人生の墓場

人生の墓場

◇声物語劇団より最新情報


 
シナリオ詳細
掲載元 声物語劇団 公式サイト
声物語劇団 オリジナルボイドラ劇場
作者 月宮東雲
登場キャラ数 :1:1
総セリフ数 106
製作日 2009/2/10〜2009/2/12
概要説明  不気味な墓場に迷い込んだ男。目の前に現れたのはボロ服を着て、スコップ担いだ十代の女の子。
彼女はこの墓場の墓守で、墓場を守っているそうだ。
戦争で死んだ兵士たちの不気味な声が聴こえる中、男の命は風前の灯に…そこで男が咄嗟に言った言葉は……
利用にあたって 利用規約
目安時間 7分程度   【〜10分】
登場キャラ セリフ数 性別 備考
52 墓場に迷い込んだ男。人生に失敗し、放浪していたようだ。
墓守 54 十代前半の女の子。墓守として日々、屍を埋める毎日を送っている。『ボク』が一人称。






【墓場】(ランプ片手、スコップ担いでボロの服を着た女の子が歩いてくる)

001 墓守 「おろ?墓荒らしは勘弁してね」
002 「墓荒らし?」
003 墓守 「ボクの仕事が増えるからさ。君の荒らした分と君の墓の分とね」
004 「ここは墓場なのか?随分廃れているな」
005 墓守 「肝試しには持って来いの場所だけどね」
006 「君は…」
007 墓守 「ここの墓守」
008 「墓守…」
009 墓守 「墓荒らしから墓場を守るためにね」
010 「俺は墓荒らしじゃなくて…」
011 墓守 「…聞こえない?」
012 「何が?」
013 墓守 「墓場の亡霊たちの声」
014 「亡霊?」
015 墓守 「ここの墓には戦争に駆り出された若い兵士たちが埋められているの」
016 「ほぅ…」
017 墓守 「でもさ、毎晩毎晩うるさいのさ。『お母さん、お母さん……もう一つ。もう一つだけ命をちょうだい』って」
018 「へ、へぇ…」
019 墓守 「若くして死んだことを悔いているんでしょう。ほら、今も」
020 「な、何も聞こえないぞ」
021 墓守 「えーと、お兄さんの墓はどこだっけ…」
022 「ん?何を言って…」
023 墓守 「高台がいい?見晴らしいいよ」
024 「俺はまだ死んでないっ」
025 墓守 「ん?これから死ぬんだよ?」
026 「違ッ、待ってくれッ!!俺はただ道に迷っただけなんだ!」
027 墓守 「道に…迷った?」
028 「そ、そうだ。気が付いたらここに…」
029 墓守 「そっか。残念だったね」
030 「残念…?」
031 墓守 「それは何かに導かれてここに来たってことだからー」
032 「え?」
033 墓守 「死ねって思し召し(おぼしめし)だよ」
034 「た、頼む。別にやましいこともやっていない!ここで死ななきゃいけない意味がわからないっ」
035 墓守 「墓場は人生の終着駅。永遠の眠りを手に入れられるよ」
036 「そんなもん俺は欲しくないっ」
037 墓守 「…でもさ、そのまま帰すってわけにも行かないんだよね…」
038 「へ?」
039 墓守 「ボク、墓守だし。望んで来たわけじゃない人なら神に代わって運命を果たさなきゃ」
040 「ほ、ほらっ、あ、あれだ!人生の墓場!!」
041 墓守 「人生の墓場?」
042 「ほら、あれだ。『結婚は人生の墓場』って言うだろ?それだ」
043 墓守 「ほぅほぅ…」
044 「俺がここに導かれたのは死ぬためではなくて…、結婚相手見つけるために導かれたんだ」
045 墓守 「亡霊と結婚するの?」
046 「馬鹿言え。亡霊となんて結婚できないだろ」
047 墓守 「参拝客なんていないよ?ここは忘れられた墓地だから…ただただ戦争で犠牲になった屍が捨てにこられる場所」
048 「しっかし、腹減っっ…」(慌てて口をつぐむ)
049 墓守 「これは君たちの食べ物じゃないから。……お兄さんお腹空いたの?」
050 「かかかか、勘弁して下さい!!その亡霊の飯なんかにしないで下さい!!」
051 墓守 「お兄さん、亡霊食べるの?」
052 「俺を亡霊のエサにしないでくれっ」(必死)
053 墓守 「あぁ。しないよ(笑)食べたがってるけどね」
054 「ひぃぃぃぃぃっ」
055 墓守 「お腹…空いてるんだよね?……ボクん家、来る?」
056 「君の…家?」
057 墓守 「好きにすればいいよ。一晩ここにいられるとボクの仕事が増えるだけなんだけどね」
058 「お邪魔しますっ、お邪魔しますっ!喜んでお邪魔させて頂きます!!」
059 墓守 「お邪魔って言っても、散らかさないでね」
060 「もちろんですっ」



