咲キ誇リシ血ノ桜

咲キ誇リシ血ノ桜

◇声物語劇団より最新情報


シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :4:3
総セリフ数 97
製作日 2010/4/23〜2010/4/24
概要説明  生きる屍もが存在する幻夢想界に春が訪れようとしていた。
冥界より花見をしに誘ってきた櫻を死霊巫女・葵は迎えるが…幻夢想界にはまだ桜が咲いていなかった。
お目当ては山天神社の咲かない桜…。そこの桜には血桜伝説という話があって…。
利用にあたって 利用規約
目安時間 7分程度   【〜10分】
登場キャラ セリフ数 性別 備考
神主 12 櫻の父親。妖怪退治を生業としている。
法春院 櫻
(ほうじゅんいん さくら)
37 霊感が強く生まれ持った元山天神社の巫女。現在、冥界の屋敷に住まいのんびり暮らしている。
鈴音 葵
(すずね あおい)
24 鬼に殺され、死霊となりながらも山天神社に住まう巫女。
氏子A 6 山天神社の氏子たち。
氏子B 6 山天神社の氏子たち。
町人男 6 賑わう町の通行人の男性。
町人女 6 賑わう町の通行人の女性。






【山天神社の境内】(竹箒を持ち、掃除中の葵のもとに櫻が登場)

001 「あなたが花見しようだなんてどういう風の吹きまわし?」
002 「そろそろ花見の季節でしょ?」
003 「幻夢想界にはまだ早いの」
004 「冥界も天界も花見で盛り上がっているわ」
005 「幻夢想界は見ての通り、まだ咲かないの」
006 「山天神社にあるでしょ」
007 「呆れた。神社の桜をあてにしていたの?」
008 「そろそろ咲く時期かなって」
009 「咲くも何も神社の桜なんてもう何十年も咲いた例がないわよ」
010 「そうなの?」
011 「そう。枯木を見ながら花見なんて美味しくないわ」
012 「お酒とお団子は用意したんでしょう」
013 「もう私一人のおやつにするわよ」
014 「じゃあ、桜を見ながら楽しみましょう」
015 「だから花どころか、つぼみだってないんだから…」



【山天神社奥の座敷】(障子全開で枯れた桜が庭に立っている)

016 「…まったく、何が悲しくて花なしの花見なんかしないといけないの」(団子皿に乗せてくる)
017 「美味しいわね、お団子」(団子頬張る)
018 「あなたのことだから冥界の桜名所にでも連れて行ってくれるのかと思ったのに」
019 「あら、冥界にようやく来てくれるの?大歓迎よ」
020 「山天神社の後継人が見つかるまで成仏しませんっ」
021 「そう」
022 「これでも忙しいんだから、お酒飲んだら帰ってよ?」
023 「一緒に飲みましょ」
024 「一杯だけね…はい、付き合った」(おちょこ一気に飲み干し、去ろうとする)
025 「…桜、咲かないんだ」(ぽそりと呟く)
026 「え?」(振り返る)
027 「昔は咲き誇っていたのに…あんなにも」
028 「あなた、昔を知っているの?」
029 「昔……そうね、昔」



【山天神社】(少し昔のお話。葵が神社に来るもっともっと前。座敷に氏子たちが集まっている)

030 神主 「櫻…櫻っ」
031 「は、はい。お父様」
032 神主 「今いらっしゃっている氏子様たちにお茶の用意をせい」
033 「は、はいっ。ただいまっ」(慌てて駆けていく)
034 神主 「さて皆様、本日はお集まり頂き誠にありがたく…」
035 氏子A 「法春院さん、誠かね…神を成仏させようというのは」
036 神主 「成仏させるのは悪霊の方である」
037 氏子B 「悪霊?」
038 神主 「我が山天で祀っている神は悪霊に取り憑かれ、ケガレ神となった」
039 氏子A 「ケガレ神だとっ」(氏子たちがざわつき始める)
040 神主 「ケガレ神はこの地に災いをもたらす。悪は滅ぼさねば…」
041 氏子A 「しかし、神を相手するというのは…」
042 氏子B 「結界の印を結ぶために人員が必要で呼んだのか」
043 「あの…失礼します」(障子を開け、お茶を運ぶ)
044 氏子B 「お、櫻ちゃんか」
045 氏子A 「跡継ぎがいるから法春院家は安泰でしょうな」
046 神主 「いやはや、娘は霊感が強いってだけで全く役に立たんですわ」
047 氏子A 「ほぅ、霊感が強いというのは生まれ持っての授かりもの。これからが楽しみですなぁ」
048 神主 「櫻、お父さんたちは大切な話をするから下がっていなさい」
049 「はい…」(障子を静かに閉め、立ち去る)
050 氏子B 「櫻といえば、そこの桜が八分咲きでしたな」
051 氏子A 「近い内に境内で花見というのも悪くないですな」
052 神主 「御祓いが済んだら櫻に言いつけてやりますか」
053 氏子B 「いいですなぁ」
054 神主 「では、そろそろはじめますか」(立ち上がる)
055 「お花見かー…。あ、お茶のおかわりを持っていこう」



