになるかもしれない」 |
159 | 敦賀屋 | 「それは申し訳ないな…」 |
160 | 空大 | 「これから死にゆく者がさ、先のこと心配してるなんて」 |
161 | つばさ | 「どうせなら人から喜ばれるようなことして死にたいかもな」 |
162 | 敦賀屋 | 「確かにそれ賛成」 |
163 | つばさ | 「場所を変えて話そうか」 |
164 | 空大 | 「何をすれば人に喜ばれるんだろう」 |
165 | 敦賀屋 | 「臓器提供とか?ドナー登録って困ってる人を助けるんだよね」 |
166 | つばさ | 「けど、飛び降りたらドナーどころじゃないな」 |
167 | 空大 | 「睡眠薬とか?」 |
168 | つばさ | 「最近の睡眠薬は多量摂取しても死ねないと聞くな」 |
169 | 空大 | 「練炭とか、硫化水素とかか」 |
170 | つばさ | 「練炭はいいとしても硫化水素は近隣住民とかに被害が出る。それこそ多大な迷惑って奴だ」 |
171 | 空大 | 「樹海に消えるとか」 |
172 | 敦賀屋 | 「ひっそりだね」 |
173 | 空大 | 「メガネの兄さんは何かいい案ある?」 |
174 | つばさ | 「メガネの兄さん…あぁ、そういえばまだ自己紹介がまだだった。俺はつばさ」 |
175 | 空大 | 「僕は空大」 |
176 | 敦賀屋 | 「私は燕です」 |
177 | つばさ | 「短い間かもしれないが、こうして会ったのも何かの縁。一緒に色々考えて行こう」 |
178 | 敦賀屋 | 「そうだ、死ぬ前にどこか皆で行きません?」 |
179 | 空大 | 「旅行?」 |
180 | 敦賀屋 | 「私…合宿ばっかり行ってて修学旅行とか家族旅行に行けなかったんです」 |
181 | 空大 | 「旅行かぁ…」 |
182 | つばさ | 「もう何年も行っていないな。確かに、死ぬ前に思いっきり遊ぶのもいいな」 |
183 | 敦賀屋 | 「じゃぁ、どこ行きます?」 |
184 | 空大 | 「そこは定番の夢の国とか」 |
185 | つばさ | 「あそこはテッパンだよな。高いホテル泊まって、美味いもん食って遊びまくるとか…夢のような話だ」 |
186 | 敦賀屋 | 「夢の話じゃない。私たちだって行動を起こせば実現できるんですよ」 |
187 | 空大 | 「……」 |
188 | つばさ | 「俺運転できるし、車持っているから今週末にでもどうかな?」 |
189 | 空大 | 「もちろん予定なんて入るあてもないし、こっから先は真っ白になる」 |
190 | 敦賀屋 | 「集まる場所とか時間はどうしますか?」 |
191 | つばさ | 「場所はここ喫茶『青空』の前でで、時間はあとでメールを送るよ」 |
192 | 空大 | 「なんかわくわくするなぁ」 |
193 | つばさ | 「死ぬのがわくわくするっていうのも変なもんだな」 |
194 | 敦賀屋 | 「それじゃぁ、各自予定を考えてくるってことでいいですか?」 |
195 | 空大 | 「そうだね」 |
196 | つばさ | 「もうバッチリ頼むぜ」 |
197 | 敦賀屋 | 「各々考えるんですから『頼むぜ』じゃないですよ!」 |
198 | つばさ | 「そうだな、んじゃ、また週末にここで…空の下の諸君」 |
199 | 空大 | 「あぁ、楽しかった!こんなに楽しんだの初めてだよ」 |
200 | 敦賀屋 | 「はしゃぎ過ぎちゃった…こんなにはしゃいだの初めてかも」 |
201 | つばさ | 「そりゃ良かった。ツアー組んだ甲斐があったってやつだ」 |
202 | 空大 | 「次はどこ行くんだっけ?」 |
203 | つばさ | 「んー、とりあえずみんなの案は出尽くしたって感じかな。全部回ったな」 |
204 | 空大 | 「意外と最後だって言うのに一日で回れちゃうもんなんだ」 |
205 | つばさ | 「考える期間が短過ぎたか…?」 |
206 | 空大 | 「それほど回りたい・見たいものって無いだけだよ」 |
207 | つばさ | 「いいのかい?行くところがなくなったら行くところは死界だぞ?」 |
208 | 空大 | 「樹海にでも行っちゃう?」 |
209 | つばさ | 「…燕ちゃんは寝ちゃったか」 |
210 | 空大 | 「はしゃぎ過ぎて疲れたのかと。今日一日一番はしゃいでいたし」 |
211 | つばさ | 「一番お洒落してきていたしなぁ」 |
212 | 空大 | 「可愛い服だよなぁ…。つばさなんか黒スーツにグラサンってどこの人って思ったもん」 |
213 | つばさ | 「いや、こういう時は正装かなって思ったらこうなった」 |
214 | 空大 | 「メガネのお兄さんが黒服のSPみたいになるってさ。まるでどこかのお嬢様を護衛してるみたい」 |
215 | つばさ | 「そうさ、燕お嬢様の護衛よ」(ミラー越しにおどけて見せる) |
216 | 空大 | 「決まってる決まってる」 |
217 | つばさ | 「…なぁ、空大。ほんとにいいのかこのままで」(ミラー越しに空大を見ながら) |
218 | 空大 | 「…いいとは思わない。だって…燕は全然死にたそうじゃないもの」 |
219 | つばさ | 「…だよな。あの時は陰りがあった。だが今は輝いている。俺たちがこの光を奪っていいもんじゃないだろうな」 |
220 | 空大 | 「…うん」 |