【墓守の家】(明るく、暖くてきれいな小さな家)

061 「ほぅ…きれいな造りだな…」
062 墓守 「ここ、お爺ちゃんの家だから」
063 「お爺ちゃんと暮らしているのか…」
064 墓守 「ううん。お爺ちゃんは一カ月前に死んだ」
065 「じゃ、君一人でここに?」
066 墓守 「そう。ずっと、ずぅっと」
067 「そっか…」
068 墓守 「ほんとはね、嬉しかった」
069 「ん?」
070 墓守 「君みたいな人が来てくれること」
071 「俺みたい?」
072 墓守 「誰か人が来るとお爺ちゃんはすぐに殺しちゃった。だから話す人いなくて…墓場の兵士たちはうめき声をあげるばかり…」
073 「ずっと…一人だったか」
074 墓守 「…寂しかった」
075 「…今、なんて?」
076 墓守 「ううん。何でもないっ!ほらっ、食べて食べて!」
077 「お、シチューか」
078 墓守 「お爺ちゃんから教えてもらったの」
079 「毒とか入ってないだろうな…?」
080 墓守 「…入ってるわけないやん♪」
081 「…そうか?では…ぐぱぁっ」(吐き出す)
082 墓守 「わっ!?」
083 「ちょっ、不味ッ!」
084 墓守 「ええー?」
085 「どうやったらこんなに不味くなるんだよっ」
086 墓守 「不味いかな…?」
087 「これを少しでも美味しいとか普通だと思うんだったら異常だ」
088 墓守 「えー」
089 「待ってろ、今作ってやっから…って、うぉっ!?腐ってんじゃんか、この食材」
090 墓守 「青カビ生やせると美味しくなるってお爺ちゃんが…」
091 「それはチーズだろっ!しかもチーズはチーズでカラフルなカビ生えて、溶けかけているし!?」
092 墓守 「……ふむ」
093 「ったく。なんつー生活してるんだか……俺がなんとかしてやるよ」
094 墓守 「うんっ」



【墓守の家】(数年後)

095 墓守 あれから、あの人はこの家に残ってくれて、ボクと結婚してくれました
096 「じゃ、今日も行って来るわ」
097 墓守 その場しのぎで言った、『人生の墓場』という言葉。今ではとても素敵な言葉と感じている。
098 「最近、対戦相手が列なしててさー」
099 墓守 あの人は墓場の亡霊たちとチェスなどをやっているようで、結構うまく付き合っているようです
100 「墓場の出会いが結婚という人生の墓場。なんとも面白い巡り合わせだよな。ほんと、お前と会えてよかったわ」
101 墓守 「ボクもだよ!」
102 「いい加減に『ボク』って直しなよ?って言ってもあんまし人と会わないし、直す必要ないか」
103 墓守 人生の墓場。それは墓場までずっと一緒って意味。結婚するということはそれだけ重要なことなんだよね
104 「じゃ、いってくる」
105 墓守 これは墓場で起きた、墓守と男の奇妙で幸せな物語…
106 墓守 「うん!」






作者のツブヤキ
 自分としてはそこそこ満足な話を書けた気がwww
そして自分の作品全般で言えることなんですが、作品のきっかけってほんとくだらないんですよ(笑)
よく、「どういう風にこんな作品書いてるんですか?」ときかれますが、この作品なんか、こういう風になったのは、
『ランプ片手にスコップ担いで少しボロボロなジーンズをはいた墓守の女の子』って言うのが、思いつき、
それがこの作品になりました。
一人の女の子のイラストが考えついただけでこのような物語ができあがるわけです。
他の作品では、たった一つの台詞を言わせたいがために作られたものだってあります(笑)
今後もどうぞ、お楽しみ下さいませ!!

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