【座敷】(ケガレ神の襲撃。全員八つ裂き、氏子たちの死骸が散乱)

056 神主 「…な、こんなハズでは…」(札を握り呆然とする)
057 氏子B 「神主さん…我々は触れてはいけないものに触れてしまったのでは…」(這いつくばりながら)
058 神主 「ケガレ神……が」(切り刻まれ、崩れ倒れる)
059 「ちょっと濃かったかなー…え?」(気配を感じ取る)
060 「白い炎が青くなっていく……7、8、12、18…増えてるっ」
061 「お父さんッ!?」(座敷へと走る)
062 「…お父さん?いないの…?おと……ッ!?」(障子を開け、周囲を見回し、急須落とす。無数に転がる死体)
063 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」(頭抱えてしゃがみ込む)



【山天神社の下の町】(買い物帰り。櫻を見て町人たちがヒソヒソ話し始める)

064 町人女 「あそこの神主、ケガレ神に殺されたらしいわ」
065 町人男 「娘もまだ若いだろうに…。身寄りもないんだろ」
066 町人女 「ケガレ神なんて放ってよけばよかったのよ」
067 町人男 「神様なんかに手を出すから、罰があたったんさ、神主といってもな」
068 「お父さん…」(下唇を噛みしめる)
069 町人男 「あの巫女も霊感が強いだけで力なんてないらしいぜ…」
070 町人女 「無念なんて晴らせないでしょうね」
071 町人男 「だろうな」
072 町人女 「神社も終わりね」
073 「無理だよ…」
074 町人女 「いっそあの巫女も死ねれば楽だっただろうに」
075 町人男 「神様も酷だねぇ…」
076 町人女 「祟られるわよ」
077 町人男 「おっと…ナムナム」



【山天神社】(桜の木の下)

078 「…私じゃどうしようもないから……」(短刀首筋に押し付ける)
079 「桜とともに舞い散りたまえ……」(鮮血と共に桜の花びらが舞い散る)
080 「あなたがここの巫女だっただなんてね」
081 「ここの巫女は呪われた運命…悲劇しか辿らない」
082 「あら、誰が悲劇なんていったかしら。死にはしたけれども悲しくはないわ」
083 「…そう。呪われし血桜は誇るのをやめたのかしらね」
084 「あなたの血を浴びて毒されたのよ」
085 「気が付いたら肉体を失って、冥界にいた…」
086 「幻夢想界はそういうところ。楽には死ねない。死なせてくれない場所よ」
087 「…こうして私の散った場所に再び訪れるとはね」
088 「何かの縁ってやつなのかもね」
089 「私は望んでここに来たの。縁なんかじゃないわ」
090 「ま、あなたの昔話を肴にお酒飲めたんだからいいとするわ」
091 「咲き誇りシ、血ノ桜…、咲くこと叶わぬ花」
092 「春は再び巡りくる…再び咲き誇りシ、春の花」
093 「散るならせめてこの身と共に散りゆけ血ノ桜」
094 「この咲かない枯れた血桜伝説…」
095 「私が枯らしたのであれば、再び私が咲かせることもできるのよ」
096 「美しき鮮血となりて、花は散った…」(桜の花びらが舞い始める)
097 「美シク咲キ誇リシ、血ノ桜」






作者のツブヤキ
 最後の方、自分でも意味はよくわかりません。
桜の木の下には死体が埋まってるんだってね。
昔、旅人の埋めた場所が分かるように、道標として桜の木を植えたという。
美しく咲き誇る桜であっても、秘められたものは何なのか…。
誰にもわかりませんよね…。

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