221 | つばさ | 「なぁ、降りたきゃ降りていいんだぜ?」 |
222 | 空大 | 「今からこの車から飛び降りろって?」 |
223 | つばさ | 「ばーか。そしたら俺だけ犯罪者にされるだろ。この地獄行きツアーの途中下車さ」 |
224 | 空大 | 「なんだ?ブザー押したら停車してくれるの?」 |
225 | つばさ | 「してやらんこともない…なんてなっ」 |
226 | 空大 | 「僕も後に引けなくなってんだ、終点まで着いてくよ」 |
227 | つばさ | 「そっか…。空大、お前…燕ちゃんの…」 |
228 | 空大 | 「何?」 |
229 | つばさ | 「いや、何でもねぇ」 |
230 | つばさ | 「ふぅ…流石、背大きいだけあるな」 |
231 | 空大 | 「男二人が運んでやっとだ…」 |
232 | 敦賀屋 | 「うぅん…ここは?」(目をこすりながら目を覚ます) |
233 | つばさ | 「地獄に着きましたぜ、お客さん」 |
234 | 敦賀屋 | 「嘘。…だってこんなに茜色の空が広がっているもん」(まどろみながらくすっと微笑む) |
235 | 空大 | 「いや地獄…だね。地獄の入口」 |
236 | 敦賀屋 | 「ん…ビルの屋上?」(起き上がり、辺りを見回す) |
237 | つばさ | 「そう。俺たちの出逢った場所。地獄へと走る俺を君たちが止めてくれた場所だ」 |
238 | 敦賀屋 | 「そっか…着いちゃったんだ。今日の終わり…ううん、人生の果てに」 |
239 | 空大 | 「燕さんはここに居てくれてもいい。…ほんとは死にたくないだろ?」 |
240 | 敦賀屋 | 「え?」 |
241 | つばさ | 「無理して俺たちと付き合って死ぬこともない」 |
242 | 敦賀屋 | 「何で…何でそんなこと言うの?」 |
243 | つばさ | 「燕ちゃんが無理して死にたくないのに死のうとしているから」 |
244 | 敦賀屋 | 「私だって死に…死に……みんなと一緒。みんなと一緒がいい!」(涙ぐむ) |
245 | 空大 | 「…じゃ、一足先に。今日は楽しかったよ、ありがとう。君に出逢えて本当に良かった。つばささんも」(歩き出しフェンスへと向かう) |
246 | 敦賀屋 | 「待って!待ってよ!!私、空大君のことが好きだからッ!必要なのッ!空大君のことが必要なのッ!」 |
247 | 空大 | 「…ッ」(足を止める) |
248 | 敦賀屋 | 「誰も必要としてくれない?ここに、空大君のことを欲してる…必要としてる人がいるんだよッ!それでも放って逝くの?」 |
249 | 空大 | 「そんなその場限りの言葉…。引き留めたくて言ってるんだろ?」(俯きながら) |
250 | 敦賀屋 | 「違う!好き!好きなんだよ!惚れやすいって思われてもいい。会って数日しか経ってないけど…可愛いって。一緒にいると楽しいねって言ってくれた! 嬉しかった…こんな木偶の坊な女に好きって言われても嬉しくないかもしれないけど…」 |
251 | 空大 | 「…僕にどうしろって言うの?死ぬなって言ってるの?」 |
252 | 敦賀屋 | 「…そう。そうッ!つばささんも空大君も死んでほしくない!もっと一緒に居よう?…ね、私と付き合ってよ…もっと私と一緒に居て欲しいの…」 |
253 | つばさ | 「いやはや…とんだツアーの妨害だなぁ」(頭かきながら) |
254 | 空大 | 「全くだ…地獄行きツアーじゃなかったのか?」 |
255 | 敦賀屋 | 「ごめん…ごめんなさい…」 |
256 | つばさ | 「ま、交通事故の怪我で部活に出られないってだけで人生丸投げにするにしちゃ勿体ないしな」 |
257 | 空大 | 「地獄っちゃ、地獄だよ。女の子には泣かれるわ、死にたかったのに今は死にたくないわ、けどここまでくるともう後に引けないわって」 |
258 | つばさ | 「だとよ?お姫様、あのどーしようもない坊ちゃんを連れ戻してくれわ」 |
259 | 敦賀屋 | 「空大君…戻ってきて…これからも一緒に居てくれない…かな」 |
260 | 空大 | 「…僕も燕を必要としていいの…?」 |
261 | 敦賀屋 | 「うん…うんッ!」 |
262 | つばさ | 「広い大きな空に『つばめ』はよく似合うさ」 |
263 | 空大 | 「空に翼もね」 |
264 | つばさ | 「このでっかい大空の下で俺たちは生きている。必死にもがいて、足掻きながらな」 |
265 | 敦賀屋 | 「つばめさんも…」 |
266 | つばさ | 「どうやら地獄行きは往復だったようでな。運転手になったら一生死ねないみたいだわ」 |
267 | 空大 | 「…またいつの日にかこうして三人で出かけよう…」 |
268 | 敦賀屋 | 「またこの空の下で…」 |
作者のツブヤキ |
数年前から考えた考案をようやく形にすることができました。 人はきっと一度は死ぬことを考えたことはあるのではないでしょうか。自殺したいって。 こうして台本を書いている間にもどこかでは消え逝く命があると思います。 自分もいつ消えるかわからぬ命。この台本にいつまでも宿していたいと思います。 必要とされる人間は幸いだ…。 |
(※どの作品からのコメントなのか、URLのfree/○○○.htmlの『数字3桁のみ』の後、続けてコメントを記載して頂けると助かります) |