夢見しあの日 第七話

夢見しあの日 第七話

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :2:4
総セリフ数 107
製作日 2010/5/9〜2010/5/9
概要説明 過激派の女性改革団体の紅蓮隊の本部が政府より襲撃を受け、壊滅的になったことによって、
反撃の勢いが増した、新月に全団体が一斉に大蔵大臣邸を襲撃する計画に。
裏切り者と疑われる、かりんは林のもとに訪れるが…林からは意外な言葉が……
利用にあたって 利用規約
目安時間
登場キャラ セリフ数 性別 備考
朝霧雫
(あさぎり しずく)
30 氷華隊隊長。男らしく、大雑把なところが多々あり。あずさとは幼少の頃から育ち、慕っている。一人称オレ
天満あずさ
(てんま あずさ)
9 氷華隊副隊長。隊長を慕う忠誠心の強い、頭のよく切れる。氷華隊のまとめ役。
姫宮殊音
(ひめみや ことね)
5 氷華隊奇襲部隊隊長。甘い物には目がなく、部下を使って甘味処を調べている。12歳の小さい元気娘。
川月かりん
(かわつき かりん)
20 氷華隊二番隊長。隊長級では一番女の子らしさがある(?)甘い物同盟を殊音と結んでいる。
斉藤龍太
(さいとう りょうた)
23 夢狼軍リーダー。お人好しな一面を持ち合わせた人物。朝倉とは幼馴染で林とは師弟関係
林和樹
(はやし かずき)
21 学問所の先生として、新政府のあり方を説いてきた。志ある斉藤たちの成長を見届けるためについてきた。哲学者






【氷華隊本部】(かりんを除く隊長たちが集まる)

001 あずさ 「紅蓮隊の本部が政府の襲撃を受け、壊滅的なダメージを受けた」
002 「幸い、隊員たちは方々に散り、再起のタイミングを見計らっている」
003 殊音 「ありゃりゃ…災難だったね…」
004 あずさ 「我々も他人事ではない。尾行などには十分気を付けてもらいたい」
005 殊音 「殊音たちは大丈夫なんだけどねー…」
006 「かりん…か」
007 あずさ 「…隊長、いつまでも甘い顔していては隊に示しが…」
008 「あの子はここに似つかわしくなかったのかもしれないね」
009 あずさ 「近頃、男のところで寝泊りを繰り返している。裏切りの可能性も考え…」
010 「あずさ、それ以上は言うなっ」
011 あずさ 「…いつまでも放置しておくわけにもいくまい」
012 「…それで、紅蓮隊の動きは?」
013 あずさ 「紅蓮隊の報復に乗じて女性革命派の団体全てが集結し、来る新月の夜に、大蔵省大臣の館を襲撃」
014 殊音 「氷華隊も加わるの?」
015 あずさ 「必然だろうな…」
016 「全団体で抗議を兼ねた反乱だな」
017 あずさ 「参加しなければ、裏切り者として他の団体から攻撃を受けることになるだろう」
018 「集結した中、叩かれれば被害は甚大だと思うところはある」
019 殊音 「…大体、全団体参加なら全員が出陣する必要はないと思うんだけどな」
020 あずさ 「少なからずとも我々はいかねば示しがつかぬだろうな…」
021 「…来る新月の時に備えよっ」
022 殊音 「了解っ」



【甘味処】(斉藤と雫背中合わせに座り、独り言をつぶやく)

023 「かりん…俺には処分なんてできない…」
024 斉藤 「…一週間後の大蔵大臣の警護、噂じゃ武装蜂起が起こる話だし」
025
斉藤
「勘弁してくれ…」
026 「ん?」
027 斉藤 「え?雫さん?」
028 「斉藤か?」
029 斉藤 「なんでこんなところに…」
030 「それはこっちの台詞だ。男のお前が何故、甘味処に」
031 斉藤 「糖分摂取さ」
032 「なら、俺も糖分摂取だ」
033 斉藤 「団子で糖分摂取も何もないだろ」
034 「な…、みたらし団子のタレには砂糖が使われているんだぞ」
035 斉藤 「それは知らなかった」
036 「なんか悩み事か?思い詰めた顔していたから」
037 斉藤 「んー…それより雫さんの方もだろ」
038 「俺の方は大したことないからさ」(引き攣った笑顔)
039 斉藤 「何が大したことないんだか……いや、近頃の女性改革派の事件のことで物騒だなって」
040 「最近始まったことではないだろ」
041 斉藤 「あぁ、そうなんだが…、新月の夜に武装蜂起するという噂があって…」
042 「な…なんだと」(目を見開く)
043 斉藤 「雫さんもそうだが、戸をしっかり締めて家にいないと危ないぞ?」
044 「斉藤、その話はどこからっ?」(斉藤の肩つかむ)
045 斉藤 「あ、いやっ、その…噂さ噂。風の噂で聞いたんだ」
046 斉藤 『今更ってのはあるけど…政府側の人間ってバレるのもな…』
047 『斉藤のような者まで知っているというのであればとっくに政府は知っているということになる…罠かっ』
048 斉藤 「出歩きたくない世の中になりつつあるわけだ…」
049 「あっさり男たちが政権引き渡すと争いは終わるだろうけどな」
050 斉藤 「雫さんは女性改革派?」
051 「あ、いや…同じ人間なのに女と男とを比べられるのが悔しいというか…」
052 斉藤 「確かに…同じ人間…。同じ人間なのにどうして争うのかな」
053 「男たちが優越に浸って、女は劣等と決めつけているからだろ」
054 斉藤 「…人を殺して変わるものなのか」
055 「今、政治を動かしている者を一新できれば必ず変わる」
056 斉藤 「殺された奴は今まで生きてきた人生を否定されるわけだぜ?母親が苦しんで生んで、苦労して育てた人間が」
057 「思想が合わなければ共生することはできない…違うか?」
058 斉藤 「消しあっていればいずれ滅びる。思想統合だ」
059 「なら…女たちは泣寝入りしろというのかっ」
060 斉藤 「…わからない。それが正しいとは俺は宣言できない。だが、人殺しは人殺しだ。それは正しいとは言えない」
061 「…正しいことばかりでは世の中は動かないということだな。お互い…」
062 斉藤 「……と、すまない。つい雫さんの前でこんなことを。忘れてくれ」
063 「いや、悪くない考えだった…。俺は行く」
064 斉藤 「え?」
065 「またな」
066 斉藤 「あ、あぁ。……って、団子の勘定忘れてるぞっおぃ…」



【林の暮らす部屋】(いつものように会いに来たかりん)

067 「つかぬことをお聞きするが…川月さん」
068 かりん 「はい」
069 「最近、いつもいる方々とあまり関係が良くないのではないですか?」
070 かりん 「え?」
071 「原因は私だとは思いますが…」
072 かりん 「そんなことはっ…」
073 「無意識かもしれませんが、かりんさんの顔にも出ていますよ、憂いの表情が」
074 かりん 「気のせいですよ…気のせい…」
075 「…別れましょう」
076 かりん 「え?」
077 「駄目ですよ。大事な仲間たちを私のためなんかに捨てちゃ」
078 かりん 「そんな…」
079 「友というのはかけがえのない大切な方ですよ。目先の幸せなんかで失ってはいけないほどの」
080 かりん 「でも、林さん」
081 「でもも、しかしもありません。川月さんは明日から私に会いに来てはいけません。いいですか?」
082 かりん 「何でですか…」
083 「…幸せになるためにです。いえ、不幸にならないため…ですかね」
084 かりん 「意味がわかりません」
085 「えぇ…わからないかもしれません。ですが、次会ってしまったら不幸になりますよ?」
086 かりん 「なんですか、その死神みたいな言い方」
087 「ここで終わりにしましょう。思い出は美しいまま留めておきましょう」
088 かりん 「林さんっ、何か隠してますよね」
089 「…かりんさんも私に隠していることありますよね」(目を細め、睨む)
090 かりん 「ッ…」(一歩退く)
091 「私からのお願いですよ。川月さん」(元の笑顔に戻る)
092 かりん 「納得できません」
093 「…では、少しだけお話しましょう。一週間後、ある事件が起きるからです。私はそれに巻き込まれなければいけない」
094 かりん 「林さんが…?」
095 「話せるのはそこまでです。まかり間違ってもその時会ってしまえば…全てが終わります」
096 かりん 「…難しくてわかりません」
097 「…簡単にいえば、今すぐみんなの所に戻りなさいということです。そして幸せに暮らしなさい。女性には幸せになる権利がある」
098 かりん 「……林さん」
099 「同じ人間。男も女も幸せになるべきであり、独り占めしていいものではないです。幸せはね」
100 かりん 「…林さんがいることで私は幸せなんです」
101 「幸せになることが怖い。私は幸せになりたくないんですよ」
102 かりん 「何でですか?」
103 「失った悲しみに押し潰されてしまうから。です」
104 かりん 「…そんな心配していたら前に進めませんよ」
105 「いつしか私は歩くことをやめていたんでしょうね…」
106 かりん 「一緒に前に…」
107 「いいえ、私より前を進みなさい。さ、行きなさい」






作者のツブヤキ
 いよいよ終わりの時。
次回は新月の時。全てを終わらせる気で意気込む他の女性改革派たち。
荒れに荒れる最後の結末は如何に。

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